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<149>悪役令嬢は決断を迫られているようです

「私が国で誰かを見つけて結婚すれば、お兄さまはシャーロット様を選ぶことが出来る…。誰にもそれを邪魔させなくて済む…。違いますか?」

 クラウディアはシャーロットを見て、小さく微笑んだ。

「ガブリエルと結婚するのは、レインお兄さまも、サニーお兄さまもかわいそうです。私はガブリエルと短い期間でしたが、いい関係でした。彼女を、約束だからと私達の国に連れて帰るのは、気の毒です。」

 髪に付けた髪飾りを撫でて、クラウディアは微笑んだ。

「シャーロット様が来てくださるのなら、私も後ろめたい気持ちがなく、納得して結婚できます。」

 本当は、もともと好きな人がいたんだ…、シャーロットはクラウディアの胸の内を想った。

「それは…、あの、中庭で、この前抱き合っていた方と、ですか?」

「ま、見られていたのですね! 誰にも見られていないと思っていましたのに!」

「ディア…、もしかして、あいつはあの後も来ていたのか?」

「ええ、私じゃないとダメだって言ってくれたんです。でも、私はお父さまやお兄さまに、この国で結婚してほしいと言われたでしょう?」

「ああ、そうだったな。」

 捨て駒にする気満々だったんじゃん。シャーロットはサニーを睨んだ。

「私は好きな人と結婚できないのなら、どこへ行こうと誰と結婚することになろうとどうでもよかったので、この国でもいいと思っていましたが、今は…、出来るのなら、国に帰りたいのです。」

「そうか、」

 サニーがシャーロットの頭を撫でながら言った。

「お兄さまが好きな人と結婚できるのなら、私だって少しだけ、そう望んでみたい。ダメですか?」

「シャーロットが来てくれないのなら、私は口添えはしない。」

「ええ、その時は覚悟が出来ています。」

 え? 私次第なの? シャーロットは目をぱちくりした。

「あのね、そんな重要なことを、私の意見抜きで決めるのはどうかと思うのだけど?」

 サニーの腕を押して離れると、シャーロットは髪を直して、足元に落ちているキャンドルの袋を拾った。

「シャーロットは私達のことを知らなくても、私を選んでくれるでしょう?」

 ふるふると首を振って、シャーロットは無理無理無理と思った。

「また、明日、改めて話をしよう。舞踏会で、私はシャーロットを待っています。」

 サニーはシャーロットにそっと口付けすると、優しく微笑んだ。

「クラウディア、行こう。」

「ええ、シャーロット様、また明日。」

 サニーとクラウディアは晴れ晴れとした表情で、中庭から去って行ってしまった。

 シャーロットは呆気にとられながらも手を振って、二人を見送った。大事な人生を決めるような決断を、私に絡めて決めないで欲しいわ、と思った。


 部屋に戻ると、ミチルなミカエルが待っていた。ミチルの女子学生の制服を着て、椅子に座っていた。

「お帰り、シャーロット。」

「プロム、行かなかったの?」

「ああ、君の方が気になるから。」

 ミカエルはシャーロットの着ているカクテルドレスを見て、「公爵夫人はとことんいけずだな」と言った。

 いけずって何? とシャーロットは思ったけれど黙っておいた。たぶん母の性格の悪さを指摘するような言葉なのだろうと思った。

 これが婚礼衣装を手直しして作ったドレスと知っていて着ている私は、きっともっといけずだわ、とシャーロットは思った。

 ブルーノが踏ん切りをつけたように、私も踏ん切りをつけよう。このカクテルドレスは家に持って帰ったら捨ててしまおう。シャーロットは思った。もう、このドレスが必要な国には嫁いでいかないのだから。


 明るい若草色のワンピースに着替えたシャーロットは、ミカエルの片付けを手伝った。もともとミカエルは、ミチルの私服を着終えたらすぐにミカエルの部屋に持ち帰っていた。くだらない雑貨やよくわからない小物が多くこの部屋に持ち込まれていたんだなあと、すっかりすっきりした部屋を見ながらシャーロットは思った。シャーロットだけの私物の部屋は、とても品のいい色合いで、母の好きそうな『お嬢様の部屋』に様変わりしていた。

