136
久しぶりの一日二話投稿です。
ここから始める方はお戻り下さい。
フラフラになりつつクールダウンを終えてアンジェはミランダと奥へと消えていった。これからマッサージを行うとのことだ。時折アンジェの悲鳴が聞こえてくるような気がするが、気にしない事とする。しかしアンジェのパフォーマンスはかなり上がってきている。まだ初めて二ヶ月くらいだぞ? 全ての数値が劇的に変化している。
「頑張ってるでしょ?」
「ああ、びっくりした。食事療法と運動だけでもかなり効果があるとは見ていたが、これは予想以上だな。遠目でも変化が分かるくらいだ」
「成果が目に見えて現れて楽しいのでしょうね。さっきも言ったけど自信もついてきてるわ。街にケーキを食べに行った時も、知らない人とも話せるようになってきているもの」
「それはすごいな」
「あと、誰かさんに支えてもらってるのが大きいと思うわ」
「だからそれは俺じゃなくてソニアさ。あと言っておくが俺はアンジェとどうこうなる気はないしな。彼女は引き籠っていたから男性に対する免疫が無いんだろう。それに流石に身分が違い過ぎるというのもある。最後に一番の理由は俺はまずソ、ソニアとだな。その、あれだ。あれなんだよ」
「あら、嬉しいわね。ふふ、私は大丈夫よ?」
「もう少しだけ待ってね」
「もちろんよ、いつまでも」
そんな話をしているとアンジェが出てきた。マッサージの後、入浴も済ませてきたようだ。これあれだな。もうポッチャリじゃないな。十分奇麗になっているぞ。正直別人と言って良いのではないだろうか? 涼しげな色合いのワンピースが良く似合っている。そこから仄かに漂う石鹸の香り。うむ。変身完了って感じだ。
「お姉さま、お待たせしました!」
「アンジェ、お疲れさま」
アンジェはソニアの胸に飛び込んでいった。やっぱり俺じゃないと思う。二人の間に何があったのだろうか? でも俺は聞かない。知っての通り俺は空気の読める男なのだ。ソニアとアンジェはこれからケーキを食べに行くそうだ。俺も付いて行きたいところだが、レイナから作業服やらなにやらのデザインの確認をする約束をしていた。エステサロンの従業員についても話をしなくてはいけないし、ここは仕事優先で行くとしようか。
--------------------------------------
サティがまだ帰ってこない。
せいぜい2週間くらいのものかと思っていたらそんな事はないみたいだ。ギルドで聞いてみたら、折角アッガスとサティが参加してくれるので結構広範囲での探索をお願いしていたらしい。知らなかった。最低でも二ヶ月程度は帰ってこないんじゃないかと言う。
ただ、広範囲で森の調査ではあるが、森を抜けるとウエストアデルだ。そこで引き返してくれば早く戻ってくるかもしれないが、アッガスがいるのでサティをドルスカーナまで連れて行く可能性があるかもと言っていた。それはあるな。別に行っても問題はないけど。でもそう言う事は最初に言えよ。前みたく十日程度で帰ってくるものとばかり思っていた。
そんな事があって毎日が過ぎて行き、俺は国道やエステサロンの確認作業などをしている。国道は予定を大幅に短縮できるペースで進んでいる。舗装や宿屋、食堂はまだ無いが道自体は繋がっているとの事だ。つまり獣道レベルであれば往来が可能なのだ。もちろん正式開通までは開けないけどな。これにはローランド側からの伐採作業が恐ろしく早く、ロングフォードの予定位置を越えて伐採を進めてくれたことが大きいらしい。
まあ、向こうはゴードン内務卿が定期的に進捗を確認しに来るらしいから、遅れているなど口が裂けても言えないだろう。向こうの加盟店は見事に結果を残したわけだ。その中で散っていった犯罪奴隷諸君の命があってこそと言う点も覚えておかなくてはいけないな。別に感じる所があるわけではないが慰霊碑くらいは考えてやろう。
正式開通の時には陛下にも来て頂いて開通式を執り行う事を決めている。本当はロングフォード側でやりたいがローランド側で執り行う事になるだろう。アデリーゼから近いしな。そのまま陛下にはその道を通ってもらってロングフォードまで移動してもらいこちらでも開通式典を執り行う。中間地点の宿屋なども利用してもらう事になるだろう。
そういう意味で職人たちは興奮している。なにせ自分たちの作った宿屋に国王陛下など並み居るVIPが宿泊するのだからな。ロングフォード側とローランド側の職人たちで宿屋の建築に関して小競り合いが起きるほどだ。
エステサロンも順調に進んでおり、後はオープンを待つばかり、と言う所まで来ているみたいだ。ギルドへの申し込みはかなりの人数が押し寄せたらしい。今、ギルドでNamelessの求人が出ると、職種に関係があろうとなかろうとまず用紙が片っ端から引きはがされるらしい。スキルがあるに越したことはないが、なくても俺は門戸は大きく広げるつもりだ。スキルも大切だが本人達の努力も買ってやりたいのだ。もちろんいい加減なやつは面接の段階で切るがな。あと後天的にスキルが発現することもあるから、努力は裏切らないという事を俺は信じたいという部分がある。レイナはその辺りの俺の考えを良く汲んでくれるので本当に助かるよ。
レイナの人を見る目は確かでシンディと始めた履歴書に記入をさせたり、本人との面談、更には会社に対しての想いなど様々な事を経て合格者を決める。合格者はまず職種に関係なく工場勤務となり、ここで基本的なNamelessの会社について学んでもらうらしい。言わば研修だな。それが終わると各々の職場へと正式配属となる。おかしいのは研修が終わった後、Namelessに対しての信頼度だけでなく俺自身への忠誠度のようなものが出来上がっているようなのだ。研修中に顔を出した時にはみなが俺に対して跪く勢いだったのでビックリしたぞ。レイナよ、洗脳みたいなことはしてないよな?
そんな事がありながら、エステサロンはとうとう操業を開始した。オープンだ。
お読み頂きありがとうございます。
ブクマ、評価を頂けたら嬉しいです。
引き続きよろしくお願いします。