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よろしくお願いします。

お陰様で最近日間Best300でたまにランクインしております。

これも皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。

ブクマ、評価も併せて引き続きよろしくお願いします。

「いや、困ったな」


 俺は悩んでいた。単純に水で薄めたら水溶液が完成するものと思っていた。やはりそこまで甘くないか。


「毒は口から吐くんだよな?」


「そう聞いてます」


「毒袋はどこにあるんだ?」


「そこまではちょっと...」


 仕方がない。ギルドに行って直接確かめるとするか。


「よし、今からギルドへ行こう。悪いけど馬車を用意してくれるか?」


「畏まりました」



---------------------------------



「と言う訳なんだ。悪いけどちょっと頼むよ」


「問題ありませんよ。ささ、こちらへどうぞ」


 俺はコロナにお願いして解体所の中へと入れてもらった。サティはケビンと会議中との事だ。


「うわー、解体所の中って初めて入りました」


「まぁ、普通は入ることの無い場所だよなぁ。あ、すみません、ちょっと良いですか?」

               

「どしたい?」


 前にスカベンジャースライムでお世話になったおっさんだ。


「すみません、またちょっとお聞きしたいことがありまして」


「センチピードデビルの毒袋の場所?胃のすぐ上だ。まぁ毒袋っつってもセンチピードデビルの毒袋には毒は入ってないんだけどな」


 まぁ、なんという事でしょう。ご存じだったのですね?


「でもセンチピードは毒液を吐くんですよね?」


「そうなんだがな。不思議なもんだよ」


 いいのかおっさん、それで片づけてしまって。


「でも、あれだな。しいて言えば胃液が強烈だな。センチピードデビルに関しては毒袋より胃袋の方の扱いが重要だ」


「胃液ですか?」


「まぁ、胃袋だからよっぽどの事がない限りそのまま捨てるから問題ないけどな」


「そうなんですか」


「そうなんだよ」


「あとセンチピードデビルの吐き出す毒液について不思議な事がある。アイツらの毒は毒消しではなくてヒールで治るんだよ」


「毒は毒消しでしか治療できないのでは?」


「そうなんだがな。不思議なもんだよ」


 このおっさんからは、物事を突き詰めて考えようという姿勢が全く見えないぞ。まぁこの世界にきてから度々感じる事ではあるが...


「ふむ、ちょっと胃袋を見せてもらって良いですか?」


「ああ、天空の剣が大量に持ち込んできたからな。山ほどあるぜ。丁度解体するところだからこっちに来な」


「いえ、それは遠慮しておきます」


「遠慮なんかしなくていいよ、さっ、こっちこい」


 おっさんは強引に俺の腕を掴んで歩き出した。行きたくない、腕を振りほどいて走り去りたい。しかし虎穴に入らずんば虎子を得ず。俺は緊張しながらも後に続いた。


「しかしアリスは魔物の解体現場に居ても怖くないのかい?」


「生きてたら困りますけど、もう死んでますからね。大丈夫ですよ」


「アリスは強いんだな」


「まあ普通ですよ。私にはヒロシ様の方が意外ですよ」


 目の前ではおっさんがセンチピードデビルの解体を始めている。グロい。グロすぎる。大きな出刃包丁みたいなものでぶつ切りにしている。


「ほいよ。これが胃袋だ」


 全長が長いせいか、胃袋も長く細長い。上下は胃液が零れないように縛ってある。大きなソーセージと見えなくもない。と言うかそう思うように意志を強く持っているのだ。


「これ、中の胃液というか内容物って見れます?」


「おお、いいぞ。ちょっと待て」


 そう言うとおっさんは紐をほどいて少しだけ容器に移してくれた。


「クサッ!」


「当たり前だろ」


 それはそうか。色は黄色っぽく、べったりしている。聞きたくないだろうが言わせてもらう。風邪を引いている時の鼻水みたいだ。


 俺は吐きたいのを我慢して胃液に鑑定をかけてみる。『ヒロ、鑑定!』


≪鑑定≫

センチピードデビルの胃液 強アルカリ性不純液 不純物多い


 でた! やったぜ!不思議なのは胃液は胃酸で酸性かと思っていたが、強アルカリ性なんだな。不純液とはなんだ?だがもう深く考えないぞ。こっちの世界ではこれが普通だ。『不思議だよな』と言うおっさんのこの言葉、やっと俺はその気持ちを理解できた気分だ。


「おっさ...おじさん、ありがとう! 毒袋と一緒に胃袋も卸してもらえるかな?」


「毒袋も胃袋も捨てるだけだからな。いくらでも持って行けばいいさ」


「ちょっと、ヒロシさん。そんな臭いものを商店に持ち帰るんですか?」


「ああ、まぁ臭いのは仕方ないがこれも仕事だ。早速手配してくれないか」


「むぅ。仕方ないですね。ではブッチャーさん、毒袋と胃袋はNamelessで引き取らせて下さい。詳細については受付のコロナさんに話を通しておきますので」


「あいよ。了解だ」


 このおっさん、ブッチャーって言う名前だったんだな。肉切り包丁が似合い過ぎて怖いくらいだ。


 受付けに戻って話しているとサティがきた。


「そんな臭いものを持ち込むつもりなの?」


「まあね、でもこれで石鹸のあては出来た。後は胃液を奇麗にするだけだ」


「ふーん、そうなのね。あ、私もこれからしばらくはソニアの所に泊まるから」


「ソニアの所って、俺の所だろ?」


「何故かしら、ソニアの所ってイメージが強いわ。はっ! なによ、よく考えたらヒロ君は私の所でしょ?」


「おお、よく考えたらそうだった。なんか変な感じだな」


「ふふ、そうね」


「じゃぁ、待ってるよ」



-------------------------------------


 

 そうして、俺は商店へと引き上げ準備をしながら待つ事数時間。アリスとクロが台車を押して工房へと入ってきた。


「「持って来ましたよ」」


「ああ、ありがとう。助かるよ。またお願いする時もあるかも知れないからその時はよろしく」


「「畏まりました」」


 俺は材料と向き合い決意を新たにする。新商品を作り上げるのだ。ん? 二人は棚に何かを設置しているぞ。


「おお、ディスプレイケースか。いいもんだな」


「はい、工房ですからね。色々なモノを並べておいた方が研究室っぽくないですか?」


「アリス君、中々分かってるじゃないか。後でケーキを買ってあげよう。で、何を置くんだね?」


「これですよ、これ」


 お前、これセンチピードデビルやないか。なんつーもんを持ってくるんや。


「いや、これはちょっとどうだろうか?」


「こう言うのを置いてた方が絶対雰囲気出ますよ!ね!クロードさん!」


 クロードの方を見ると眉毛がハの字に曲がっていた。なんだその無邪気な妹を見るような顔は! 俺が間違っているのか?


「う、うむ、でもほどほどにしてもらえると助かるがな」


「分かりました。棚が設定できるまではここに置かしておいて下さいね」


 テーブルの横にセンチピードデビルの足やら腕やらを置いて二人は出て行った。足と腕の区別はつかないけどな。




お読み頂きありがとうございます。

これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。

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