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<137>リュートルートもサニールートも続いていくようです

 お茶会を終えて学校からの帰り道、クララ達はエリックと楽しそうに話をしながら先に歩いていた。女子7人に囲まれて歩いているエリックは、どう見ても女性の扱いになれた様子にしか見えなかった。以前見た女子生徒に囲まれたヴァレントの女性の扱いに慣れた様子とはまた違っていて、シャーロットは身内なのに遠い存在に思えた。

 吐く息が白い。また今夜は雪が降るんじゃないかな。シャーロットは暮れていく空を見上げて思った。

 シャーロットはブルーノと並んで、エリック達とは少し離れて歩いていた。ブルーノはシャーロットの手を指を絡めて握っていた。何度手を振りほどいても手を握られてしまうので、シャーロットは仕方なくそのままにしていた。

 中庭の方をちらりと見ると、誰かが木陰で抱き合っているのが見えた。一人は黒い長い髪の…、クラウディア? まさかねとシャーロットは思った。一緒にいる男性はどこかで見たことがある。いつか街探検にクラウディアやサニー達と一緒に出掛けた時に、黒いトレンチコートを着て灰色のスーツを着ていた男性に見えた。

 気のせいよ、きっと、気のせいに違いないわ。シャーロットは自分に言い聞かせながら首を小さく振った。きっとクラウディア以外にも黒い髪の生徒はいると思うけど…、いなかったっけ?

「…シュトルク様は、何か言っていたかい?」

 ブルーノがぽつりと尋ねた。シャーロットは気を取り直してブルーノを見上げた。

 もうシュトルクと呼び捨てにはしないんだね、シャーロットは思った。義理のお兄さんになる人だもの、立場を弁えて発言していくように気持ちを切り替えたんだね。

「何も?」

 ブルーノが聞きたいようなことはきっと何も言ってないわ、首を振りながらシャーロットはそう思った。たとえ聞いていても、ブルーノには話さないだろうと思った。

「ブルーノは、あの後…、どうしたの? ちゃんとお昼ご飯は食べられた?」

 会場を出て行ってしまった後のブルーノの様子を誰も教えてはくれなかった。誰も、見ていないということなのだろうと思った。

「あの後? ああ、貴族用の控室で、しばらく一人でいたよ。その後、父さんと母さんが来たから話をして…、そのまま王都の別荘に帰った。そういや、何も食べなかったな。」

 だから会場に姿を見つけられなかったのね。

「こっちには昨日帰ってきたの?」

 シャーロットの手を握るブルーノの手は、暖かくて、優しかった。

「そうだね。昼前には戻って、エリックと一緒に昼食を取った。エリックはああ見えて優しいんだよ、シャーロットは知ってた?」

 知ってても、言葉にはしないわ。ブルーノのことが気になって早く帰ったなんて、本人を目の前にして言うことなんて出来ないもの。シャーロットは誤魔化すように笑って答えた。

「私には煩くて面倒な弟でしかないわ。そんな面があるならお目にかかりたいわ。」

 ブルーノはおかしそうにくすくすと笑った。

「今日も、お茶会、楽しかったじゃないか。料理の話ばかりで何のことやらよく判らない部分もあったけど、エリックがいたおかげで盛り上がって良かった。」

「あの子は料理に関心があるから。私も、こういうところで役立つ知識とは思わなかったわ。」

 学食でのアフタヌーンティーのパーティは紅茶党だらけで、紅茶の話でまず盛り上がった。シャーロットは知識として知っていても語る程の思い入れがなく、微笑んで聞いていたのだった。エリックもクララも紅茶党で、二人は紅茶の茶葉の好みこそ違えど、一緒にお茶を楽しむという点でとてもウマが合う様に見えた。商業のコースの女子生徒達はそんな二人の様子を見て自分達が本当に勘違いをしていたのだと気が付いたようで、シャーロットに何度も頭を下げていた。侯爵家の3人の令嬢達は嬉しそうにクララとエリックの会話に合いの手を入れていた。

