目覚めた先には……
「おねーちゃんおきて!」
蒼汰にゆさゆさと肩を揺らされ、茜は目を擦りながら、蒼汰の頭をヨシヨシと撫でる。
「ハイハイ、おねーちゃん起きたからね、蒼汰は早起き出来てエライねー」
「おねーちゃん、まだねてるぅ?」
蒼汰の不満な声を聞かながら、どうしたのかと聞こうとして蒼汰を見ると、涙目な蒼汰と緑鮮やかな草木が目に飛び込んできた。
茜は目をパチパチさせながら、自分がいつから寝ていたのか考えた。
あれ?確か…お母さんのお墓参りに行って……公園でお弁当食べてそれからは……穴に蒼汰がっ!!
「蒼汰!!怪我ない?痛いところない?大丈夫!?」
茜は慌てて蒼汰の頭や腕や足を触って怪我の有無を確かめると蒼汰は痛くないアピールの為か元気に跳ねて応える。
「僕痛くないよ!おねーちゃんは?」
「おねーちゃんも大丈夫だよ!それよりもここは……」
茜はホッと胸を落ち着かせると立ち上がり周りを見渡すも木や草が生い茂っていて、どう見ても自分たちが居た公園ではなく、何処かの森のような場所にいる事がわかった。
茜は自分たちに何が起こったのかまるでわからず、どうやって助けを呼ぼうか考えた。
「あ、鞄の中にスマホを入れっぱなし…。」
周りを見渡しても、鞄どころかお弁当のゴミすらない。茜は天を仰ぎ考え込む。
穴から落ちたら別の場所ってまるで映画じゃあるまいし……。なんなの!?どうやったら家に帰れる!?
茜が一人で葛藤していると、泣きそうな蒼汰が茜のスカートを掴み声をかける。
「おねーちゃん…お家かえれる?ここどこー?」
「だ、大丈夫よ!帰れるよ!おねーちゃんに任せて!おねーちゃん嘘つかないでしょ!ね?」
茜は蒼汰に心配かけないように、声をかけとりあえず、蒼汰と手をつなぎ、森の中を歩き出す。
舗装されていない山道はあるき難く、まして二人は墓参りの為、茜は制服のブレザー姿、蒼汰はお出かけ用の礼服と子供用革靴だ。
間違っても森を彷徨うに適した服装ではないため、休みを度々取りながら歩くしかなかった。
「おねーちゃん喉乾いたよ……」
「ごめんね、もうちょっとしたらお外に出るから…ごめんね」
蒼汰が喉の乾きを訴えても飲水すらなく、なだめてやり過ごすしかなく、茜は不安で泣きたくなるのを我慢しつつ歩みを進めるしかなかった。
歩きだしで約2時間は歩いただろうか、蒼汰の体力に限界が訪れ、とうとう泣き出してしまう。
茜は蒼汰をあやしながら、背におぶって森の中を歩き続ける。
不意に蒼汰が泣き止むと、疲れたのか背中で眠ってしまったようだ。
茜は足を止めず何とか森の外にでれば人がいて、帰り道を教えてもらえないかと思い必死に足を動かし歩を勧めていると、後方の茂みがガサガサッと音がなり響いた。