「この部屋って、こんなに女の子の部屋だったんだね。」

 シャーロットがしみじみ呟くと、ミカエルが口を尖らせた。

「どうせ僕はゴチャゴチャしたものが大好きだよーだっ、」

「どうせとかいわないの、ミカエルちゃん、」

「もー、シャーロットまでお子様扱いする!」

 ぶーたれた顔が可愛いからだよなんて言えないなーと、シャーロットは思った。

 二人で一緒に、ミカエルの部屋に最後の荷物を持って行った。明日の夜の舞踏会と、週末にやってくるシュトルクとの公務が待っていた。明日にはもう家に帰ってしまう。今宵はミチルと一緒に過ごせる最後の夜だった。ソファアの足元に荷物を置いて、ミカエルはシャーロットの手を取った。

「ねえ、シャーロット。」

「なあに?」

「今晩は一緒にこの部屋にいて?」

 シャーロットはびっくりしすぎて飛び上がりそうになった。

 目をぱちくりしながらミカエルの顔を見つめた。

「どうして?」

 何を急に言い出すんだろうと思った。今晩、ここに一緒にいるって、どういうことなのかわかっているんだろうか。

「僕、どっちも10位以内になったよ?」

 ミカエルは肩を竦めて、上目遣いに言った。可愛い…、キュンキュンして、思わず頷きそうになったシャーロットは、動きを止めた。

「特別な関係になるって言う、あれのこと?」

 て、貞操の危機じゃないの?

「そう。」

「何もしない?」

 絶対何かするよね?

「何もしない。一緒のベットで眠るだけでいいから、泊って?」

 シャーロットは困ってしまう。その一緒のベッドに寝るのが問題なんだって!

「今日じゃないとダメ?」

「今日がいい。」

 ミカエルは、シャーロットの手を握った。

「君が、あんな格好をしていたから。」

「あんな格好?」

「ブルーノの国の、婚礼衣装なんでしょう?」

 沈黙するシャーロットに、手を握ったままミカエルは微笑んだ。

「結婚するまで何もしないけど、この部屋で寝泊まりするくらいは付き合って欲しいな。」

「そんな…! この部屋に泊まったってだけで、勘違いする人だっているでしょう?」

 シャーロットはそんなことで公爵家の娘という品格を落としたくはなかった。

「良いんだ。それが目的だから。」

 シャーロットは静かに微笑んだ。実質的に、私を自分のものだと宣言してくれるのね? 私の名誉よりも、私の未来を選んだのね?

 嬉しいけれど、あんまり嬉しくないって複雑だわ。シャーロットは俯いて、手をゆっくりと離した。

「…着替える服、持って来てないもの。」

 シャーロットはそれでも、断る言い訳を考え始めた。

「僕の、ミチルのがあるから大丈夫だよ。」

 シャーロットはミカエルにナイトウェアを渡される。

「お風呂だって入ってないわ。」

「一緒に入ろ? 下着は僕のを貸すよ。」

 そ、それはぜーったい借りないから!

「あのね、いったん部屋に戻ってきてもいいかな?」

 冷静になったシャーロットは提案した。いかんいかん。流されてはいかんのだ、私。ミカエルが必死になればなるほど、シャーロットの頭は冴えてくる。

「きっと戻ってきてね?」

 ぎこちなく頷くと、シャーロットは足早に部屋を出た。恥ずかしすぎて長居をしたくはなかった。


 シャーロットがミカエルの王族の部屋を出てすぐに、ラファエルとガブリエルがちょうどやって来た。

「シャーロット、部屋に帰るの?」

 ラファエルは明るく尋ねた。ガブリエルがくすくす笑っている。

「シャーロットはまたシュトルク様とお会いになりますの?」

 ガブリエルはいつもと変わらない。レインに会いに行かなくてもいいのだろうか。あれからサニーも何も言ってこない。シャーロットは誰からもその先を聞いていないなと思った。