 みんなクララのことが好きなんだわ、とシャーロットは思った。髪を切って単身乗り込んできたあの決断力を思い出せば、シャーロットもクララには頭が下がる思いだった。

「シャーロット、」

 ブルーノの手がきつくシャーロットの手を握りしめた。ブルーノを見上げると、真剣な眼差しで遠く彼方の空を見つめていた。

「なあに?」

「3月の卒業パーティがあるだろう?」

 3月13日がラファエル達の卒業式だった。もうひと月切っていた。

「ええ、プロムね? 卒業する3年生が出るパーティでしょう?」

「その日が、この学校にいる最後の日なんだ。」

「そう…、」

 本当に、いなくなってしまうのね。

「だから、僕と踊ってほしい。」

「私達は1年生よ?」

 卒業パーティは3年生が自分の婚約者をお披露目する日でもあった。3年生と婚約していない限り、会場に足を踏み入れる事は出来ないはずだった。

「知ってる。だから、会場の外でいい。二人で、踊りたいんだ。」

「ちょっと考えさせて…?」

 シャーロットは即答を避けた。ブルーノが何を考えているのか見当もつかないうちに、答えを出すのは早急な気がした。嫌な予感しかしなかった。

「ああ、構わない、迎えに行くから。」

 それ、ブルーノの中では確定だよね?

 シャーロットは困ってしまって苦笑いをした。

「まだ時間はあるもの、今決めないわよ?」

「ああ。」

 どう考えてみても、ブルーノは自分の中で答えを出しているようにしか見えなかった。

 寮の前に着くと、みんなで別れのあいさつを交わした。クララ達は嬉しそうに並んで手を振って、「またご一緒しましょうね、姫様」と寮の中へ帰っていった。

 みんな年上なのに、いつの間にか私のことは姫様と呼ぶと決まっちゃったのね、とシャーロットは思った。

「またね、エリック、ブルーノ、」

 シャーロットは、エリックにニヤニヤされながら手を振った。また弟は青い姫君という呼び名を思い出してるんだろうな~とシャーロットは思った。ブルーノを見ると、ブルーノは微笑んでいた。

 先に行ってしまうエリックや寮の前で別れたシャーロットの後ろ姿を見送って、ブルーノは名残惜しそうに瞳を伏せた。

「もう少しだけ、一緒にいたいんだ…。」

 暮れていく夕闇に、ブルーノの呟き声は切なく消えていった。


 今週はテスト前の課題の確認があるからとミカエルがミカエルでの登校を増やすと宣言していた通り、火曜日からミカエルとは別行動になった。

 母から珍しく朝早くに届け物があった。シャーロットはたまたま登校前に、部屋を出ようとして受け取った。手紙とチョコレートで、チョコレート専門店(ポレール)の新作らしかった。手紙には、シャーロットのお陰で二月は過去最高の収益があったこと、感謝の気持ちを込めて新作をシャーロットに捧げたいと支配人からチョコレートを預かったこと、母のスパでキャラメルヌガーのチョコレートを提供したら大変好評だったことが書いてあった。

 この手紙はこっちに置いておいても大丈夫ね、とシャーロットは思った。判断に迷った内容の手紙は公爵家に返すように母からは言われていた。ハウスキーパーに公爵家のシャーロットの部屋に届けてもらうのである。エリックは手紙のやり取りをそうやってよくしているらしかったけれど、手紙を滅多に書かないシャーロットは、一方的に父や母からたまーに貰う程度だった。

「いいことばかり書いてある手紙なんて珍しいわ。」

 最近聞く話は面倒事ばかりだもの。シャーロットは皮肉って笑った。

 チョコレートの箱は白い地に沢山のトランプの絵が描いてあった。青いリボンがかけられていて、小さなカードが挟んであった。カードには「Eat me」と書いてある。アリスを知らないシャーロットは、首を傾げながらリボンを解いて蓋を開けた。中には五粒のチョコレートが並んでいる。箱の裏側に説明があり、チョコレートはそれぞれコーヒー、ミルク、ビター、マイルド、スイートと味が違った。

