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<148>エリックルートとサニールートとを選ぶなら?

 屋上へ上がると、シャーロットは縁にある手摺に凭れ掛かりながら座って空を見上げた。

 青く遠く透き通っていて、温かな日差しで、制服のジャケットなんかいらないなと思えた。それでも着ているのは脱いだ後ジャケットをどうしたらいいのか判らなかったからだった。

 私はまだこういうところが貴族なんだわ、とシャーロットは思った。誰かに持ってもらうとか、片付けてくれる誰かがいるとか、そういう生活に慣れてしまっている。

 カフェオレを飲み、クイニーアマンを食べながらぼんやりと考えていると、屋上のドアが開いて、学生の集団が上がってきた。

「姫様!」

「何やってるんですか! こんなところで!」

 慌ただしいな…とシャーロットは思いながら、猫を被って微笑んだ。リュートやトミー、マリエッタ達5人の学生だった。彼らはパンの袋を抱えていて、シャーロットの周りに集まって座った。

「みんなこそ…、どうしてここにいるの?」

 隣に座ったリュートを見上げると、リュートはシャーロットの顔を見て微笑んだ。

「お別れ会に出る理由がないからですよ?」

 きょとんとするシャーロットに、マリエッタやマーガレットが柔らかく微笑みかける。

「騎士コースは基本的にそういう者はいませんからね。」

「調査団に派遣されていく者は確かにいますが、上の学年でしたから。」

 トミーやピーターもそう言って微笑んだ。それぞれ傍に婚約者を置いて、6人で輪になって座った。

「姫様は、よかったんですか? 誰かお知り合いが転校されるのでは?」

 ブルーノのことだろうなと思った。シャーロットはただ微笑んで、「大丈夫よ?」と言った。私は、ここなら誰もいないと思ったんだけどな。そう思っても、黙って心の中で呟くだけにしておいた。一人で部屋にいるのが一番孤独になれる。ここを選んだ時点で、誰かに会う可能性はあったのだ。

「この前、騎士団で大会が行われるって兄から聞きました。各地方からの騎士団の精鋭が集まって一番脚力のあるもの、一番体力のあるもの、一番格闘力のあるものを競う大会をするのだと兄も父も興奮して話をしていましたよ。」

 騎士団一家のトミーが分厚いバゲットのサンドイッチを頬張りながら話した。マリエッタ達は普通のサンドイッチを食べている。

「シャーロットが提案した大会を、本当に開催することになったんだよ。」

 リュートが言うと、マリエッタが目を見張った。

「姫様の御発案だったんですか! 父が面白いことが始まると言って大喜びしてました。地方大会は予選会、王都で本大会で行われます…。その大会すべてでうちの商品を扱わせて貰えるのだと大張り切りしてました。」

「マリエッタの商会は、公爵家のお墨付きをもらったからだろう? 良かったじゃないか。」

 貴族のお墨付きを貰うと融資が受けやすくなる。滅多に公爵家はお墨付きを与えなかった。御用達がせいぜいだった。父の決断にシャーロットは驚いた。

「遅くなりました。改めて、姫様のお父さまにお礼申し上げます。姫様、ありがとうございます。」

「いえいえ、父がそんなことを…。無理を言っていなければいいのだけれど。ご迷惑かけていないのなら良かったわ。」

「迷惑だなんて、そんな…! 」

 いつの間に父はそんなことをしてくれたのだろう。シャーロットは今度父に会ったらありがとうと言わないとな~と思った。父がポレールに出向いた際に馬車の中で聞いたマリエッタの名前を覚えていたとは、シャーロットも思ってもいなかった。

