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100

本編が100話になりました。

これも皆様のおかげと感謝しております。

引き続きよろしくお願いします。

 シュバルツ王とレイヴン軍務卿、いやその場にいる皆が驚きを隠せなかった。セイラムは担架に乗せられ医務室へと運ばれていく。


 リンクルアデルが誇る騎士団精鋭部隊『ウインダム』のトップ3が悉く撃破されたのだ。ホークスに至っては軽くあしらわれた格好でありながらも受けた攻撃は致死レベルである。これ程までなのか?


 ドレスカーナのアッガスが敗れたというのも頷ける。騎士団の連中は未だ誰も声を上げる事すらできないでいる。私もそうだ。国のトップ3、言わば最高戦力が単独撃破されるなど本来あってはならない。しかもそれを成したのが商人などとは...目の前で起こった現実が受け入れられない。


 アッガスがドレスカーナに戻ったことでヒロシの事は直ちに王国中枢へと上がるだろう。恐らくダルタニアス王もヒロシとの接触を試みるはずだ。ヒロシとしても妻の故郷に行きたくない理由はないだろう。呼ばれずとも行く可能性は高い。


 アザベル様との神託がある中で私はヒロシをどう扱えばよいのだ。私は横にいるゴードンに早急に会議を開くように申し付けた。リンクルアデルとヒロシを繋ぐならこの機会を置いて他にない。アルガスへ戻る前に。ドレスカーナへと向かう前に。


-----------------------------------


 俺たちも部屋に戻ってきた。会食までは部屋でゆっくり過ごしてくれとの事だった。


「驚いたな。ヒロシ、お前本当に強かったんじゃな」


「はは、まあね」


「しかしあれじゃな。アッガスに続いてウインダムまで退けるとは。お前これから忙しくなるぞ?」


「そんな気はしているけど、悪いが戦闘に興味はないんだ。あくまで商人でいけたらなぁとは思ってる」


「ワシもそっちに賛成じゃ」


「明日にはもう帰れるのかな?」


「そうじゃな。夜の会食で予定終了じゃろう」


「そっか、じゃぁ俺は国家公共事業について考えるかな?」


「お前はいつも何か難しいことを考えておるのう」


「難しそうな言葉を使ってるだけさ」


「ワシにも一枚噛ませろ」


「ちゃっかりしてるよじいさんは。分かってるよ。その時はまたお願いするからよろしく」


「もちろんじゃ」


 道路を引くに必要なモノ。俺はこの世界にあるもので対応可能だと考えている。家や宿屋を作る技術や石畳を引く技術があるのだ。測量はできないとおかしい。森を横断させるわけだが、ここの森はアザベル大森林ではないので特に神々に気を使う必要もない。


 道路の幅は7mで考えている。これだけあれば大きい馬車がすれ違う事もできる。切りの良い所で10mと言いたいだろうが、400㎞に及ぶ距離だ。3m幅を広げるだけでその作業面積は激増する。


 ロングフォードとローランドの両側から測量を開始し、2点同時進行で真中で結合させる。それを円滑に動かすためにまずNameless商会を早急にローランドに立ち上げる。


 伯爵のお墨付きで商業ギルドの協力は取り付けられたが、それを更に確固たるものにするにはやはり国王の発言力を置いて他にないだろう。金は出してもらえるがどこまで協力してくれるかが鍵だ。ゴードン内務卿あたりが担当になってくれれば良いのだがな。


 と、コンコンと誰かがノックする音が聞こえる。クロがドアを開けるとカルディナさんが立っていた。


「突然訪ねてきてすみません、少しだけお話をさせて頂いてよろしいでしょうか?」


「ああ、これはこれはカルディナさん、どうぞ中へ入って下さい」


 じいさんが中へ入るように促すと、後から2人ついてきた。


「おお、レイラ様ではございませんか!わざわざお越し頂きありがとうございます」


 レイラさん? あ、国王様の次女の巫女様だ。どうしたんだ、ビックリするぞ。いいのか? 城内とは言え...いや良いのか。城内だし仮にも騎士団の護衛付きだ。問題ない気がする。


 あと、もう一人は誰だ? 侍女か?


