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不要不急の外出は控えて読み直してくださいね。
夕食会は盛大に行われるのかと思っていたが、食堂での落ち着いたものだった。まぁ国王の使う来賓用の食堂だ。その広さは相当なものだけどな。
公爵家からは既に嫁いでいる国王の長女とその旦那。侯爵はゴードンとレイヴン。国王は本人はもちろん侍女のレインと長男のシュバルツ4世。4世はまだ子供だ。国の存続のため妾にも子供を産ませているだろうがここには来ていない。当然そんな話は絶対に聞かないし聞きたくもない。
後はウインダムの3人。ホークスは俺と会った時に土下座の勢いで謝罪をしてきた。是非武術を教えて欲しいと懇願された。プライドも何も捨てて強くなりたいために頭を下げる。中々出来る事じゃないちょっと見直したぞ。その後カルディナが私が先だとか言い出して小競り合いになったので俺は気づいてないふりをして逃げた。我関せず。
料理は大変ゴージャスで美味しかった。宮廷料理人が腕によりをかけて作ったんだと。美味い。問題はみんな上品に食べるもんだからガツガツ食べれなかったな。
「で、ヒロシよ。事業の進め方に関しては分かった。ゴードンが担当して出来る限り補助しよう。ゴードン良いな?うむ。円滑に進めれるよう関係各所に通達せよ。もちろん全て余の名前でやって構わん。後は何かあるか?」
「作業員ですね」
「ふむ」
「これだけ長い距離を開墾していくのです。人はいくら居ても足りませんが、過酷な作業に耐えられる人間をどれだけ多く集めれるかと言う事です」
「そうだな。しかし其方はそこも考えているのだろう?よい、申してみよ。聞かぬ事には判断が出来ぬ」
「ありがとうございます。考えはですね、重犯罪奴隷。彼らを使いたいのです」
これは地球でも使用されていた。某大国では当たり前で今も軽犯罪を犯した人は近隣の奉仕作業、過酷な環境の作業は重罪を犯した人間が使われていると聞く。
「うむ、それは問題ない。そうした方が良いだろうな。その辺りの調整もゴードンに任せておいたら良いだろう。後は商業ギルドが全面的に協力する。いや、させる」
最後の一言は怖かったが聞かなかったことにしよう。
「後は、測量士ですね。商業ギルドで優秀な測量士を探すことが大事です。近い内にNamelessのローランド支店を出しますので、そこが落ち着いたら開始ですね。できれば3カ月以内には起工式を執り行いたいと思います」
「起工式?」
「ええ、道路の工事を着工するにあたり、皆さんや工事関係者などを集めて式典を行うんですよ。もちろん大々的な宣伝になりますし、陛下が顔を出すことにより士気も高まります」
「悪くないな」
「更に国家事業は初の試みです。陛下は選んだ商店に『第1号国家事業施工加盟店』を名乗る事を許すようにすれば、その効果計り知れない。リンクルアデル国王が行う国家事業に選ばれた。この文句は垂涎の的ですよ。士気は際限なく上がり続けるでしょうね。その代わり費用は少しだけ抑えるんです。名誉と賃金のバランスを取らす訳です。工事が大規模なのでトータルで見れば商店は間違いなく儲かりますから問題ありません」
「よくもまぁ、次々とそんな考えが出てくるもんだな。大したもんだ。其方この国の大臣か何かにならんか?ああ、これは言ってはイカンかったな。すまん、忘れてくれ。しかし、建設中は儲かるのか?」
「人が多く働く訳です。食物、資材を始めそれらを賄うだけの人や物が一斉に動き出します。ローランドとロングフォードは過去に例を見ないほどの忙しさになる事が予想されます。それはそのまま税金としてリンクルアデル城へと返ってきます。そして開通後は前回お話した通り通行税が入ってきます。机上の空論は避けれませんが、儲かる事は間違いないでしょう」
シュバルツ王は黙ってしまった。あれ?ダメか?他の人も黙っているぞ。ちょっと待ってくれ、俺何か悪いこと言ったかな?その時言葉を発したのはレイラさんだった。
「ヒロシさん、素晴らしい考えです。我々が誰も想像だにしなかった国家事業。人とモノ、お金の流れ。私たちは今あなたから色々なものを学んでいるのです」
大げさだろ、おい。勘弁してくれませんか、良い考えとは思ったが考えつかなかったとかはないんじゃないのか?