「俺の兄も、来週末の予選会に出るんですよ?」

 トミーは嬉しそうに言った。

「兄は王都にある王家直属の騎士団で1、2を争う俊足ですからね。」

「本大会はいつあるんだっけ?」

 ピーターが紙パックを飲み干しながら尋ねる。

「春休みならみんなで見に行けるんだけど、いつなの。」

 マーガレットも食べる手を止めて、尋ねている。

「春休みは春休みで騎士団の練習があるよね。結構大変だ。」

「土日なら練習自体も休みになるさ。」

「予選の話ばかり聞いたからなあ。4月には入団式もあるし、まあ、早くて4月中頃だろうな。」

 もしかして本大会の日時、まだ未定なんじゃないのかな。シャーロットはこっそり思った。会場押さえている最中なのかも。

「俺達は騎士団の団員兼学性になるのか~。」

「去年の今頃じゃあ考えられない充実した日々だな。」

「ははは、ほんとだ。」

 トミーとピーターが笑うと、マリエッタとマーガレットがシャーロットの手を握って言った。

「私達も充実しているんですのよ、姫様!」

 マリエッタが興奮したように言った。

「私もです。マリエッタと他のみんなの補佐みたいな役割ですが、毎日楽しくって!」

「な、何をやっているの?」

「学生のうちに、起業してみようって話になったんです。」

「は? はい?」

 トミーとピーターは知っているのか嬉しそうに食べながら話を聞いている。

「姫様とお昼ご飯をご一緒させていただいた後に、たまたま授業で、授業の一環として商売をはじめてみようと言う話になって…、」

 マリエッタとマーガレットは嬉しそうに顔を見合わせた。

「2年生では街での実習があるのです。校外実習で街でお店を借りて、1年かけて実際の商売を行うんです。今までは男子生徒が計画や販売目標を組んで女子生徒がその手足となって働くって言う取り組み方がだったみたいなんですけど、」

「姫様からお話を聞いていたところで…、みんな頭の中でいろいろ計画をしていたことがあって、どんどん発言したんです。いつもなら躊躇ってて小さな声でしか話さないような子も、手をあげて、自分の考えを伝えたんです。」

「熱意が伝わったみたいで、女子が、店主になって、女子が販売目標を持って、女子が仕入れや在庫管理を行うチームが認めてもらえたんです。」

 嬉しそうなマリエッタが言うと、マーガレットが頷いた。

「学校が面倒を見てくれるのは1年だけです。でも、私達はその後も続けていけるような計画を立てています。そのまま起業しちゃうつもりでいるんです。」

 学生で起業しちゃうの? シャーロットは何度も目をぱちくりした。

「私、今までそんなことを考えたことも、そういう生き方があることも考えたことがありませんでした。トミー様がお仕事に行かれている間に、友達とお仕事が出来るなんて、そんな未来があってもいいなんて、思ってもいませんでした。」

「私もです。いろんなことが出来ないんだと諦めていて、男に生まれていたらと何度も思っていましたけど…、ピーターと結婚して、自分の仕事も持って、友達の仕事も手伝えるなんて、私の価値って、女だからこんなに充実してるんだなあって、初めて思いました。」

「おいおい、俺はマーガレットが男だったら困るぞ。マーガレットが女だから、一緒に生きていきたいんだ。」

 ピーターが笑った。

「ひたすら俺は姫様に感謝ですね。マリエッタと結婚する未来に、マリエッタをうちに閉じ込めておくしかないのかと悩んだりもしましたが、こうやって目標を見つけてくれてほっとしてます。いつまでも自分の好きな事をやってるマリエッタと歩んでいけるんですから。」

「トミー…。」

 マリエッタが潤んだ瞳でトミーを見ていた。

「子供が出来ても、年をとっても、マリエッタはマリエッタらしくして欲しいんだ。」

「ちょっと、トミー、恥ずかしいからこんなところでそんなこと言わないでよね。」

 マーガレットが照れながら言った。

 リュートが、シャーロットの手を撫でて言った。

「シャーロットが思いついたことを、こうやってみんなで叶えていける未来って、楽しいと思わないか?」

 リュートを見上げると、優しくシャーロットを見つめて微笑んでいた。

「私はシャーロットが思いつくことを、傍で考えて、実行できるかどうか整えて、世界を変えていきたい。一緒にいて欲しいんだ。」

「姫様が私達の近くにいてくださったら、私達はもっといろんなことに挑戦していけると思うんです。私達だけでは考えられないようなことを、いつも姫様は考えておられるでしょう?」