「ええ、お城で明日、舞踏会があるでしょう?」

 日曜の昼間にはシュトルクと街探検も待っている。

 ラファエルは頷いていても、ガブリエルは黙ってしまった。

「明日はいろんな国からお客様がいらっしゃるんですってね?」

 シャーロットが確かめるように尋ねると、ラファエルが嬉しそうに答えた。

「明日は特別なの。今日のプロムパーティにはこれなかったシュタイン様も来てくださるの。」

 やっぱりそうなんだ。特別な舞踏会なんだわ。だからお母さまは勝手に参加するって決めちゃったんだわ。シャーロットは確信した。北方の王子様は警護の関係でここへは来られなかったんだろうな~。

「それは素敵ですね。」

 シャーロットは微笑んだ。

「じゃあ、あとで、お菓子持ってミカエルの部屋に行くから。」

 ラファエルが悪戯っ子の笑みを浮かべてシャーロットを見つめた。

「は? はい?」

「ミカエルの考えてる事なんてお見通しなんだから。じゃあね?」

 ラファエルとガブリエルはにやにやと笑って手を振っていってしまった。ミカエルが何を考えているというのだろう。


 シャーロットは自分の部屋に戻ると、冷静に状況を判断して、結局ミカエルの部屋にはいかずに自分の部屋で眠ることにした。

 ミカエルとの約束はなかったことにして忘れ、シャワーを浴びてさっぱりするとパジャマに着替えてベッドで眠った。ミチルでこっちの部屋に来て欲しかったな、とシャーロットは思った。ミチルとなら、一緒のベッドに寝ていても平気なのにな。同じミカエルなのにそう感じてしまうのは、絶対にこの部屋では安全だと言う変な安心感があるからかもしれない。

 一人で眠る夜がこの先ずっと続くんだわ、とシャーロットは思った。

 慣れた頃に1年生が入学して来て、その人と同じ部屋に眠るのだろう。リルルはこの国の言葉を覚えていってくれるのだろうか、私も彼女の国の言葉を学ぶ努力がいるのね、とシャーロットは思った。サニーの言ったように、確かに1年先に入学してきているから面倒を見てあげられる余裕がある。上級貴族の子供だから、親がそういう育て方をしてくれて来てくれているおかげで異国の文化に対する偏見も少ない。ましてやリルルは直接見て話したこともあった。

 私でも役に立てるかしら。

 シャーロットは考えているうちに眠ってしまった。

 夢の中でシャーロットはミカエルと同じベッドに眠っていた。大きなベッドで寝ているはずなのに、隅っこの方へ押しやられて、壁に体がぶつかって痛いなと思う夢だった。

 変な夢を見ているな~、私。夢の中のシャーロットはそう思いながら眠っていた。

 は?

 夢の中で眠るの?

 シャーロットはパチッと目が覚めた。一人で眠っていたはずなのに、暖かい塊を見ると、隣にはミカエルが眠っていた。

「は? どうしたの? ミカエル?」

 今日は家に帰らなくてはいけなかった。もしかして寝過ぎた?

「今、何時?」

 目覚まし時計を見ると、シャーロットはミカエルを起こした。早起きするつもりだったのに、もうじき8時になろうとしていた。

「おはよう、ミカエル。ねえ、ガブリエルとラファエルは?」

「ん…? おはようシャーロット。あの二人なら昨日のうちに帰ったよ? いつまで待ってもシャーロットがこなかったからさっさとお開きになって…、こっちにいるんだろうなって思ったから、僕もこっちに来たんだ。君の寝顔を見ているうちに僕も寝ちゃった…。」

