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<150>家族会議、決戦前

 シャーロットがミカエルと一緒にトランクを手に馬車寄せに行くと、公爵家の馬車が停まっていた。エリックが先に乗っているのだろう、人影が乗っている。予定変更したのかな。シャーロットは、ま、いっか、と思った。

 お城に帰る予定のミカエルとは、「またね、」と手を振って別れを告げる。ミカエルがお城から迎えに来た馬車に乗り込むのを見送ったシャーロットは、執事にドアを開けてもらって「ありがとう、」と乗り込んだ。

 座った際に縒れてしまったスカートを直し終え改めて向き合うと、シャーロットは向かいに座るのがエリックではなく、シュトルクであることに気が付いた。

「え?」

「気が付くのが遅いな、シャーロット。」

 そりゃあ、いるはずのない人がいたら驚くよね? シャーロットは目をぱちくりした。知的でハスキーな声で名前を呼ばれると、さらにドキッとしてしまう。

 品の良いチャコールグレイ色のスーツを着ているシュトルクは、首元の白いシャツを大きく開けて膝を組んで座っていた。

「失礼ですが、シュトルク様ですよね? お暇なんですか?」

「暇ではないが、君と話がしたいと言ったら、この時間しかないと言われてしまった。君の母上は結構乱暴だと私は思うが、いかがかな。」

 うちの国の王子様にはいけずと言われています…。シャーロットは恥ずかしくて俯いた。うちの母の王子様の扱いが酷過ぎる。

「まあいい、馬車で二人きりというのはなかなかいいものだ。」

 シュトルクは水色の瞳を柔らかく細めた。

「シュトルク様。先日は御本、ありがとうございました。」

 猫を被ってにっこり笑って、シャーロットは手元のトランクに入れていてよかったと思いながら、トランクを開けようとした。

「よいよい、あの本は君にあげたい。返すなどと無粋なことを言わないで欲しい。」

 シュトルクが開けようとしたトランクを手で制した。

「では、あの挟んであった紙は、私が頂いてもいいのですか?」

 どっちかと言うとそっちを返してしまいたかった。

「ああ、持っていて欲しい。私も、君にいろいろ聞きたいからな。」

「何をです?」

「そうだな、その話し方をまずどうにかしてほしい。それがまず最初に願うことだ。」

 いい加減諦めればいいのに…。シャーロットは口を尖らせた。

「シュトルクと呼んでくれ。」

「…シュトルク、これでいい?」

 満足そうに笑って、シュトルクはシャーロットを見つめた。

「まずは誕生日、好きなもの…。そうだな、一番聞きたいのは、子供が好きかどうかだ。」

「え…。」

 子供が好きとか言われて、嫌いとか言える度胸のある人はいないだろうとシャーロットは思った。好きな人の子供は欲しいけれど、嫌いな人の子供は欲しくない、そんなのは聞かなくても「あなたと同じ」であってほしい。

「あなたと同じ? ああ、それもそうだな。私も自分の子供は愛おしいと思うだろうが、他人の子供にそれほど愛着を抱けるかどうかは判らないからな。」

 え、そういう感じのあなたと同じ、なの? シャーロットは戸惑った。同じ質問でも、生まれる前と後は違うと思うわ。シュトルクは私との将来を子供がいる前提で考えているのね。私はまだそれ以前のところにいるんだわ。

「シャーロットと結婚することになったらこの国を出てもらう事になるだろう。私の国で言葉を学んでほしい。気に入らないがペンタトニークの息子と同じ学校へ通ってもらう事になりそうだが、それは仕方のない事だ。」

「あのですね、シュトルク、」

「なんだ、シャーロット。」

「私がいつ、あなたと結婚すると決まったの?」

 子供の予定もないけど?

「今宵の舞踏会でそう決まる予定だが? 聞いていないのか?」

「ええ、さっぱり。母が勝手に出席と答えて、勝手にドレスも仕立てているとしか知らないわ?」

 シャーロットは確かにうちの母は乱暴かもしれないなと思った。娘に内緒で勝手にそんなことを決めているなんて…!

