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よろしくお願いします。

 「まず、運動だ。これは毎日やってもらう。朝昼晩と三度のウォーキングだな。ジョギングでも良いだろうが最初は体を慣らす意味でも歩いた方が良いと思う。体が慣れてきたらトレーニングも入れて行くつもりだ。メニューについては考えてあるから後で確認して必ず実行するように」


「私にできるでしょうか」


「まあ難しい事は書いてない。トレーニングは絶対にやらないといけない。痩せていく事と同時に引き締めないと体の皮が余るんだ」


「なんと恐ろしい、絶対にやりますわ」


「それを補助するのがマッサージだ。体の疲れも取れるし痩身補助にも効果がある。あと重要な事が一つある。それは......間食の禁止だ」


「ええっ!」


 そう、ミランダさんによるとアンジェは結構間食をしていたらしい。そりゃ部屋で本だけ読んでるんだからな。飲んだり食ったりしながら読むだろう。だがそれを禁止する。これだけで効果絶大だと思うぞ。


「間食は美容の大敵なのだ。全面禁止と言う訳ではない。たまにソニアやサティと一緒にケーキを食べても良い。要するに摂生するということだ。食事面についてもテコ入れを行う。主に野菜を中心とした食事に変わる。肉は鶏肉と魚肉がメインだ。タンパク質が豊富で体を作り替えるのに適している」


「た、たまにお姉さまたちとケーキが食べられるのなら我慢できますわ」


「あまり心配しなくても良い。辛くないようにメニューを考えるさ。辛いとエステを開業した時にお客様も来ないしな。あとミランダさんにお願いがある」


「なんでしょうか?」


「メインはアンジェのスケジュール管理だな。アンジェのダイエットが成功するかどうかのカギはミランダさんが握っていると言っても過言ではない。」


「私の事はミランダと呼び捨てにして下さい。あとダイエット? スケジュール管理ですか」


「ああ。言うのが遅れたが痩身になる努力をすることをダイエットと言うんだ。ここでは使われていないから、Namelessが発信する新しい言葉になる。これだけで集客率が増えそうだな。グフ、ゴホン、すまない。ダイエットを行いながら体も奇麗になりたいと通う所がエステということだ。ダイエットとは様々な我慢と努力が強いられる本来しんどい作業なんだ。それをメニューを作って少しでも楽にしてやる。それをいつどれだけやるのかをスケジュールを作り予定通り進んでいるか管理する。エステにはそういう機能も備わっているのだ」


「なるほど」


「そして一番大事なのは、アンジェ、いや対象者のサイズ測定だ」


「サイズ測定?」


「うむ、体の各部のサイズを予め測定しておき毎日の経過を観察するものだ。測定する場所は......」


 やはり来たか。これは予想していた。見ろ、彼女たちの俺を見る目を。変態かキチガイだと思っている事だろう。皆視線で俺を射殺そうとしているかのようだ。サティがゆらりと立ち上がったぞ。フッ、殺る気だな? だが甘い。営業モードに入った俺を止める事ができるか?


「ちょっとおかしなことを言ってるわね?」


「待て、サティ。お前の考えていることはよく分かる。だが俺を殺るのは話を聞いてからでも遅くはないだろう?」


「お仕置きの時間が少し後になるだけだと思うけど?」


「そうかな? ソニア、教えて欲しいのだが先月の売上は良かったか?」


「え、ええ、良かったわよ?」


「その前の月と比べてどうだった?」


「先月の方が良かったわね」


「今月はどうだ?」


「今月の方がさらに良くなるかも」


「何故そう思うんだ?」


「そりゃ利益が出ているからよ。数字を見れば一目瞭然よ?」


「答えが出たようだな。サティ、つまりはこういう事だ」


「分かるように言いなさいよ。シメるわよ?」


 まさかお前俺をシメたいだけじゃないよな?