「ヒロシよ、正直に言う。皆もこれから話す事に関しては他言無用だ、良いな?其方に関しては正直取り扱いに困っているのだ。アザゼル様からの神託もある。だが一方でリンクルアデル最高戦力を破る程の実力、ロングフォードでは知らぬ者はいない商人としての腕。その腕はもうローランドだけでなくアデリーゼまで巻き込もうとしておる。余はそなたに何をもって報いれば良いのか分からんのだ」
何の話をしているんだ?報いるのは支店を出していいってことで終わってるじゃないか。
「陛下、ヒロシは何と言うか変な所で鈍い所がありましてな。私の方から説明してもよろしいでしょうか? ヒロシよ、陛下は功績を残しているお前に対してどうしたら良いのか悩んでおられるのだ。国としては是非お前にリンクルアデルに残って欲しい。しかしアザゼル様の件もあり露骨には言えないのじゃよ」
「まだ功績は残せてないぞ? それにリンクルアデルに残ってるだろう?」
「妻のサティがドルスカーナに住みたいと言ったらどうする?」
「行っても良いけど?」
「やっぱりそうだと思ったわい。それなんじゃよ」
「いや、意味が分からないぞ。そういう事ならソニアも身内になるじゃないか、、ええとまぁ時期的なものはまだ考えているけどさ。何処に住もうがじいさんのいるロングフォードにいつもで帰ってこれるじゃん」
じいさんは話してくれた。要するに商人としてだけならどこに居てもリンクルアデルも含め利益を上げるだろうから大きな問題はない。大商人として頑張れば良いのだ。なれるかどうかは別にしてだが。
問題は俺の戦闘能力にあるらしい。アッガスを破りウィンダムを破り且つ大陸名高い狐炎のサティを妻に迎えている。確かによく考えたらちょっと出来過ぎだな、とは思う。
金と力を持った人間が権力を欲したらどうなる? 商会を操る俺は資金には困らない。戦闘能力についても申し分ない上に、サティについてくるものは山程いるだろう。人間も多数、獣人女性に至っては全部サティ派になるんじゃないかとじいさんも陛下も言っていた。サティってそんなに凄かったのか。いや、事実ウインダムのNo.2はサティ贔屓だったな。それは今はいい。そんな男がもしドルスカーナで爵位など授かろうものなら、大陸の力関係は一気に変わる。爵位ってそんな大げさな、と思うだろう。
だがその国からしてみたら俺を庇護下に置いていると大手を振って言えるのだ。ヒロシはこの国の人間であると。利用される気などは微塵も無いけどな。
「そんなつもり無いから気にしなくていいよ」
「今はな。だけどこれからは分からん。陛下の心配している所はそこだ」
「他所にはアザベル様は何も言ってないのかな?」
「それは分からん。ドルスカーナが知らなければ絶対に取り込もうとするじゃろうな。だがリンクルアデルにはアザベル様からの神託がある」
「俺まだ何も功績を残してないのに無理があると思うんだが?」
「戦闘力だけで爵位を授けるには十分すぎる功績だ」
「いや、模擬戦だろう? 実戦では分かんないよ。待て待て、そもそも戦うつもりなんてないし」
「それも、『今は』じゃ。もしもだが、もしもどこかの国がサティとソニアを人質として攫ったり最悪死に至らしめたらどうする?」
それを言うか、じいさん。だが、これはハッキリ言っておかないとダメだろう。
「その国の王には死んでもらう」
「そうだろう、冗談ではなくそれだけの武力がお前にはあるんじゃ」
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