「ねえ、私、家に帰らなくっちゃいけないの。」

「ああ、一緒にご飯食べてからにしよ?」

 ミカエルはシャーロットに微笑んで、大きく伸びをしてからベッドから起きた。

 シャーロットは着替えながら、耳の後ろに赤い痣があるのを見つけた。鏡で見ると、右耳の後ろにしっかりと赤い跡がある…。

「な、何これ?」

 どこかで見たことがある。サニーに付けられたキスマークと同じだった。

「ああ、それね。僕のしるし。」

 目をぱちくりしてシャーロットはミカエルを見つめた。

「しるし?」

「今日、シュトルクにも会うんでしょ?」

「ええ、ミカエルも出るんでしょう? 舞踏会があるわよね?」

 シャーロットは戸惑いながら答える。

「サニーに同じようなところに付けられたこと、あるよね、シャーロット。」

 え?

 ミカエルに見せたこと、無かったよね?

 シャーロットが戸惑っていると、ミカエルはにっこり笑った。

「もしかして、気が付いてたの?」

「もちろん。一緒に暮らしてれば、気が付くよ。君は一度寝たら目を覚まさない人だってことも、知ってるからね。」

「え…?」

 今の、どういう意味? シャーロットはミカエルの顔を見つめた。

「サニーの悪戯って、怪我の手当てをしてくれる前の出来事だよね?」

 シャーロットが念を押すように尋ねると、ミカエルはふふっと笑った。

「僕達、ずっと一緒にいようね、シャーロット。」

 気にする風でもなく、ミカエルは可愛く首を傾げて微笑んだ。

 か、可愛すぎる…!

 ミカエルの顔にキュンキュンしてしまったシャーロットは、また自分が流されて誤魔化されているのだとちっとも気が付いていなかった。


 朝食を一緒に学食まで食べに行って帰ってくると、まずは帰り支度を終えた。部屋の中には2年生に持ち越す予定の学用品くらいしか置いていない。ほとんど昨日までにハウスキーパーが持って帰ってくれていた。最後の荷物をトランクに詰めて、シャーロットは部屋を出てカギをかけた。

 その後、最後に話をすると決めていた。シャーロットは、ミチルなミカエルとミカエルの王族用の部屋にトランクを持って一緒に向かった。

 淡い水色のレースだらけのカーディガンを羽織った白いワンピース姿のシャーロットは、優雅にソファアに座った。水色のブラウスに灰色のズボンを履いて肩に青いセーターをかけたミカエルも、トランクを部屋の出口付近に並べると、気品のある表情でソファアに座った。

「先に、忘れないうちに鍵返すね。春休みの間に失くしても困るし。」

 シャーロットが借りていた鍵をミカエルに渡すと、「あげたんだから失くしてもまたあげるのにな、」とポケットにしまいながらミカエルは笑った。

 一応王族の部屋だし用心した方がいいと思うわ、とシャーロットは思ったけれど黙っておいた。自分は公爵家の娘でも鍵をかけていなくていろいろあったことを思い出す。

 ミカエルは足を組むと、シャーロットを見つめた。

「今日の夜、開かれる舞踏会が何があるのかは聞いてる?」

「何も? 母が勝手に出席を決めたってことくらいしか知らないわ。」

 ミカエルは苦笑している。

「相変わらず、君のお母さまは安定したいけずっぷり…。」

 いけずはやっぱりいい言葉じゃないのね、とシャーロットは思った。意地悪とかそういう感じなのかな?

「シャーロット、驚かないで聞いてね。」

 こくんとシャーロットは頷いた。

「僕達が聞いている予定では、シュトルクがリンデ姫を連れてくる。」

 リンデ姫の顔を思い浮かべ、シャーロットはああ、あの子ね、と思った。ミカエルに2年待ってって言った子ね?