 うんうんとトミーとピーターが頷いた。

「それは言える。姫様とあの日屋上で演武の話をしていなかったら、今の俺達はいないもんな。」

「婚約なんて無理だった。」

「た、たまたまだと思います。」

 シャーロットは食べ終えたクイニーアマンの袋を紙パックと一緒に片付けると、すっかり照れてしまって逃げ出すように立ち上がった。猫を被っても誤魔化せないと思った。

「みんなとお昼がご一緒出来て嬉しかったです。ありがとう。私は、支度があるので行きますね。」

 にっこりと微笑んで、シャーロットはカバンとゴミを持ってお辞儀した。

「仲良くして下さって、ありがとう。1年生最後の日が皆さんとご一緒出来て嬉しかったです。」

 優雅に微笑んだシャーロットの美しい笑顔に、追いかけようとしたマリエッタ達は頬を赤らめて頷いて見送った。

 シャーロットは屋上からの階段を下りながら思った。あの人達は私だから私を必要としてくれている。それって凄い事だわ。

 自然に湧き上がってくる喜びに笑みを浮かべて歩くシャーロットに、通り過ぎる学生達は見惚れて、何人かがぶつかってこけていた。


 金曜日は朝から寮内が騒がしかった。卒業生する者達が挨拶して回ったり、廊下で抱き合ったりして盛り上がっていた。ラファエルも卒業してしまう。シャーロットは、お城で会えるけど、一応ね、と思い挨拶に行った。ラファエルの部屋にはいろんな学生がいて部屋に入り切らず、沢山の学生が列を成していた。

 廊下から中を見ると、ラファエルが泣いている女子学生の肩を抱いている様子が見えた。シャーロットと目を合わせると、ラファエルは小さく頷いた。シャーロットも頷き返して、そのまま自分の部屋に帰った。また後で、ということなのだろうなと思った。会おうと思えば会えるけれど、地方から来ている貴族の娘だとお城までの道のりは遠かった。こういう日だからね、とシャーロットは肩を竦めた。


 卒業式の間、シャーロットは寮の自分の部屋にいた。

 ミチルなミカエルは自分の荷物を片付けている。15日までに部屋の中身を持ち出すようにと理事長に言われたらしかった。

「ねえ、やっぱりこのままじゃダメなのかな。」

 シャーロットはミカエルの隣で、自分の学用品を箱に詰めながら尋ねてみた。

「ミチルをもっと王族か何かの親戚にしておけばよかったね。お母さまのハジェット侯爵家の隣国の隣国の親戚っていう身分にしたから、侯爵家の娘扱いなんだよね。シャーロットは公爵家の娘だから、本物の王女が出てくると、ミチルは身分が負けちゃうんだよね。」

 ミカエルはシャーロットを見ずに片付けをしながら話をする。

「でもまあ、隣国の隣国にミチルはこの際返しちゃうから、4月からは王子様のミカエルと仲良くしてよ。」

 シャーロットは自分の机の上に、荷物を積んでまとめた。20日以降、新入生として入ってくる学生の荷物が持ち込まれていくらしかった。その際に、紛らわしいものを床に置いておくのは良くないだろうと思った。