 シャーロットは自分のアリスのコスプレ姿が支配人や職人を刺激したとは思ってもいなかった。テスト近いから食べて頑張ってねってことなのね、と解釈して、机の引き出しに入れた。


 シャーロットはガブリエルと二人で移動教室へと急いでいた。廊下を歩いていると、途中でサニーと合流した。サニーは貴公子な友人達に先に行ってもらって、シャーロット達と一緒に歩いていく。

「リュートが怪我が治ってしまったので、シャーロットと一緒に勉強できなくなって少し寂しいですね。」

 サニーは優雅に微笑みながら言った。鍛えているからか、速足で移動していても息が切れている様子がなかった。

「一緒に放課後勉強いたしましょうか?」

 ガブリエルが嬉しそうに提案する。

 え。放課後は自分一人で勉強したいかも?と、シャーロットは辞退しようとした。ミカエルがいないのだし、自分の部屋で自分のペースで勉強はしたかった。

 話し出そうとする前に、「もちろんシャーロットもですわよ?」とガブリエルに先制されてしまう。

 モヤモヤする気持ちのまま、放課後一緒に図書館で勉強する約束が出来てしまった。シャーロットは嬉しそうなサニーと楽しそうなガブリエルを前にすると何も言えなくなってしまって、こういうところ、流されちゃうんだよね…と黄昏た。


 お昼休みになると、きっちりトミーとマリエッタがシャーロットとリュートを教室に迎えに来た。シャーロットはまふまふキツネセットを5袋持ってリュートと教室を出た。

「持とうか?」

 そういいながらリュートは大きな手でシャーロットの抱えていた袋を持ってくれた。

「ありがとう、」と見上げると、リュートは微笑むと黙ってシャーロットの手を握った。

 手と繋ぐ口実にされちゃったわと思いながら、シャーロットは学食へとついていった。


 学食の奥の方の席にすでにリュートとチーム・フラッグスは婚約者達と席を確保して大勢集まっていて、シャーロットはランチプレートを手に合流した。騎士コースの人達もそうだけど、私の周りの男子って、みんなプレートを二つ並べて食べているのよね、とシャーロットは思った。プレートひとつで満足しているのって、ミカエルくらいじゃないのかしら。

 真ん中あたりにシャーロットが座り、隣はリュート、反対隣りはトミー、その隣にマリエッタで並んだ。

「みんな、今日も良く集まってくれた。チーム・フラッグスの定例食事会をはじめよう!」

「定例食事会?」

 小声でリュートに尋ねると、リュートが教えてくれた。

「婚約者が出来てからみんな集まることが少なくなってきていて、今日は久しぶりに全員で揃ったんだ。先週シャーロットとエリック達が食べていた近くに集まった時は、数にはいれてない。」

「そうなの?」

 数に入れたらダメなんだろうか? 線引きがよく判らないわね、とランチを食べながらシャーロットは思った。

「ああ、シャーロットがこの場にいることが重要だから。」

「そ、そうなんだ。」

「姫様が今日もお祝いを持って来てくださっている。拍手して仲間が増えたことを歓迎しよう。」

 トミーがそう言うと、照れているのを隠すためにシャーロットは猫を被って微笑みながら、新しく婚約者を得た者達にまふまふキツネセットの袋を渡して回った。

「おめでとう、」と微笑むと、誰もが嬉しそうに照れ笑いをしていた。

「では、みなさん、姫様に感謝の拍手を。」

 マリエッタが拍手すると、拍手の中シャーロットは自分の席に戻った。恥ずかしすぎる…、でも、嬉しい。懐中時計を出すと、シャーロットは手にして微笑んだ。

「みんなとお揃いです。私も仲間なんですよ?」

 嬉しそうな学生達の顔を見て、シャーロットはほっとした。

 食事を再開したシャーロットは他の学生達が和気あいあいと話す会話を聞きながら、微笑みを浮かべつつ黙々と食べていた。みんなよく食べる上に早い。よく話をしながらあんなに早く食べられるのね! と感心しつつ食べていた。

