本編(中編)
僕は、街を滑走する。
上半身裸で、両手に剣を持ち、馬のように四つ足でだ。
街の人間の視線は冷たいが、僕の目的の前には、
些細な問題だ。
例え、街の人間に、仮面変態ダーと言われようとも。
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僕とデゥラハンの彼女は、
ダンジョンに向かうために、作戦を練った。
彼女の頭部がある感じにしないと、街中を歩いて、
中央にあるダンジョンに行くことができないからだ。
始めに、彼女にフルプレートをあてがったが、
重くて、一歩も歩くことができなかった。
彼女は、村人でL1のデゥラハンだったからだ。
圧倒的に力のステータスが足りなかった。
ブーツ、下鎧、ガントレット、上鎧と、外していくと、
フルプレートが頭だけになった時、何とか歩くことができた。
急な動きをすると、頭が前へいったり、後ろに倒れたりする、爆弾もちだが。
頭は、フルヘェイスでいいが、他の装備も決めていかないといけない。
武器には、移動の少ない弓とした。
それにあわせて、ガントレットは、弓技術の向上をもった魔法のガントレットを、
アクセサリーには、腕力と器用さを増強でブーストさせた。
残念だが、それ以上の装備をするには、重量オーバーだ。
服装は、いつものメイド服となった。
僕は、大盾と長剣、ミスリルのフルプレートを付けている。
この装備で、二人のパーティであれば、
寄生していた僕だとは気付かれることはなかった。
僕と彼女は、低階層からゆっくりと1階層毎にゆっくり攻略していく。
彼女の頭が、どこにあるかはわからない、全てを回るしかないのだ。
片っ端から、モンスターを見つけるは、狩っていった。
彼女は、はじめての弓で、誰からも習っていないのだから、
最初から期待は、していない。
モンスターに当てるより、僕に当てている数のほうが多かった。
一週間をすぎるころには、半分くらいの矢をモンスターの体にあてることが、
できるようになった。
それに合わせて、僕の方も、だんだんと長剣を扱えるようになった。
とはいえ、僕の場合はステータスが高すぎるから、わんぱんだが。
二週間を過ぎるころには、20階層で敵を狩っていたが、
矢が僕に当たることは、なくなった。
一か月を過ぎるころには、主戦場は40階層になっており、
敵も強敵になっているにもかかわらず、
彼女一人でも射殺すことができるようになった。
すべてが順調に成長していったことで、失敗が隠れていることに気付かなかった。
調子にのった彼女が先行し始めたのだ。
彼女の方が射程が長いこともあり早く戦いにはいっては倒していったのだ。
50階層を進むときには、僕が討伐することはなく、
彼女は、数歩も前を歩いて、倒しては嬉々として自慢してきた。
そして、問題の56階層となった。
この時も彼女が先行して、僕が後からゆっくりと彼女に近づいて行った。
急に、彼女が、モンスターの討伐に失敗した。矢をはずしたのだ。
矢をはずしたのは、この二週間で一度も無く、彼女の身に不安を感じたが、
まずは、敵を、倒さないといけない。
僕は。モンスターが向かっていっている彼女の方に急いだ。
彼女は、僕が近づいていくと、来ないでと言っていたが、
そうもいってはいられなかった。
モンスターを一刀のもと倒すと、彼女は足首まで埋まって
身動きが出来なくなっていた。
急いで、更に彼女に近づき、長剣を彼女に差し出した。
彼女が刀身をつかむのを確認し、力をこめて沼地から引きずりだすと、
入り口に向かって投げ飛ばした。
僕の方は、投げ飛ばした反動で、彼女がいた方向に倒れ込んで、しまった。
悪いことに、僕が倒れ込んだところは、沼地だったのだ。
その場に立ち上がると、彼女と同じように脛まで、はまってしまった。
彼女より深く沈んだのは、重い装備をしていたことが災いしたのだ。
彼女の力では、ぼくを持ち上げることができなかった。
僕を引きずれるようなものを探してくれるよう頼むと、彼女は走りだした。
再び彼女をみたのは、四時間後だった。
その頃には、僕は、腰までつかっている状態だった。
そんな僕の状態より、彼女の状態に驚愕した。
体中に剣撃で裂傷がみえ、メイド服は、魔法の攻撃からか火傷で、破れていた。
みてるこちらが。いたいたしかった
彼女は、急いで探しまわったことによって、
フルフェイスがはずれたんだろ、今は身に着けていなかった。
フルフェイスがなくなったことによって、冒険者に攻撃されたのだ。
彼女の声は弱弱しく何をいってるのか判らなかったが、手には蔓を持っている。
その蔓を僕の方に投げつけてくれたが、
引っ張っても、僕は、ピクリとも動かなかった。
僕は覚悟をきめると蔓を手放した。
彼女は、諦めないでと語っているが、
僕は、諦める気持ちは微塵ももっていなかった。
フルフェイスを脱ぐと、魔法のバックを中にいれて、彼女の方にぶん投げた。
ガントレットをはずし、正面の沼地に置き、
上鎧を脱ぐと、さらにその上に置いた。
上鎧の上には盾をおき、手を置きやすようにすると、
下鎧の留め具とブーツを脱ぎ、
下鎧を足場にして、もう片方の足を引き抜いた。
