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本日二話目となります、よろしくお願いします。

また4/22現在、前話でジェイソンの描写を増やしております。

本編に大きく影響はありませんが、気になる方は確認頂けたらと思います。

 飛行船はゆっくりと着地しゲートが開いた。バルボアはいつからこの飛行船を製作していたのだ。国費を使い重税で搾り取り製作したであろうこの船は一体どれだけの金と命が費やされたのか。


 国王は乗り込もうとするアランに声を掛けた。


「貴様、このままで済むとは思っておるまいな?」


「アッハッハッハ、シュバルツ国王! まさに負け犬の遠吠えだ! どう済まぬと言うのだ? 王女と殿下を人質に取られ、今や魔獣に攻め込まれている国が! 奪い返しに来れるものなら来てみるがいい。子供が騎士団のトップを張るウインダムなぞ、我が国のジャッジメント(王の審判)の敵ではない。そもそも我が城までたどり着けるのかどうかも怪しいがな」


「魔獣を操っておるのだな? もし奴隷まで操るなどしたら国を巻き込んでの戦争になるぞ!」


「流石に従属の首輪の事は知っているのか。心配するな。獣人まで操るつもりはない。今の段階で獣どもを操ればドルスカーナも黙ってはいない。今の段階でドルスカーナと事を構えるとなどそこまで馬鹿ではないわ。そうだな、独立してその後、リンクルアデルが我が手に入るその時には考えるとしよう」


 私は我慢できなくなりアランに叫んだ。


「それほど自信があるなら人質は必要なかろう? 人質を放せ!」


「心配するな、大事な餌を粗末に扱うものか。10日間は丁重に扱ってやることは約束しよう。だが、それもまたシュバルツ、()()の態度次第だがな。宣戦布告した後の責任は持てぬ」


「貴様、国王陛下に向かってお前などと!」


「ゴードン、お前や腰抜けのレイヴンがこの国の弱体化を招いたのだ。真の平和は特権階級の厳格な管理下で行わなければならない! それを余の進言も聞かず、獣人との和平、種族平等、男女同権、国を守るはずの騎士団はガキが団長になっている。誠に嘆かわしい。挙句の果てにはどこぞの商人に国王のメダルだと? これを国家傾倒の予兆と言わずして一体何だと言うのだ!」


「狂ったか、アラン。もう戻れぬぞ」


 陛下はアランを睨みつけ、絞り出すような声で言った。


「狂っているだと? それはお前だシュバルツよ。お前がどれほどの愚王であったかはいずれ歴史が証明するであろう。残った王女にでも縋り付いて、居るはずもない神にでも祈るが良い」


「神までも愚弄すると言うのか」


「天罰など偶然の産物にすぎぬ。神がいるのなら! もしお前が正しいと言うのなら! なぜ今天罰がおりぬのだ! 神託などと言ってはいるが、お前の娘の妄言ではないのか? ありもしない妄想で国の行く末が左右されるなど......狂っているのはどっちだ! 世迷言に時間をかけている暇があったら、自分の首を心配しておくのだな」


 そう言うと、アランは奥へと消えていった。船体はゆっくりと浮上しバルボアへ向けて進路を取り彼方へと消えていった。我々は何と無力なのか。しかし今は下を向いている時ではない、10日以内に解決できる方法を見つけるのだ。


「関係者を会議室へと集めよ!」


 我々は一斉に動き出した。レイブンは直ぐに警備と騎士団へと連絡を取り魔獣の討伐への指揮を取り、冒険者も総出で対応するように動いた。侯爵以上の関係者は全員会議室へと集まり今後の対策を考える。


 ロングフォード男爵は部屋で瀕死の状態で発見された。背中を斬られ床に倒れていたのだ。アンジェリーナ様やフランツ王子の側付きの執事、メイドや衛兵も悉く斬られており何名かは既に絶命していた。ここまで城内に混乱を招くことなく人を始末できるのか? 恐らくフランツ王子をアンジェリーナ様が待つ部屋へと案内する際に、あの戦闘集団が入れ替わったのだろう。その手引きをしたのはジェイソンだろう、あの集団にはジャッジメントのメンバーも何名か入っていたのかも知れない、あるいは全員か? 男爵は即座に治療が行われたが出血がひどかったこともあり重傷で意識もまだ戻っていない。危険な状態と言えるだろう。