「物事を判断する際に、数値というものは有効な手段なんだ。一番有用性があると言って良い。自分の努力の成果を数字として見れたら分かり易いだろう? 『先月より良い気がする』より明らかに理解度が高い。そうなるとアンジェのやる気も出てくるという事だ。このデータについてはミランダが全て管理する。プライベートデータについては外部への提供は一切しない。これを徹底することでNamelessの保守レベルも確立でき、外部への信頼度は更に高まるだろう」


「なんか、上手く丸め込まれている気がするわ。ヒロくんは見れるじゃない」


「俺が見るのは変化値だ。例えば昨日の測定値が100だとする。今日は95だ。俺は95という数値が欲しいのではなく、-5と言う変化値が欲しいのさ。それで順調にメニューの内容が結果として表れているのか確認できる」


「なるほど、そう言う事なのね」


「うむ、だから心配するな! たまにしか見ない!」


「なに開き直ってるのよ」


「言ってしまえば、『心配するな、実物以外に興味はない』と言う事だ」


「呆れた、でもそっちの方がヒロくんらしくて納得できるわね」


 窮地は脱したようだな、良かった。では話を進めさせてもらおうか。


「測定して欲しいデータ項目については用意しておこう。ミランダは今は自分ですればいいが、同時にこの先誰が責任をもってデータを保管するか、など様々な事を決めていってほしい。なんか商会の手伝いをしてもらうようで悪いがお願いできるかな?」


「アンジェリーナ様のダイエットに協力して頂くお礼です。何の苦にもなりません」


「ありがとう、助かるよ。あとはこれが難問なんだが、美容液の原料となるモノがないのだ」


「ダメじゃない」


 サティとソニアが至極残念そうだ。何とかしたいのは山々なんだけどな。


「そうなんだよね......何と言うか脂肪の塊が欲しいんだけどなぁ」


「オークの脂肪ではダメなの?」


「できないことはないかと思う。でも、商売にするには原材料が簡単に手に入る環境が無いとダメなんだよね。オークは簡単に手に入る魔物ではないだろう?」


「なるほど、そこは気にしないとダメね。単価が高くなりすぎても売れないわ」


「ソニアもそう思うだろ? サティは他に脂肪が多い魔物とか知らないかい?」


「私は討伐が目的で、素材に関してはギルドに任せっきりだから......」


「うーん、ギルドに行ってみるかなぁ」


「あ、あの!ソフシェールと言う魔物に油が多いと読んだ事があります!」


「ん?アンジェ知ってるの?」


「はい、本で読んだ事があるだけで実物は知りませんが、その肉と血がそのせ、せ、精力面に効果があるとか鍋にして食べると美味しいと書いてありました」


「サティ、ソフシェールって魔物知ってる?」


「あのカメの魔物かしらね? 薬師ギルドから依頼が定期的に入っているわ。でもマズそうよ?」


「あと脂身が多く肉は少ししか取れないそうで貴重品と言う事でした。脂身は使用用途がないみたいですね」


「へー。一度見てみたいな。アンジェはよくそんなの知ってるな」


「アンジェリーナ様は城の書物を全て、何回もお読みになっておりますので」


「マジか......王城の書庫だろ? 何もできないとか言いながら凄まじい知識量だぞ、それって」


「そうですか? 今まで読むだけの時間は沢山ありましたので......役に立てば良いのですが」


「アンジェ、素晴らしいわ。ちゃんと自慢できることを持ってるわよ!」


「ソニアお姉さま......お姉さまに言われると恥ずかしいです。でも嬉しいです」


 ソニアは優しくアンジェを抱き寄せて頭を撫でてやっている。


「ギルドにあるかな? そのソフシェールって言う魔物?」


「あると思うわよ。定期依頼だし」


「クロ、悪いけど誰かに行って数体もらって来てくれないか? 大きいのかな?」


「そうね、これくらいよ」


 サティは両手を拡げた。


「とりあえず一体にしておこうか......」


「脂身の部分だけで良いのですか?」


「そうだな、大きいようだがもし脂身の量が少ないなら適当に調節してもらってくれ」





お読み頂きありがとうございます。

ブクマ、評価を頂けたら嬉しいです。

ようやく次のプロットが固まりました。

執筆作業が追いつきませんがどこかで挽回できるように頑張ります。

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