「今宵の舞踏会で君とこの国の王子の婚約は解消される。お陰で明日以降の君に関する公務も取り消されている。私との街探検はまた交渉するところからはじめなくてはならない。それはまあいいとして…、リンデもそのつもりで入国しているのだが、当事者の君は知らないのか。」

 シャーロットは黙って肯定も否定もしなかった。

 ミカエルから聞いてはいたけれど、仮定の話だと思っていた。確定の話だとは思っていなかった。

「まあいい。同じことだろう。リンデが帰国してすぐ、父に泣きついたのだ。私も好きな人と結婚したい。向こうは虫除けの婚約だ、今なら可能性がある、とね。兄夫婦も君を気に入っているようで、この国に君を置いておくのはもったいないと言ってくれたんだ。」

 もったいなくないから、ちーっとも。シャーロットはふるふると首を振った。

「まあ、私としては、リンデがそう言うなら都合がいいことだし、父としても、リンデは末の娘で猫かわいがりしているからね。出来ればわがままも叶えてやりたい。だいたい調印の結果も我が国とこの国とだけが不完全だ。出来ればもう少し関係を強化したいからな。」

「私は王族ではありません。そんな普通の貴族の娘のどこに価値があるというんです?」

 シャーロットはじくじくと痛む心の傷を想いながら問い尋ねた。普通の貴族のただの娘は、王族の姫にはまたしても勝てないと言うのだろうか。身分の差は当たり前のこととはいえ、婚約破棄を口出しされてまでミカエルを横取りされるのかと思うと腹立たしく思えてしまう。

「君に価値がない? 何を馬鹿なことを。私には君は素晴らしく価値のある宝石に見えるよ? 傍にいるだけで楽しくて、近くにいるだけで心が暖かく思えるなんて、君は素晴らしい人だと思う。私がおかしいとでもいうのか?」

 シュトルクは目を見開いて自分を見つめるシャーロットを見て、おかしそうに笑った。

「君が私と結婚すると想像しただけで喜ぶ子供がいたのを、君も知っているではないか。バンザーイと言ったあの娘の顔を、私はまだ覚えているよ? 私は多くの者に祝福されて結婚するのだと思うが、君はそう思わないのか?」

 シャーロットはシュトルクと歩いた冬の日を思い出した。手掴みで食べた鶏肉の熱さも、お店の高揚した者達の息遣いや楽しい雰囲気も、思い出す。

「私を…、高く評価しすぎではありませんか?」

「何をいうか、評価などしていない。事実だ。私には君が必要で、私とこの国の間にも君が必要だ。それは他の誰でもない、君だからだろう?」

 シュトルクはそう言って微笑むと、シャーロットに「おいで、」と両手を広げた。

 引っ張られるようにシュトルクの膝の上に引き寄せられると、シャーロットはシュトルクの腕の中にいた。シダーとミントが混ざったような爽やかなシュトルクの香りがシャーロットを包み込む。

「ひとりでいるからそんな悲しいことばかりを考えるんだ。いつだって私が傍にいよう。君が自分を虚しい者と思わないように、私が君に愛を注ぎ続けよう。それが、私に出来る君への愛の誓いだ。」

 シュトルクを見上げるシャーロットの頬を撫でて、シャーロットの青い瞳を見つめた。

「君の誕生日は?」

「…9月24日。」

「好きなものは?」

「きらきらしている綺麗なもの、かな。月よりも星の方が好き。星座を探したり見つけたりするのが好き。」

「ほう…、では宝石よりも、鉱石の方がいいのか?」

「そうね、大きければいいってわけじゃないって知ってるわ。」

 シャーロットは微笑んだ。

「あなたは?」

「大勢の女よりも、一人の女に愛されたい。特に、夏の青空のような、青い瞳の、美しい君に。」

 シュトルクがキスしてきても、シャーロットは拒まなかった。自分ではない自分が愛されている。そう思えて、拒むのを躊躇ってしまった。

 長いキスの後、シュトルクはシャーロットを抱きしめたまま、優しく髪を撫でて囁いていた。シャーロットはシュトルクの肩に頬を寄せて、ハスキーな声で囁かれる詩を聞いていた。

