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よろしくお願いします。
皆さんコロナには十分注意して下さいね。
と言う訳でローランドへ行ってみようかと思うんだ。
「ふむ、悪くないかも知れんのう。たまには視察も顔出しもせねばならんだろう」
「そうなんだよな。交通の便が悪いとは言え、あまりに顔を出さないのも良くないと思ってる」
「うむ、陛下にも報告する必要もあるだろうからな。で、いつから考えとるんだ?」
「石鹸の販売も一応は落ち着いたから、いつでも行けるんだけど。ただ今回はサティとソニアも連れて行きたいなと思ってるんだ。どうだろう?」
「サティは分かるが、ソニアもか?」
「ああ、子供たちも伯爵家のローラちゃんとも会いたいだろうしな。と言うのは建前で、ソニアも陛下の謁見の場に連れて行こうかと思っている」
「それがどういう事かは、分かっているようじゃな」
「ああ、もちろん分かってる。己惚れるわけじゃないけど自分の立場も理解はしているつもりだ」
「ならワシから言う事は何もないわい。あと、ケビンがもうすぐ来ると言っていた。お前に話したい事があるんだと」
「なんだろうな?」
「ま、来れば分かるわい。それよりお前石鹸づくりで死にそうになったらしいな。珍しくソニアも怒っとったぞ」
「大変だったんだよ。ソニア怒ってた?あと、クロに止めをさされそうになったんだよな」
「ヒロシ様、あの時の事はどうかご勘弁を」
「なんじゃ?面白そうじゃな、教えてくれても良いじゃろ」
俺はちょっと脚色を加えながらじいさんとセバスさんにその時の事を話してやった。クロは慌ててそれは違うとか、俺が虫が苦手だとか色々合いの手を入れてくれた。ティーカップの紅茶をメイドが入れ直している時にケビンはやって来た。サティもいるぞ。
「おお、待っとったぞ」
「すまんな、突然。ヒロシもいるな」
「なんか話があるって聞いたけど?」
「まぁ、そうなんだ。おっ、ありがとう」
ケビンは出された紅茶を手にして口に含んだ後で話し始めた。
「レインヒルズの『灼熱の太陽』から連絡が届いてな。ヒロシに一度レインヒルズでも依頼を受けてみないかって言う誘いが来た」
「レインヒルズってドルスカーナの王都だったっけ?『灼熱の太陽』ってのは...」
「王都の冒険者ギルドさ」
「どっちかって言うと商業ギルドに興味があるんだけど」
「ヒロシはそうだろうな。だが、これは単純なお誘いではないと睨んでる」
「まぁ、そうじゃろうな。十中八九アッガス絡みじゃろう」
「間違いないだろう」
「アッガス絡みって?アッガスと依頼を受けるって事か?」
「単純に考えればそうじゃが、恐らく模擬戦での内容はアッガスから国王に話が通っておるじゃろう。恐らく何か理由を付けてお前に接触を図ってくるつもりじゃろうな。もしかしたらアッガスが直接王城へと連れて行くかも知れん」
「なぜ?」
「お主との繋がりを作るためじゃ。先ほどお前は自分の立場を理解していると言ったじゃろう?それはリンクルアデル、もっと言えばシュバルツ国王との会食の席を思っての事だろう?それと同じことがドルスカーナでも起こる可能性があるという事じゃ」
「んな事を急に言われても困るが...でもドルスカーナにも行くつもりではいるけど?」
「そうなのかヒロシ?」
「ああ、だってサティの生まれ故郷だろ?行ってみたいし、それに向こうで神殿に行って獣神ライガード様にサティのと結婚の報告もしないといけないしな」
「ヒロくん...」
「えへへ」
「何をやっとるんだお前らは。後でやれ」
ちなみに結婚してすぐにアザベル様にはもう報告と言うかお参りと言うか、、、とにかく神殿には行ってるぞ。商店兼自宅に祀ってある神棚にもちゃんと報告した。
「でも、すぐには行けないな。今じいさんとも話してたんだけど、一度ローランドへ行くつもりなんだ。今やってる国道の件とか色々陛下に報告したいこともある」
「そうか、じゃぁドルスカーナ行きはそれからだな」
「うん、行くことは間違いない。時期は帰ってきてからって言うこと以外言えないけど」
「わかった、それで回答しておくぞ」
「了解。ちょっと質問だけどドルスカーナに行っても良いんだよな?」
「構わんよ。行く分には何の問題もないし、そもそもワシは別にお前の行動を制限するつもりはない。それにたとえあったとしても、それを実行できる人間は今リンクルアデルにはおらんわい。なにせアザベル様の神託があるでの」
「そうか、その辺りの考え方がどうもわからなくてね。俺は別に商売が出来て皆と楽しく暮らせればいいんだけどなぁ」
「あいにく、世界は善人ばかりではないでの」
「ああ、どの世界でも同じだな。あと、サティは大丈夫かな?来れるかい?」
「私はいつでも大丈夫よ」
「おいおい、いつでもって言われたら困るんだが、今回はお前らがオークリーダーの群れを討伐してきてくれたからしばらくは問題ないと思っている。ソニアさんも行くのなら護衛もいるだろう。今回は天空の剣を付けるから安心してくれ」
「クロと俺とサティがいたら余程の事がない限り問題ないかと思うんだが」
「国家御用達商会の社長夫妻と男爵家令嬢を警護無しなんかで行かせたら俺の首が飛ぶんだよ。男爵家令嬢だけでも十分な警護が必要なんだ。それを国王のメダルとリンクルアデル城の常時入城許可を持つ人間を放っておいたなんて陛下の耳に入ったら俺は死罪だ」
「それもそう...なのか?」
「そうなんだよ!ホントにお前自分の立場を理解してんだろうな?」
「ある一点に関しては間違いなく理解しているが...ゴメン色々自信なくなってきた。」
「まあそこはゾイドとも話を詰めておくから良いよ。伝書鳩をローランドへ飛ばすけど出発はいつにする?」
「そうだなぁ。レイナに商会の事を色々と言わないといけないから一週間後にするかな」
「了解した、じゃぁそれで手配しておくよ」
「ありがとう、なんだかんだいつもお世話になりっぱなしだな」
「良いって事よ。こっちも世話になってんだから」
その後色んな話をして俺たちは男爵家を後にした。
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「そんな話になりましたので、一週間後にローランドへと出発します。ソニアも大丈夫?」
「私は大丈夫。子供たちも連れて行って本当にいいの?」
「良いよ。ローラちゃんとも会いたいだろうし。学校も一緒に行くと良いさ」
「おと兄、私は大丈夫よ。もうお姉さんだし」
「おと兄、僕も大丈夫だよ。たぶん」
「ちょっとロイが心配だが問題ないだろう。まぁちょっとした旅行だと思って気軽に行こう」
子供たちは旅行とローラとの再会に向けてテンションがかなり上がっていた。見ていても微笑ましいと言うか、こっちまで幸せな気分になる。
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