「これはこれは、セイラムさんも来て頂いて大変嬉しく思います」


なに? セイラムって言ったかいま? セイラムさんってこの人なの? 女性じゃないか!兎に角まずはご挨拶だ。


「レイラ様、わざわざお越し頂き大変ありがとうございます」


「ゾイドさん、ヒロシさん、突然の訪問に対する非礼をお詫びします」


「非礼だなんてとんでもございません。さぁどうぞこちらへ」


 3人がソファへ着席するとセバスさんがササッとお茶を用意する。流石セバスさん。クロも後ろに控えているぞ。クロは残念な所がたまにあるが優秀なのだ。


「あの、セイラムさんと先ほど聞こえましたが、こちらが...あのセイラムさんですか?」


「はい、僕がセイラムです。ヒロシ様の強さには驚きました。色々と話がしたくて来てしまいました。」


 ボクっ娘か。いるんだな。歳は若そうだ。15歳くらい? 成人したばかりかな? と言う事は騎士団へどうやって入団したんだ? 初年度で序列1位って可能なのか? 色々疑問が沸き上がるが、こういうのは気にしたら負けだと自分に言い聞かせた。


「いえいえ、あなたも強かった。相当な修練を重ねたんでしょうね。しかしセイラムさんが女性だったとは驚きました」


「僕、男だよ?」


 なんだとぅ! どっからどう見ても少女だろうが!


「え? はは、冗談ですよね?」


「え...と、見る?」


「見ません。おいおいおい、や...やめろ!」


 セイラムはズボンに手を掛けて下ろそうとしていた。何をやろうとしてるんだお前は! しかし信じられん。ボクっ娘の方がまだ自然だぞ。


「は! レイラ様すみません。少し驚いてしまいまして」


「ふふ、良いのです。私もヒロシさんと騎士団の模擬戦では驚かされてしまいました」


「いや、お恥ずかしい」


 皆さんとは色々な話をさせてもらった。レイラさんは聞きたいことが多いのだがアザゼル様との約束もあるから聞けないのでモヤモヤしていたらしい。でもこうして話をする事で分かることもあると喜んでおられた。


 俺のしている商売についても興味深く聞いてくれた。巫女としてのイメージが強いがこの国の王女様だ。広く優しい心を持った人って言うのが伝わってきた。


 カルディナの話によればホークスは自分の不甲斐なさから立ち直れていないらしい。元々自信家である彼のプライドは商人である俺によって粉々に粉砕されたらしいとの事。


 でも、騎士としての礼節も弁えずコテンパンにやられた彼は自身を見直し深く反省をしているようだ。セイラムは両親が早くに亡くなり、孤児となりそうなところをレイラさんが神託を授かり保護したんだと。


 彼には魔法と剣聖のスキルがあり、15歳を待たずにその才能は開花。元々練習の虫であった彼はメキメキと頭角を現し、実力で序列一位を勝ち取ったとの事だ。素晴らしい。


 当然、力が全ての騎士団で彼の実力は正しく評価されている。リンクルアデル騎士団創設以来の天才との事だ。彼が模擬戦を含めた実戦において、敗北したのは俺が初めてとの事だ。


 騎士団が受けたショックに皆沈んだ雰囲気だったそうだが、アッガスにも土を付けた俺を追い込んだ事に対して前向きな意見が多かったようだ。実際強かったしな。


 確かに勝ってはいるがなんて言うのか本当に紙一重だ。勝った者が言うのは嫌みに聞こえるかもしれないが、それは本当の事だと皆に伝えておいた。あとセイラムとはもう戦わないという事もな。


 そんなこんなで時間は過ぎて行き、夕食の時間が近づいてきた。皆も一度部屋に戻るらしい。また後ほど、と言いかけた時にセイラムが俺の事を『お兄ちゃん』と呼んで良いかと聞いてきた。


 『何故だ』と聞こうと思ったが潤んだ目で見上げられると何だか変な気分になって思わず頷いてしまった俺は悪くないと思う。何だろうか、何度も言うが俺は薔薇の世界に興味はない。だが今回ばかりは断ってはいけない気がしたんだ。


 別に良いだろう、実害があるわけでもなし。




お読み頂きありがとうございます。

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