 ミカエルの持ち物が無くなっていく寂しさに、シャーロットは悲しみを覚えた。

「行かないで、」

 そう呟いてみても、どうしようもないこともわかっていた。

「ねえ、シャーロット、」

 ミチルなミカエルは悪戯っ子な面持ちで尋ねた。

「僕と結婚する? 学生結婚であの部屋に一緒に住めば、ずっと一緒だよ?」

「嫌。そういうのは無理。」

 誰もそんな生活をしていない学生寮では、悪目立ちしすぎてしまう。

「じゃあ、仕方ないよね?」

 くすくす笑ってミカエルは箱に蓋をした。あとはこの箱を、ハウスキーパーに頼んでお城に持って帰ってもらうだけだった。

「4月から、ゲームの世界だと後半になっちゃうんでしょ?」

 シャーロットが尋ねると、ミカエルは捨てる予定の資料を縛りながら答えた。

「ああ、そうだね。」

「私、どうしたらいい?」

「今まで通りでいいんじゃないかな?」

「傍にミチルがいないのに?」

「傍にミカエルで僕がいるよ?」

「そっか。」

 当たり前のことかも知れないけど、重要なことはきちんと声に出して教えてほしい。

「そうだよ?」

 滲んだ涙を拭って、シャーロットは自分の頬を叩いた。

「学食に行こうか? お昼ご飯を食べたら、支度をしないとね。ブルーノと約束してるんでしょう?」

 小さく頷いて、シャーロットはミカエルに小指を差し出した。

「なあに?」

「あれやって、指きり。」

 あの日以来、シャーロットはミカエルと指きりをしていなかった。

 ミカエルは小指を絡ませると、いつもの様に言った。「ゆーびきーりげーんまーん、…」

 本当にお嫁さんにしてくれるのよね? シャーロットはミカエルの顔を見て、小さく呟いた。


 シャーロットがプロムパーティに参加する学生の波に混じって、金糸の刺繍が入った白いカクテルドレス姿でティーキャンドルを沢山入れた袋を抱えて屋上に行くと、すでにエリックとクララが待っていた。エリックもタキシード姿で、クララも可愛らしい薄桃色のカクテルドレスを着ていた。

 ブルーノは畏まった表情でタキシードを着ていた。薄化粧をして美しく着飾ったシャーロットの白いカクテルドレス姿を見ると、切なそうに顔を歪めた。

 絶対このドレス、あのエンパイアラインの婚礼衣装を作り直したんだわ、とシャーロットはブルーノの顔を見ながら思った。母の神経を疑ってしまうと同時に、着ている自分の厚かましさも自嘲する。

 シャーロットは公務だと割り切っていた。素の自分でブルーノと向き合うには、まだ心がついてこなかった。猫をしっかり被って微笑んでいた。

 持ってきたティーキャンドルを、4人で手分けして円を描くように置いた。「足元に明かりがあった方が踊りやすいでしょ、」言い訳するように呟いたシャーロットに、ブルーノは、「そうだね」と微笑んだ。夕闇の中、ブルーノと踊る勇気などシャーロットにはなかった。

 夕日が暮れていく頃合いを見て、キャンドルに火をつけた。階下のパーティは始まっているようで、既にワルツを奏でるメロディが漏れ聞こえていた。

「はじめようか、」

 エリックが言った。

 シャーロットとブルーノは向き合って、お互いの顔を見てお辞儀をした。

 二人は手を取り合って踊り始めた。

「一曲だけよ?」

 シャーロットが囁いた。

「ああ、一曲だけだよ?」

 ブルーノは優しく微笑んだ。この人は、割り切れてもう次の世界に向かって頭を切り替えている…。シャーロットはぐっと顎を引いた。アンバーウッディーな香りは、ブルーノの香り。きっともう、同じ香りを嗅ぐ日は来ない。