 話題は学年末テストの話になり、順位が上がったら、というまだ何も始まっていないのに浮かれた内容の話になった。

「やっぱり姫様と定例食事会でしょう、」

 誰かが言い出すと、うんうんと力強く頷く者が多くいた。

「俺達だけでも楽しいし、婚約者もいて幸せだけど、姫様がいるのはまた格別だもんな。」

「そうだよね、やっぱ違うんだ、」

 ジョンが言うと、エミリアとリリアンヌも頷いている。

「それまでは頑張って勉強しよう。四月になったら入団式がある!」

「チーム・フラッグスとして一団となって頑張ろう!」

 おー! とこぶしを突き上げ掛け声まで上がり、シャーロットはよく判らないまま周りの雰囲気に流されて、カトラリーを置くと「おー!」と言いながらこぶしを突き上げた。

「姫様まで!!」

「これは頑張るしかないぞ!」

 変な盛り上がりに、内心おろおろしながらシャーロットは小さく、もう一度「おー!」とこぶしを握った。

「カ、可愛すぎる…!」

「姫様がおちゃめすぎる…!」

 エミリアとリリアンヌは余りのシャーロットの可愛さに、二人で震えながら顔を真っ赤にして囁き合った。シャーロットに貰ったトリュフはそれぞれ自分の婚約者のカールやジョンと分けて食べた。味はもちろん美味しくて、二人で食べたのはとても嬉しかった。婚約者から花を貰い愛を囁かれたのも、嬉しい思い出になった一日だった。婚約者がいるのって素敵、と思ったのは言うまでもなかった。

 食事会が和やかに終わり、シャーロットはリュートと並んで歩いて教室に戻った。リュートは大きな骨ばった手でシャーロットの手を握っていた。シャーロットは力強く握られていて、手を解くことが出来ないまま、歩いていた。

 先を歩いていたマリエッタがトミーと一緒に、そそくさとシャーロットの近くに寄ってきた。嬉しそうにシャーロットの顔を見つめて、照れたように笑った。

「トリュフ美味しかったです、姫様、」とこっそりと言う。トミーも頷く。

「家族で食べました、父も母も、泣いて喜んでくれて、私も父や母が自分のことの様に喜んでくれているのを見て嬉しくなってしまって。ありがとうございました。」

「俺もです。姫様から特別に頂いたんだって他のみんなと話していて気が付いて、すごく光栄で。兄や父にも分けたんですが…、食べるのがもったいなくって困りました。」

 トミーが小さく笑うと、マリエッタも笑った。

「わたしこそ、ありがとう。」

 シャーロットは暖かい気持ちになった。

「困った時に助けてくれて嬉しかったの。ありがとう。」 

 優しく微笑んだシャーロットの顔が美しくて、トミーとマリエッタは頬を赤く染めてぺこりと頭を下げるとそそくさと先に歩いていってしまった。トミーもマリエッタも興奮していて、二人は頷きあってこれからもシャーロットを助けようと心に誓い合った。

 リュートはシャーロットの美しい微笑を見て、包んだ手をぎゅっと力強く握りしめた。


 放課後、シャーロットは図書館でガブリエルとサニーと待ち合わせた。ガブリエルってサニーには甘い気がするのよね、とシャーロットは思った。未来の弟だからかしら。

 いつもなら人気のない図書館は、テスト前ということもあってか、沢山の学生が利用していた。シャーロットはガブリエルとサニーと試験範囲を確認してノートをお互い見せ合い、漏れがないか確認して各自勉強をした。

 それでもサニーは時々、シャーロットの顔を見つめていて、視線に気が付いてシャーロットが顔を上げると、にっこりと微笑んだ。なんだか落ち着かないわね、とシャーロットは思った。

