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本日二度目の投稿となります。
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逃げた先、そこには明らかに野営しているオークの群れがいた。焚火の跡や何か食べた残骸などが周りに事がっている。数は20体以上いるのではないか?オークの集団が街になだれ込んだら一般人などどうしようもない。
「あの少し大きくて色が黄色っぽい奴がリーダーだ」
「今回は突撃みたいな格好だ。ここは俺たち天空の剣がチームとして先陣を切る。サティ達はチームでもソロでも行けるだろうから、個別撃破を狙いつつ俺たちを中心にして多方向へ展開する。この作戦でどうだ?」
「いいわ、それで行きましょう」
「じゃあ、決定だな。前と同じでラースの射撃が戦闘開始の合図だ」
ラースは小さくうなずくと森の中を走っていった。彼も森の中での動きは速い。木を避けながら走るスピードは大したもんだ。木が避けているようにも見えるほどだ。
茂みの中で待つこと数分。目の前のオークに矢が数本突き刺さった。
「行くぞ!」
ガイアスとフィルが飛び出した。その両脇を俺とシンディ、サティとクロが並走する。後方の真中にはリーシアがいる。
不意を突かれ連携が乱れると思ったオークは思いのほか冷静だった。恐らく戻ってきたオークから既に連絡が入っていたのだろう。もう一つ大きな理由はあのオークリーダーの存在だ。わらわらと集まるオークに指示を出しているようだ。
雑魚は切り捨てまずはリーダーを狙う。そう思った時だった。奥から違う黄色い個体が出てきたのだ。
「おい、あれもリーダーか?」
「そうだろうな、ちっ、まだ居るぞ。何体いるんだ!」
リーダーが発生すると、知恵ある魔獣は個体攻撃から連携攻撃へとその戦法を変える。連携の恐ろしさはもはや説明は要らないだろう。しかも膂力で勝っているオークだ。
「ヒロシ、どうも三体見たいね!私たちは左側へ行くわ!」
「ああ、そうみたいだな!了解、じゃあ俺たちは右側だな!」
「ヒロシさん、俺たちは作戦通り正面から行きます!サポート頼みます!」
ガイアスが走るその横をリーシアのエアバレットが追い抜き右側のオークの顔面に被弾。
「ブモオオオ!」
左側をフィルが切りつけている隙をついてガイアスは一気にリーダーへと肉薄する。
ザシュッ!
炎を纏った剣がリーダーの腕のあたりを切り裂く。が、リーダーは次の斬撃を上手く斧で払う。
そのままガイアスへと振り下ろすが、ガイアスは直ぐに後退、フィルと対峙しているオークの背中を切る。上手い。オークはそのまま崩れ去り、ガイアスは振り向きざま反対のオークが振り下ろしてくるこん棒を剣で受ける。
その隙に今度はフィルがリーダーへと接近、軽く剣を交えた程度で直ぐに退く。ガイアスは攻撃をしながらオークの背中側をリーシアの方向へと誘導する。
バシッバシッ!
エアバレットがオークの無防備な背中へと放たれる。オークはリーシアの方へ向こうとするが、向けばガイアスに後ろから切られるだろう。オークはしばし逡巡したが背中から受けるダメージが大きいのかとうとうリーシアの方へと振り返ってしまう。
ズバン!
ガイアスの剣が振り下ろされる。そのまま身を翻しリーダーへと向かう。フィルは上手く身を躱してヒットアンドアウェイを繰り返している。離れた際にリーダーは追撃を仕掛けようとするが、飛来する矢がそれを許さない。リーダーの肩から腕にかけて既に矢が何本か刺さっており、片手は既に使えない状態だ。
リーダーは片手でガイアスへと攻撃を仕掛けるが、その死角から無防備な脇腹へとフィルが鋭く剣を振りぬく。何度か繰り返し攻撃を浴びたリーダーはやがて崩れ落ちた。しかし、ガイアスはそれで止まらない、天空の剣は残ったオークへと直ぐに向き合うのだった。
「シンディ、周りの雑魚は俺が引き受けよう。お前はリーダーを狙え」
「はい!」
「無理はするな。ダメと感じたらすぐに距離を置くんだぞ?」
「分かりました!それでは行きます!」
前にも言ったが、オークなど物の数に入らん。俺は偃月刀を左右に振り草刈りでもするかのように前進する。
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よし!リーダーを倒した!私はエアバレットが上手く当たったことに熟練度が上がっていることを実感していた。リーダーはオークの中でも強力だ。決して油断して良い相手ではない。そのリーダーの一団と戦っても私たちはまだ余裕を残している。強くなっている。私は次の標的へと意識を切り替え、前に進もうとした。
「ちょっとガイアスさん、見て下さいよ、あれ」
「この眼で実際に見ないと、この光景は信じられねえだろうな」
ガイアスとフィルが話している。私もつられて目を向けるとそこには信じられない、いや今なら信じられるが...ヒロシさんがいた。
彼は手に持ったあの長い槍のような武器をただ左右に振るっているだけのように見える。確か青龍偃月刀という名前だったはずだ。その一撃でオークは体ごと吹き飛ばされている。一言で表現するなら、出鱈目だ。その攻撃力、範囲、速さ、オークが彼らの間合いの遥か外で切られている。息があるオークもいるがそんなことは気にしないかのように歩いている。立ち上がろうとするオークはラースが確実に頭へと矢を放っている。と思ってみていると、足や肩などにも矢が刺さりだした。ヒロシさんに隠れて撃ちにくいだろうに、わざわざ狙って撃っているのだろうか?
「あっちも無茶苦茶だな」
「そうですね」
私は反対側へと意識を向けた。
クロードさんがオークと格闘戦を拡げているその上。サティさんが飛び上がりリーダーへと一瞬で距離を詰めている所だった。速すぎる。リーダーは斧を振り下ろすがそれを空中で躱し、回転しながら双剣を振り下ろす。着地と同時にリーダーの体からは血が噴き出し地面へと突っ伏した。
オークリーダーなどサティさんの前ではただの雑魚なのだろうか?美しい。その立ち姿に感動すら覚える。親衛隊があるとの噂だがどうやったら入れるのだろうか?
しかし空中で体勢を変化させることなど可能なのか?着地した後はクロードさんと対峙しているオークを背中から切りつけて片付けている。
狐炎のサティ。大陸屈指の冒険者の名はやはり伊達ではなかった。
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