 意味はもう知っている。シャーロットは瞳を閉じて、シュトルクの言葉を何度も思い返していた。

 いつだって私が傍にいよう。君が自分を虚しい者と思わないように、私が君に愛を注ぎ続けよう…。そんなこと、誰からも言われたことないわ。


 公爵家へ馬車が着くと、シュトルクはそのまま馬車に乗ってお城へと帰っていってしまった。先にお城へ向かって、舞踏会の用意をするらしかった。

 家の中に入ったシャーロットは、母に出迎えられた。

「お母さま、いろいろとお話があるのですけれど、よろしいでしょうか?」

 シャーロットが猫を被って優雅に微笑みながら母に尋ねると、「いいわよ? お昼ご飯が済んだら話をしましょうか。まだ時間があるもの、」と言った。

「まずは着替えていらっしゃい。」

 母に促されると、シャーロットは自分の部屋に向かった。トランクはすでに部屋に運び込まれていて、着替えの支度も揃えられていた。

 侍女達に手伝ってもらって着替えていると、シャーロットとわりと仲がいい若い侍女(アニス)がおずおずと言った。シャーロットのお世話をしてくれる侍女は、シャーロットよりは年上とはいえ、屋敷内では若い年齢の者が多かった。

「お嬢様、伺ってもよろしいでしょうか?」

「なあに?」

「ジョシュアとバランが結婚するってほんとですか?」

「ナニソレ、知らないわ。」

 いつの間に! シャーロットはびっくりした。

「お城の侍女達と出会いがあったとかって聞いたんですけど、お嬢様が御口添えくださったって…。」

 ほんのりと顔を赤らめた侍女(アニス)の様子に、シャーロットは微笑んだ。

「ああ…。とっても素敵なお店があって、そういうところに一緒に行く人はいないのって聞いたらいないって話になったから、王女様が気を使ってくださって、今度お城の侍女達を紹介するわよって言ってくださっただけよ?」

 ほっとした表情に侍女達が変わったので、シャーロットは嬉しく思った。なんだ、うちの屋敷の中にそういう関係になれそうな子がいるんじゃないの。

「うちの侍女達もお城の侍女に負けないくらい美人揃いなんだからそんな必要ありませんよって私は思ったんだけど、王女様にそんなこと言えないじゃない? だからありがとうございますってお礼を言っただけで終わったはずだわ。」

「そうですか…。」

 頬を赤らめて、侍女達は俯いた。お城の侍女に負けないなんて思ってもらっているとは思ってもいなかったのだった。

「何かあったの?」

「いえ、みんなそうだとしたら、寂しくなるねって言ってたんです。」

 若い侍女(エリー)が寂しそうに言った。

「同じお屋敷で働く者同士だと、近過ぎて声を掛けるきっかけがかえってなくなってしまうので、片思いで終わってしまって、違う誰かと結婚してしまう子もいるんです。」

「そういうもんなのね。」

 シャーロットは着替え終わって髪を整えてもらいながら思った。きっかけがあると違うのかあ…。

「あのね、今日はホワイトデーって言うんですって。」

「それはなんですか、お嬢様。」

「私も教えてもらったばかりで、よく判らない部分があるんだけど…、」

 シャーロットはミカエルの言葉を思い返していた。

「バレンタインデーで気持ちを貰ったじゃない? そのお返しをする日なんですって。好きだよって言われたら、私もよってお返しをするんですって。」

 私はミカエルに何か貰ったっけ? シャーロットは首を傾げた。あら、何も貰ってないじゃない。気持ちを貰ったんだっけ?