「レイヴン、ロングフォードに冒険者の応援を頼んだ方が良いのではないか?」


「ゴードン、それについては既に対応している。既にギルド宛に通達を出し、もう伝書鳩が飛んでいる。パーティーBクラス以上の指定依頼だが、問題はどんなに急いでもこちらへ来るのは一週間以上は掛かると言う事だな。明日ロングフォードを出ても到着するのは独立宣言に対する回答間際だ」


 「そうか......」

 

 そうなると残念だが時間的に間に合う可能性は低いだろう。とにかく今はアデリーゼの混乱を抑えるのが先だ。先ほど届いた話では飛行船はご丁寧に船上から独立宣言と宣戦布告を記した紙を街中にばら撒いて行ったらしい。全く準備の良い事だ。街は混乱状態になっている。どうしたら良いのだ。三人を人質に取られ、王都は魔獣の襲撃に晒され、街はバルボアの独立宣言に揺れている。今できる事と言えば王都防衛のみだ。


「陛下、街の混乱と魔獣は絶対に抑えて見せます。しかしフランツ王子達の奪還に対してはどのように?」


 陛下は皆が論議しているなか一言も発していない。目は天井の一角を見据え何ごとか思案しているようだ。三名の人質の奪還は一番の優先事項である。独立宣言回答日までに事の終息をむかえねば、事態は独立戦争へと動き出す。戦争が始まれば人質の扱いがどうなるかなど考えたくもない。更にもし戦争がはじまり長引くような事になれば各国からの脅威に晒される事になる。


 ドルスカーナとは友好関係を構築できており、セントソラリスとドルツブルグは恐らく問題ないだろう。距離的には離れているし領土拡大に対しての貪欲さは大きくない。問題はアネスガルドだ。軍事国家を謳うあの国はチャンスとばかりにリンクルアデルの領土を狙ってくるだろう。現王になってからは他国への侵略行為は成りを潜め自国の発展に力を入れているとの事だが油断はできない。重苦しい雰囲気の中、陛下がついに口を開いた。その言葉にどれ程までの覚悟を込められたのか。


「ロングフォードからの応援は期待できない。これより五日後に騎士団五部隊を飛行船でバルボアへと向かわせろ。バルボアへと到着次第に戦闘は始まる事だろう。現地にて部隊を再編し、少数精鋭にて人質奪還へ向かえ」


「そ、それは危険ではないでしょうか? 悪戯にバルボアを刺激すれば人質の身に危険が及ぶ可能性がございます」


「どの道解決策などないのだ。時間が過ぎれば戦争が始まる。民へ被害が及ぶ前に事態を収束する必要があるのだ。10日間は人質には手を出さないと言っていたがあれは本当だろう。独立を認めさせなければ奴らは国交を開く事も出来ぬ。また、本来人質が居なければ全軍にてバルボアを蹂躙すれば良いのだ。それをさせぬためにアランはどうしても人質が必要だったのだ」


「しかし......」


「奴がウインダムを呼び込んだのは作戦かも知れぬ。リンクルアデルが誇る騎士団を潰せば戦争を仕掛けるうえで優位に働くであろうからな。ゴードン、レイヴンよ。勘違いするな。独立戦争になればそれは独立を勝ち取るための戦争に非ず。やつらはリンクルアデルそのものを手に入れようとするであろうよ」


「まさか、クーデターと仰るのですか!」


「ウインダムが敗れれば実質騎士団は機能しない。そうなればバルボアで待つ必要もない。そのまま城へと攻め込み、余の首を取れば済むではないか。あの飛行船はまさにその為のものであろうよ。ウインダムがジャッジメントに敗れればリンクルアデルは墜ちる。これはそういう戦いになりつつあるのだ」


「まさか......そんな......」


「外敵には強くとも、内乱にはこうも脆いとはな。早々に沈静化し、諸国にも内乱如きでリンクルアデルは揺るぐことは無いと知らしめる必要があるのだ」


「しかし、しかし! それでは人質の命は保証できないのですぞ!」


「リンクルアデルを守るためだ! 言わすなゴードン......民を守るためなのだ」


「陛下......」


 陛下はゆっくりと立ち上がり我々を見渡す。


「我、リンクルアデル国王シュバルツ・フォン・アベル三世が命ずる。速やかに騎士団を選別しこれより五日後にバルボアへと向かうのだ。目的は人質の奪還、そして反逆者アラン・フォン・アベルとその一派を捕縛せよ」


「はっ!」




お読み頂きありがとうございます。

中々思うように進みませんね......難しいです。

引き続き応援よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 状況と背景がよくわかりました。ありがとうございます。 [一言] 過去の主人公の発言的に大変な事になりそうですね…。読み進めれば分かることですけど。
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