「サニーが父王を連れてくる。」

「え? そんな場合じゃないんじゃないの?」

「公爵家も、ある程度知っているんだろう? シャーロットはどこまで聞いてるの?」

「内戦がおこって、レイン王子が…、」

 それ以上シャーロットは言えなかった。

「そう、レイン王子が危篤状態なんだ。ガブリエルも知ってる。もう会えないだろうってもわかってる。」

 ミカエルは寂しそうに笑った。

「からくり屋敷でサニーのイベントを起こしちゃったから何かはあるんだろうなとは思ったけど、こういう何かとは思わなかった。シャーロット、たぶんサニーは君かガブリエルかを選びにやってくる。」

「私は、ミカエルと婚約中なのよ? そんなことできないでしょう?」

 ミカエルは静かに笑った。

「たぶん、明日の舞踏会で、お父さまは婚約破棄を宣言するよ。その場で、誰かを決めてしまうように言うと思う。」

「どうして? 私は嫌よ。ミカエルが好きだもの。」

「僕だって君が好きだよ。僕は君と一緒にいたい。でも、どうしようもないんだ。」

 シャーロットの手を握って、ミカエルは言った。

「君が昨日一緒にいてくれていたら、既成事実を作れていたら、無理にでも今日の夜に起こることは回避できたと思う。でも、君は選ばなかった。僕も無理強いはしたくはないから、それでいいと思った。」

「そんな…。」

 そうなると知っていても、そんな事は出来なかったとシャーロットは思った。それは、やってはいけない手段な気がした。

「私がサニーを選ばなかったら、ガブリエルはどうなるの?」

「どうにもならない。僕の手元に傷が癒えるまでいてもらうつもり。隣国には自国の不始末を自分達で片付けてもらってから関係を考え直す。それまでは白紙。」

「じゃあ、シュトルクは?」

「もともと縁のなかった国だから、別にこの先なくても困らないと思う。だいたい大国だからって図々しいと思うんだよね。他国の婚約事情にまで口を挟んでくるなんて、内政干渉だよ。協定違反も甚だしいと僕は思うよ?」

 ミカエルは口を尖らせた。調印した内容の中に、内政の不干渉って入ってたっけ?とシャーロットは思った。まあ、入ってても介入してくるのが大国なんだろうなとは思うけど…。

「もう後は方法が残ってないの?」

「簡単だよ。僕をまた選んでくれればいい。」

「え、婚約破棄を宣言してすぐにまた同じ人を選ぶ事は出来るの?」

「普通はしないけど、そこまでしても僕がいいって君が決めるんなら、誰も何も言わないんじゃないかな。」

 ミカエルはシャーロットに微笑みかけた。

「一応今回の婚約破棄を宣言することは関係者だけで秘密裏に行われることだから、公にはならないし、婚約破棄をしてもその日のうちに再婚約してしまえば、時の流れの中では些細な誤差で終わってしまうようなことだからね。」

「ねえ、シュトルクがリンデ姫を連れてくるって言ったわね?」

「ああ、僕に正式に婚約を申し込みに来るんだ。」

「じゃあ、ミカエルがそっちを選んだら、私がいくらミカエルを選んでもダメだよね?」

「大丈夫。僕はリンデ姫を選ぶ気はないから。」

「どうして?」

「隣国のように内戦になった時に、シュトルクの国に付け入る隙を与えたくはないから。」

「それでも、結婚する可能性はないの?」

「あるね。君が僕を選ばなかった時かな。」

 ミカエルはシャーロットを見つめた。

「出来る限り断り続けるつもりだよ。でもね、君以外と結婚しなくてはいけないなら、誰とだって結婚も躊躇わないし、国なんてどうだっていいよ。君がいるから、僕は僕でいられるんだもの。」

 シャーロットは世界が明るくなった気がした。そんなに私を必要としてくれているんだと思うと、胸がいっぱいになった。

「シャーロット、」

 ミカエルがシャーロットの頬に触れた。おでことおでこをくっつけて、ミカエルは悩ましそうにシャーロットの名を呼んだ。

「僕を選んで? 僕も君を選ぶから。あとは僕がどうにでもするよ、だから任せて?」

 ミカエルを上目遣いに見て、シャーロットは「そうする」と答えた。

 一度婚約破棄するのは嫌だけれど、もう一度選んでいいのなら、そうなっても仕方のないことと割り切っていけるわ。そう思った。

ありがとうございました

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