「それは、花を貰ったから、ありがとうって答えただけじゃダメなんですか?」

「それでもいいんじゃないかな。あのね…、今度一緒に出掛けませんか? って、お礼に誘ってもいい日なんじゃないのかな?」

 シャーロットは、なんにせよきっかけになったら何でもいいのだろうなと勝手なことを考えていた。

「そうですね。今度お嬢様がコーヒーを美味しいと仰ってたお店に、一緒に連れていってくださいって誘ってみるのも、いいかもしれませんね。」

 この屋敷がある町からあの店にいくのは、ちょっとしたお出掛だ。移動だけの往復時間を考えても、半日潰れてしまう。

 侍女達が嬉しそうに話していた。みんなで誘っても、みんながみんな一緒に行けるわけではないだろうな、とシャーロットは思った。

「あのお店はいつ行っても暇そうなのが不思議だけど、いいお店なのよ。何より可愛いの。」

「可愛いんですか?」

「ええ。そういうのを聞いてみても、いいんじゃないの? 実際に行ってみたいなって、誘ってみたら?」

 嬉しそうに侍女達は微笑んで、ぺこりと頭を下げた。

「ありがとうございます。お嬢様、またジョシュアとバランをお供に連れていってやってくださいませ。私達はご一緒できない分、お嬢様のご活躍をみんなで楽しみに聞いてるんです。」

 あはは、とシャーロットは苦笑いした。それ、ちょっと私をネタに盛り上がってるんだよね、きっと。迂闊なことが出来ないなと思いながら頷くと、シャーロットは部屋を出て、昼食を取りに食堂に向かった。


 母が言った通り、昼食の後は父の執務室で家族会議になってしまった。出かけるまでの時間限定だとはいえ、シャーロットには重要な時間だった。ソファアに座るそれぞれが、黙って誰かが口火を切るのを待っていた。

「単刀直入に伺います。お父さま、お母さま、私、今夜の舞踏会で婚約破棄をされると聞きましたが、本当なのでしょうか?」

「ああ、そうだよ、シャーロット。」

 父があっさりと認めた。

「ワシはちゃんと言ったであろう、お前達の婚約を望まない者が出たらその時は破棄を願い出るように、と。」

 祖父が面白そうに足を組みなおしてソファアに深く座って答えた。

「シュトルク殿が早々にこの国の王にそういう打診をされたのだよ。遠く東方の国の国王からの書状も届いた。虫除けの婚約を解消してリンデ姫を正式に迎え入れるように、とね。」

 父はそう言うと、机の引き出しの奥から、赤い書類挟みを出した。

「あとはこの婚約誓約書を持って、破棄を宣言してもらうだけなのだよ。それに、シャーロットには伝えただろう。隣国の状態を。」

 黙って聞いていたエリックが、シャーロットを見て言った。

「俺は、お姉さまにサニーを選んでほしいと思わない。わざわざ戦火の中に嫁ぐなんて、いくら王族の身代わりでも、それは公爵家の娘のすることではないと思っている。よっぽどリュートの方がましだ。」

「ワシは前々からリュートがいいと言っておるぞ。シャーロットを遠く東方の国になんぞ出せんからのう。お前がいなくなったら調印式で取り決めたことを反故にされかねん。それだけは避けたいからのう。王太子が結婚することになってもそれは王族の責務だろうから諦めるしかないが、お前が王族の責務を肩代わりする理由なんぞないとワシも思う。」

「私は…、」

 母は、シャーロットの隣に座り直して、手を取った。

「あなたが一番望むようにしたらいいと思うけれど、ガブリエル様の気持ちを考えると、少しでもあなたを好いてくれると言ってくれているのなら、サニー様との結婚もいいのではないかしらと思っているわ。シュトルク様でもいいけれど、今のままで、本当にミカエル様と結婚して、あなたは心が晴れたままでいられるのかしら。」

 シャーロットは母の顔を見つめた。

「ミカエル様と結婚するつもりでいろんなことを学んで、いろんなことに耐えてきたのは、私は母親だから知っているわ。いい影響を受けてきていることも、ね。でも、ガブリエル様とも長く親しくしてきたのでしょう?」

