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よろしくお願いします。

「冒険に行こうと思います」


 今、商会の社長室で皆と話をしている。


「どうしたんですか急に?」


「クロ、お前も来い」


「ええ!」


「お前も冒険者の端くれだ。胸が高鳴るだろう、そうだろう。みなまで言うな」


「いえ、言わせて頂きます。このクソ忙しい時に冒険に行くなんてマジあり得ないっすよ。行くわけないでしょ」


「なによ、クロちゃんよく聞こえなかったわ?」


「喜んで行きますサティさん」


「決定ね」


「お前鈍感系の癖にこういう時は早いよね」


「本能に従ったまでです」


それは、命の危険を感じたって事かよ。


「ケビンから依頼が出ててな。最近の魔獣の増加に関する調査及び必要に応じて討伐だ。これには天空の剣とシンディも参加する。暁の砂嵐は他の依頼で今回はパスだと」


「シンディさんはまだソロなんですか?」


「ソロだけど、もうパーティは組まなくても良いかとも思ってる」


「そうなんですか?」


「シンディ、別に冒険者でなくても良いだろう?」


「依頼の話があると聞いて来てみたら私が冒険者を辞める感じの流れに驚いているのですが、、、すみません理解が追いついていません」


 シンディは順調にそのレベルを上げている。最初はパーティを組ませて商会お付きにしようかと考えたが、実際に必要な時には暁の砂嵐がその役割を担っている事が多い。今回はパスだがそれは今は置いておく。そこでシンディをよく分からん奴と組ませるよりはいっその事商会に入れてしまおうと考えた。新しく考えている情報管理部だ。シンディは鼻も利くし頭の回転も速いし腕もいい。組織の中では俺の直轄として普段はメイドとして周りの事もしてもらう。要するに今後大きくなる商会に対してちょっかい掛けてくる奴らの情報集めだ。あと、個人的な考えもあるが。


「と言う訳だ。冒険者を辞めるわけじゃない。商会の組織は俺直轄になるが直属のボスはクロードになる」


「え?僕ですか?」


「そう、クロが適任だと思うんだよ。必要な判断は俺がするけどね。と言う訳だシンディ。どうだ?」


「はい、分かりました。元々ヒロシ様の為に働くつもりでしたので近くに置いて頂けるなら私としてもありがたい話です」


「じゃ、決まりだな。詳しいことはクロに聞くと言い。基本的に普段の働く場所は商会か工場側の事務所となる。たまにカールやアンジーの様子を見に行ってやると良い」


「分かりました。ありがとうございます」


「その分キッチリ働いてもらうから別にいいよぅ。あ、給料に関してはソニアに聞いてね」


「で、ヒロシ様、いつから行きますか?」


「明日の朝一から出発だ。天空の剣とも合流していくことになる。後、この調査には俺の個人的な目的も含まれているんで、協力して欲しい」


「なんですかそれって?」


「素材集めさ。Namelessの商品って各種ポーション、同じく各種毒消しとアロマ、エナジードリンクが主力商品だ。彫刻系と土木建築は今はどけておく。もう少し手を伸ばしたいなぁと」


「他に何かありますかね?」


「それなんだよな。今考えてるのは魔力ポーションと美肌系のローション?かな」


「魔力ポーションってなんですか?」


「飲めば魔力が回復するような飲み物だけど...」


「中々夢がありますね」


 そう、魔力ポーションがないのだこの世界には。定番ではないのか? 魔素を取り込んで魔力を蓄積させる器官があるなら作れると思うだけどな。もし作れたら、おいおい、これ儲かっちゃうんじゃね?


グフ...


「「それは後回しよ」」


「え?」


 サティとソニアがハモってるぞ。俺の妄想の時間が一気に消し去られてしまった。


「「美肌系のローションの説明をしなさい」」


 怖い。


「いや、お肌を奇麗にしたりとか、ダイエット? ええと、スタイルを良くするのに使う、体に塗る薬液の事です」


「ヒロシさん、何を置いてもそれを直ぐに作ったら良いと思うわ」


 ソニアさん、口調は優しいけど内容がキツイです。


「いや、出来るかどうか分かんないし、あくまで作れたらなぁって思うってる段階で...」


「なによ、作りなさいよ」


「サティ、そうは言うけど道路建設もあるし結構いそが...」


「あんなのは加盟なんとかにやらせておけばいいのよ」


「君たち二人は中々欲望に忠実だよね」


「でもヒロシさん、絶対売れると思うわよ」


「間違いないわね」


「マジで?」


 そうか? こっちの人も美に対する意識は高いのか。そらそうだよな。女性である以上当然か。そう言えばシャワーはあるけど石鹸とかも米ぬかみたいなものだもんな。石鹸とシャンプー、リンスでお肌を奇麗に、そして薬液で皮膚のみならず体系までも整えちゃう。これはあれだなエステだな。富裕層や貴族にバカ売れするんじゃないか?一般用と高級品に分ければ庶民にも広がるだろう。これは...いけるかも?


「グフ...グフフフフフフ」


「成功ねソニア、やる気のスイッチが入ったみたいよ」


「ええ、これで一安心ね」


「あの、みなさん?ヒロシ様の様子がなんだか...」


「ヒッヒッヒ、おっと、ボーっとしてた。それじゃあ明日から行くから。サティ、ケビンさんに言っておいて」


「わかったわ」


「シンディも明日から頼むよ。ん?どうした変な顔して?」


「い、いえ。 なんでもありません」


「じゃ、かいさーん」



 石鹸を作るには米ぬかを使って作ることもできるが、Namelessの商品として売り出すものとしてはインパクトが薄い。やはり汚れがちゃんと落ちて、良い匂いがする。これだ。そんな石鹸どうやって作るんだと言う話になるが、水酸化ナトリウム溶液があれば可能だ。水酸化ナトリウムは皮膚についたら激しく皮膚を侵し、一滴でも目に入ると失明の可能性もある劇薬だ。


 これを作るのは無理だ。専門的な知識がない。だがしかし、俺は以前サティから皮膚が爛れる毒液を吐く魔物の話を聞いたことがある。もしかしてそれは強アルカリ性の溶液ではないのか?

センチピードデビルとかいう魔物らしいが、この毒液にその成分が含まれているのではないかと睨んでいる。そしてその成分の詳細を俺は調べることが出来るのだ。


 先ほどサティに聞いたらギルドには無いらしいが、森では比較的多い魔物であり、その危険度から討伐対象にもなっているとの事。クックックまさに渡りに船とはこのことだ。センチだかメートルだか知らんが、この手で全て駆逐してやる。


 そして今日、俺たちはこれから森へと入る。数日間は森でこもっていられるよう装備も万端だ。といってもテントと簡単な調理器具しか持ってないが。マジックバックから家を出すようなことはできないのだ。欲しいなぁマジックバック。


「久しぶりだな、ヒロシさん。今回はよろしく頼むよ」


「ああガイアス、こちらこそよろしく。天空の剣としては良かったのかな?手伝ってもらって」


「全く問題ないさ。むしろこっちからお願いしたいくらいだよ」


「クロから聞いていると思うが今回は討伐以外にちょっとした俺の思惑も絡んでるんだ。それを手に入れたら商会からも謝礼を出す。魔物自体はもちろんギルドへ討伐記録として報告したらいいさ。討伐金も貰えるだろうしな」


「そうか、悪いな。もらえる金の分はきっちり働くから任せておいてくれ」


「ああ、頼りにしてるぜ」


 そう言う話をしながら俺たち一行はホスドラゴンの背に乗り森へと移動を始めたのだった。






お読み頂きありがとうございます。

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