 見つめ合ったまま踊って、一曲が終わった。美しい人の碧い瞳が煌めいていた。

 ゆっくりと手を離したシャーロットを、ブルーノは名残惜しそうに手放した。

「さようなら。」

「インセリムレック。」

 二人はお辞儀して、微笑みあった。

 エリックとクララを見ると、クララがエリックの胸に顔を埋めて泣いていた。エリックはクララの肩を抱き締めていた。

「どうしたの?」

 シャーロットが小声で囁くと、エリックは黙って首を振った。

 ブルーノは無言で、ティーキャンドルに蓋をして消していった。消えたのを確認しながら袋へ回収していく。シャーロットも黙って手伝った。

 全部回収し終えたシャーロットとブルーノが並んで夜空を見上げると、大きな月が出ていた。

「ねえ、シャーロット。」

「なあに、ブルーノ。」

「また、一緒に星が見たいな。」

 きっと、もう一緒に夜空を見上げることはないだろう。シャーロットは無理だろうなと思った。ブルーノも、判っていてそう言っているのだろうと思った。

「そうね。」

 二人は嘘をついていた。叶わない希望を、口にしていると判っていた。

 きっともう次会うときには見知らぬ誰かなんだわ。シャーロットはそう思った。

 エリックとクララをその場に残して、二人はそれぞれの部屋へ帰っていった。


 寮への帰り道は、プロムを楽しみに会場へ向かう学生達の流れと逆方向の動きで、シャーロットは顔をじろじろと見られるのが嫌で、人を避けるようにして歩いた。薄暗がりの中を歩くと、中庭に出てしまった。

 こぶしの花の下に、誰かが立っていた。月明かりしかない中庭で夜空を見上げているその人は、帰り支度なのか、スーツ姿だった。プロムに出るような華やかさはなく、寂しそうに佇んでいた。

 シャーロットは見つからないよう俯いて黙って通り過ぎようとして、腕をぎゅっと掴まれた。

「!」

 驚いて振り返ると、その人はサニーだった。

「シャーロット、どこかからの帰りですか?」

「ええ…。サニーは?」

「私は一旦、王都の別荘へ帰るのです。今はクラウディアを待っているのです。」

「こんなところで…?」

「今日はプロムでみんな浮かれています。どこにいても騒がしいでしょう。今はそんな楽しい気分ではないのです。」

 サニーの兄の状態を想えば、シャーロットも楽しい気分にはとてもなれなかった。

「シャーロットに会えて…、月に願ってみて正解でした。」

 ふっと微笑むと、サニーはシャーロットの頬を撫でて、抱き寄せた。ティーキャンドルの袋を、シャーロットは足元に落としてしまった。

「あなたが欲しい。ずっと傍にいて欲しい。暖かいあなたが、傍にいて欲しい。」

 シャーロットを抱き締めて、サニーはシャーロットの首に頬を寄せた。ふわっと香るムスクの香り、サニーの息遣い。この人は今、孤独なんだ…。シャーロットはサニーの背中に自然に腕を回していた。

「生まれた国がどこだろうと、姿形が私と違っていようと、あなたの心は私と同じだ。あなたは私の唯一の薔薇だ。」

 唇を首筋に這わせて、サニーが狂おしそうにシャーロットを掻き抱いた。

「ねえ、落ち着いて、サニー。私はここにいるから。もうしばらくは、ここにいるから。」

「あなたはディアが来たら、また私の腕の中から消えてしまうのでしょう?」

 まあね、シャーロットは思ったけれど言葉にすることが出来なかった。

「ずっと一緒にいて欲しい。私の傍にいて欲しい。」

 何も言えないままシャーロットは抱きしめられていると、誰かの視線に気が付いた。サニーの腕をとんとんと叩くと、腕を緩めてくれた。

「お兄さま、」

「ディア…!」

「遅くなってしまってすみません、そちらは…シャーロット様ですか?」

「クラウディア様、すみません。お帰りを邪魔してしまって。」

「大丈夫です。私は、大丈夫。」

 クラウディアは頬を染めて、シャーロットとサニーから視線を外した。

「シャーロット様がお兄さまのところに来てくださるのなら…、私は、この国ではなく、自分の国で結婚相手を探します。」

「ディア…!」

「私達の結婚相手を自分の娘や息子達をと、私の国の貴族達は考えているんでしょう? お兄さま、」

 クラウディアはにこにこと笑顔を作った。月明かりを浴びて笑う顔は、なんだかとても怖く感じた。

「私次第、ですわよね? 私が国に帰れば、お兄さまは好きな人を選ぶことが出来る。違いますか?」

 ぐっとサニーは言葉を詰まらせた。

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