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本日3回目の投稿となります。

ここから始める方は前に戻って下さいね。

お楽しみ頂けたら嬉しいです。

 一方、また視線を右側へと戻すと、凄いことになっていた。


 残りのオークもほぼ倒し切り、残りは森の奥へと逃げていった。あとはヒロシさんで受け持っているリーダーだけとなったのだが...


 ヒロシさんはリーダーのお腹の辺りを蹴りつけ後方へと飛ばす。オークリーダーは何度か苦しみながら体を起こし、叫びと共に切りかかってくる。


 おかしいのは起き上がるその間の事だ。ヒロシさんはシンディさんへどうも何かを教えているようなのだ。それを実践させて、押され気味になるとヒロシさんが前に出てリーダーを蹴っ飛ばす。またその間に体の使い方や攻撃の仕掛け方などをレクチャーしている。


 クロードさんとシンディさんは、ヒロシさんとサティさんの弟子なんだそうだ。短期間で頭角を現す二人に元々素養もあるんだろうと思っていたが、それだけでは無かったようだ。こんな恐ろしい訓練は聞いたことがない。一つ間違えば死に至る。


 私にこんな訓練ができるかと聞かれれば、正直に言う。無理だ。オークリーダーを単騎で簡単に撃破するサティさんとヒロシさんが異常なのだ。本来パーティーで対応するべきモンスターなのだ。オークですらそこらの冒険者でも苦戦するのだ。


 こんなのは命がいくつあっても私にはできない。いや、やるべきではない! 気が付くと私はヒロシさんの方へと駆け出していた。


「ヒロシさん!」


「ん?ああリーシアか、向こうは片付いたようだな?」


「あの!こんなの危険すぎます!シンディさんが死んでしまいます!」


「まぁ大丈夫だろう...と思うけどな」


 と言いながら、ヒロシさんはまたリーダーを後方へと押し戻した。


「はぁ、はぁ」


 シンディさんが息を切らしながら戻ってくる。


「どうした?そろそろ限界か?」


「いえ、大丈夫です。まだ出来ます!」


「ダメです!シンディさん、もうやめて下さい!下手をすれば命を落としかねません!」


「リーシアさん、話は聞こえてましたよ。でも、大丈夫です」


「いえ!こんなのは間違っています!命を粗末にするようなことは許される事ではありません!」


「んー、そうか。そう言われると辛いな。よし今回はこの辺にしておこうか」


 そう言うとヒロシさんはリーダーに詰め寄り瞬く間に切り伏せた。最初からこうしておけば良かったのだ。わざわざ死地に踏み込む必要などない。


「余計な事を...」


「え?」


「リーシアさん、なぜこんな...余計な事をしてくれたんですか!」


「え? でもあのままでは...」


「もう二度と私の邪魔をしないで頂けませんか」


「邪魔って...」


「あなたに同情される程に私が弱いのは認めましょう。だがあなたにとやかく言われる筋合いはない。余計なお世話です」


「同情だなんて...弱いも何もシンディさんは十分にお強いじゃないですか!」


「あなたは何も知らない。何も分かってない。だからこのような事を...」


 そう言うとシンディさんは立ち去ってしまった。



---------------------------------



「クロちゃんや」


「どうしたんですかヒロシ様?」


「シンディがちょっとお冠なんだよね」


「さっきの戦闘の件ですか?」


「そう。ちょっと行ってシンディを宥めてやってよ」


「それは良いですけど、僕には無理ですよきっと。ああ言うのは当人同士の問題ですよ」


「そうかぁ。そうだよなぁ。こう言うの難しいからな」


「でも、普段みたいに流さないだけ気にしてるじゃありませんか」


「茶化すなよぅ。心配なのは本当なんだよ。サティはどう思う?」


「放っておけばいいのよ」


「やっぱりサティだな」


「ですね」


「なによ?」


「いや、おかげでスッキリしたよ」


 あの後、ポーターの所まで戻り休憩している。彼らが討伐部位を回収して来たら出発だ。


「お、ちょっといいか?」


「ああガイアスお疲れ様」


「さっきはウチのリーシアが済まなかったな。悪気はないんだよ」


「分かってるよ。分かってるから難しいんだよね」


「まあそうだな」


「これから少し進んで今日はそこで休もうか?」


「俺たち天空の剣はそれでいい。サティはどうだ?」


「それがいいわね。それで一度街に戻った方が良いと思うわ」


「戻るのか?」


 サティが言うにはリーダー三体の発生はやはり異常らしい。ジェネラルクラスの発生も視野に入れておくべきだと。このまま遭遇しても今のメンバーでは大きな問題ではないかも知れないが、入れ違いに本体が街に到達した場合がヤバイ。闇雲に森の中でオーク狩りを進めるより一度街へ戻って警戒態勢を取らせることが大切だという事だ。これは俺たちも賛成した。戻ったら町が壊滅状態でしたでは目もあてられん。


 結局、それなら前へと進まずに昨日の野営地まで戻って早めに帰ろうという事になった。ポーターも戻ってきたし、それではそこまで戻るとしよう。



---------------------------------------



 その夜、夜の見張りもポーターの仕事だが私は起きていた。と言うか眠れなかったと言った方が良いのかも知れない。気が昂っていたとは言え、私はシンディさんに対して言い過ぎたのではないかと自責の念に駆られていた。


「はぁ、わたしもまだまだ修行が足りないんだな」


 テントから外に出て焚火の前へと歩いていくとシンディさんがいた。


「シンディさん」


「あ、リーシアさん、どうしたのですかこんな夜中に...」


 シンディはそう言ったものの、彼女も気まずいのか次の言葉が出てこない。


「いえ、眠れなかったものですから。あの、ちょっと隣に座っても良いですか?」


「ええ、構いませんけど」


「昼間の事で、お話をしたくて」


 と言いながらも言葉の先は続かず私たちは無言だった。


 たまに吹く風が私たちの間を通り抜け森の木々を揺らしていた。




お読み頂きありがとうございます。

ブクマ、評価を頂けたら嬉しいです。

引き続きよろしくお願いします。

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