 エリックとブルーノと図書館で待ち合わせて勉強したことがあったわねと思い出した。あれはまだプチ・プリンスの本を探している頃だったわ。まだ、あの場所にあの本はあるのかしら。

 シャーロットは資料を探すふりをして、辞書の棚へと足を運んだ。しゃがんで辞書と棚の隙間を目を凝らして見て手を差し入れると、一冊の本が入っていた。

「プチ・プリンスじゃない…?」

 手にした本は同じように薄い本だったけれど、異国の言葉で何かが書いてあった。表紙には、抽象的なリンゴのような太陽のような不思議な絵が描いてあった。

 首を傾げながらシャーロットが本を何度も確認しながら中身を見ていると、サニーが横から手を伸ばしてさっと手に取った。

「これは、私の国の言葉です。」

 誰かの邪魔にならないように一緒に人気のない本棚の方へ歩きながら、シャーロットはサニーを見上げた。立ち止まったサニーは内容を一通り読んで確認した後、シャーロットの瞳を見つめた。

「気になりますか?」

「ええ…、」

 プチ・プリンスだと思って探した本だもの。シャーロットは頷いた。本を手にしているサニーの左手の薬指に、赤い指輪が光っているのを見つけた。

「あれ、指輪…?」

「ああ、これですか?」

 サニーは嬉しそうに手をかざした。シャーロットと買った青い指輪ではなく、赤い指輪だった。

「見覚えがありませんか?」

 ミカエルに教えてもらって金細工の花弁を外した時の指輪にそっくり同じだった。こくんと頷きかけて、シャーロットは動きを止めた。仕掛けを知っていると言ったら、どうなるのだろう。

 ふるふると首を振って、何も答えなかった。

「そうですか。これは、愛しい人とお揃いなのですよ?」

「私の知っている人ですか?」

 シャーロットはサニーがどう答えるのか知りたくて、目を見つめて尋ねてみた。

「ええ、」

 サニーはシャーロットの顔をじっと見つめた。

「その赤い石には何か意味がありますか?」

「永遠に愛を誓う、という意味があります。」

「私にくれたものと、同じだったりしますか?」

 恐る恐る尋ねると、サニーはふっと微笑んだ。

「どう見えますか?」

 同じに見えても、同じと言ってはいけないんだなろうなとシャーロットは思った。黙ってしまったシャーロットを見て小さく溜め息をつくと、サニーは話を変えた。

「この本、読んで聞かせましょうか?」

「はい、もしよかったら。」

 シャーロットを手招きして近くに呼ぶと、サニーは囁くように本を開いて、「どこがいいですか?」と尋ねた。サニーが何気なく開いたページには赤い紐が挟んであった。赤い薔薇の花が一輪描いてあって、何かを綴った文字が並んでいた。

「そこじゃないページがいいわ。」

 赤い薔薇は見たくない。口にはしなかったけれど、シャーロットはそう思った。

 パラパラとページを捲って、一番飾り気のない見開きを指差した。紺色の背景に灰色の星屑のような涙が空から降ってくる絵だった。

 サニーは一瞬、驚いた表情になった。しばらく考えた後、シャーロットに見せながら読み始めた。プチ・プリンスの時も思ったけれど、滔々と読み上げられる言葉は流れていく歌のようね。響きは韻を踏んでいるようにも聞こえた。

 星空の下を船に揺られて川を下っていく空想を思い描きながら、シャーロットはサニーの顔を見上げながらぼーっと聞いていた。天の川の下を、ゴンドラのような船に乗って下っていくの。きっと素敵だわ…。

 突然サニーが読むのを止めて自分の顔を見たので驚いてしまった。

 何かをサニーは呟いてシャーロットの手を取り、手の甲にキスをした。

「これは、詩か何かですか?」

「ええ、これは愛の詩集ですね。」

 は? 愛の詩集?

 シャーロットは目をぱちくりした。

ありがとうございました

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