片手では、つるを持ち直し、バランスを合わせ、片手を盾に置くことで、
前に行くことに集中した。
彼女が蔓を強く引っ張ることで、
両足を沼から抜け出すことができた。
あとは、沼地に沈む前に、彼女の下に飛びつくことで、
窮地を逸することができた。
彼女は泣きながら僕を抱きついてきた。
バックからポーションを取り出し、彼女に振ると、
彼女の傷は治っていったが、彼女はまだ気づいていない。
しばらくすると、彼女も落ち着きを取り戻し、
彼女と共にいったん、洋館にかえることにした。
2人ともどろだらけだったからだ。
彼女の頭に僕のフルフェイスを乗せると、
彼女は、少し照れたような仕草を見せた。
僕は、予備の剣と盾を取り出し、ダンジョンの入り口に戻った。
ダンジョンの入り口で、僕が初めて入れてくれたパーティのメンバーがいて、
驚愕の表情を浮かべている。
僕は、無視をして、彼女の手をとり、洋館に向けて走り出した。
途中で馬車を見つけると、呼び寄せ、洋館まで送ってもらうように頼んだ。
しばらく進むとすぐに洋館に到着した。
すぐに、彼女と泥を落とすため、
一緒にお風呂に入ってからは、彼女は更に特別な存在となった。
一週間後、装備を一新し、
改めて、ダンジョンに潜り始めた。
このころにあると、ダンジョンは、70階層に到達し、
彼女の攻撃や、僕のワンパンでは、倒せなくなってきた。
そうはいっても数劇で決着はつくのだが、
今後を考え、スキルを使った連携を開始し始めた。
最初のうちは、僕の指示どおりに、矢を射ることができなかったが、
一日毎に、一撃で倒せる回数が多くなり、一週間を過ぎるころには、
初見の敵以外は、ワンパンで倒せるようになった。
80階層にいたドラゴンは復活していたが、
毎度眠っているのか、LV上げにちょうど良かった。
ドラゴンを討伐すると、LVは、300を超え、
またも、スキルを使用する必要がなくなったが、
僕たちは、56階層を言葉に油断せず、突き進んでいった。
90階層のボスは、デーモンだったが、一撃のもとに葬り
もはや僕たちに苦戦する敵はいないように思えた。
くまなく倒すことを一時中断し、今日中に魔王のもとにいくことを彼女に話をした。
彼女の頭は、これまでもくまなく散策したが、いずこの場所でも、
発見することはできなかった。
そのため、僕の呪いの解呪を先にしてもらうことにしたのだ。
くまなく散策すると、一日一階層がやっとだからだ。
彼女は、二つ返事で、了承すると、
早く行こうねって言ってくれた。
91、92と階層が近づくにつれ、僕の心は躍っている。
ようやく声が出せるようになると思うと、
駆け出して行ってしまいそうになった。
出てくる敵も強敵でいっぱいのはずだが、LV差には勝てず、毎度一撃だ。
だが、あわてて、56階層のような二の舞はごめんだった。
慎重にあたりを気にしながら、ゆっくりと進んだ。
手に力が入りながらも、99階に危なげなく辿り着き、僕の目の前には、階段がある。 この階段を登れば、魔王がおり、僕の声は戻るのだ。
僕は、100階層にたどり着く扉を開いた。
周りには、今まであったダンジョンではなく、青空が広がり、
雲が眼下に広がっていた。
先の方に小さい館が立っていた。
前方に2つの人影が見えた。
奥の一人は、斜め後ろに従っているように見えることから、
前にいるのが、魔王なんだと思った。
どうやら、敵対行動をとる気はないようだ、ありがたい。
こちらは願いをかなえてもらう必要がある。
友好的に接しなければならなかった。
僕と彼女は魔王に近づき、挨拶を交わした。
従者はできなかったが、魔王は、念話で会話が行えたのはありがたかった。
「見事だ、冒険者パーティよ。よくぞ、わがダンジョンを攻略した。
その栄誉に従い、一つどんな願いでも叶えてやろう」
「呪いだけじゃなく、どんな願いでもですか?」
「そうだ、どんな願いでもだ。ただし、パーティで一つだけだ。」
「む、ちょっとまて…」
そういうと、魔王は右手をあごにあて、考え事を始めた。
僕は、ここで願い事をなかったことにできないと思い、
直様 願い事を返答した。
「僕の願いは、ただ一つ。
彼女の頭を取り戻し、人間に戻すことです。
可能でしょうか。」
「可能だが、本当にそれでよいのか。
まだ、吾輩の話が途中だぞ。最後まで聞かなくてよいのか?」
彼は、違う願いをさせようとしているが、判断はできないが、今の僕に迷いはなかった。
「本当に私の願いを優先でいいの?」
「いいんだ、僕の呪いは、今度で。」
「わかった。そなたの願いを叶えてやろう」
魔王は、バックから生首の入った瓶を取り出すと、
彼女の胸に押し当てた。
押し当てられた生首は、徐々に彼女の中に入っていいき、
最後まで入ると、彼女の体は光輝き始めた。
僕は、まぶしくて見ていることができず、おもわず、目を閉じた。
再び目をあけた時には、彼女は、人間の姿を取り戻した。
僕は、嬉しさのあまり涙を流した。
彼女は、意識をとりもどしたのか、僕を見ると、
抱きしめようとこちらに走り始めていた。
僕は、彼女が目の前にきたときに両手を肩にかけると、
彼女も、一粒の涙を流し、「ありがとう」と呟いた。
彼女は急に痙攣し始め、僕の顔に盛大に吐血し、その場に倒れ込んだ。