「ええ、最愛の妹だと思っています。」

 血はつながっていないけどね。

「ガブリエル様はこのままだとレイン様を天国まで見送った後、サニー様と御結婚なさるでしょう。好きでもない好きだった人の弟と結婚するのは…、いくら王族の責務とはいえ、お気の毒だもの。」

「お母さま。だからといってシャーロットお姉さまが戦火の中に嫁ぐのもおかしい話ではないですか? お姉さまが怪我など…! 俺は許せません。」

「シャーロットはサニー様から何度も求愛を受けているもの、守って下さるだろうし、好きでもない相手、ではないわ。そうでしょう、シャーロット?」

 シャーロットは無言で頷くほかなかった。嫌いではない、そうとしか言いようがなかった。

「私としては、シャーロットが選んだ相手で構わないと思っているが、国王陛下が婚約を破棄と宣言した後、王太子妃にリンデ様、シャーロットはガブリエル王女の身代わり、と仰った場合は、それを受けようと思っている。何より、陛下のご意向だからな。」

 公爵の立場で父がそう言うと、祖父が笑った。

「ワシはシャーロットを国外に出したくはない。リュートを押すように宰相を嗾けるつもりだ。」

「では、俺は弟として、姉を危険に巻き込みたくないと願い出ましょう。」

 エリックはにやりと笑った。

「公爵家としての見解は置いておいて、私の…、父様の個人的な意見としては、シュトルク殿の元へ嫁いでほしいと思っているよ、シャーロット。ローズの影響が一番少ないお相手だからね。国外にいる限り、この先、変な影響もないだろう。国と国の懸け橋として誰からも祝福されてする結婚だ。公爵家の娘としての責務も果たせる。」

 父が優しくシャーロットに微笑むと、その様子を見て頷いて母もシャーロットの手を取って微笑んだ。

「ローズはいなくなったし、私はこの国にいても大丈夫だと思うけれど、またあの娘は帰ってくるわ。あなたを守って、あなたらしく自由でいさせてくれると仰ってるシュトルク様がいいと思うのよね。」

 黙って聞いていたシャーロットは、いろいろ言いたいことが山のようにあった。

「あのですね、お父さま、お母さま、おじいさまも、エリックもよく聞いてくださいね。ミカエル王太子殿下との婚約は破棄になるかもしれませんが、私はまたあの方を選ぶかもしれないのですよ? 私は婚約破棄されたってまた選べばいいと思っているんですよ?」

 シャーロットがそう言っても、家族はそれぞれに勝手なことを考えて微笑んで答えた。

「ああ、わかっているよ、シャーロット。陛下に逆らえないことも、臣下としての使命は重要だということを理解しているともわかっているよ?」

「ええ、大丈夫よ、シャーロット。あなたが自由な家風を骨身に染みて育っているということも理解しているわ。堅苦しい生活に耐えられないだろうってこともね。」

「シャーロットは面白いのう、何を言い出すかと思えば…。あんな腐れ縁で乾いた熱量しか感じんちびっこ王子なんぞより、宰相の家の方が家族の暖かみも真面目に生きる誠実さも感じられて、毎日が充実しているに決まっておるだろう。」

「シャーロット、いざとなれば俺が養ってやるから誰も選ばなくていいからな。クララもお姉さまのことが好きだから、どうとでもなるだろうから安心しろ。」

「さすがにクララ嬢に面倒見させるのは申し訳ないから、どこかに嫁ぐわ、エリック…。」

 シャーロットが反射的に突っ込みを入れると、母はにやりと笑った。

「では、今日の舞踏会は欠席せずにきちんと出るのですよ、シャーロット。きちんと自分で嫁ぎ先を決めていらっしゃい。」

 なんか担がれた気がする~、とシャーロットは思いながらぺこりと頭を下げて執務室を出た。まんまと家族に乗せられて、婚約破棄の道を選択させられたことに、シャーロットは気が付いてもいなかった。

ありがとうございました

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