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うちの学校はおかしい  作者: 駄文職人
メリーさんの場合

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助言なの

 トオルくんは長い息を吐いた。

 姿を確認できない私も、彼が天を仰いでいるのがはっきり分かるの。


「……実は、一つだけあるんですよ。黒名先輩も知らない抜け道が」


 小さく、トオルくんが白状した。


「いいのか?」

「黒名先輩も、邦彦くんが祠を大人しく壊してくれるとは思っていないですよ。だからこそ、気を付けてください。黒名先輩はきっといろんな手練手管を使ってきますから」

「上等だ。抜け道はどこだ?」

「体育館倉庫の扉です」


 聞けば、そこはさる人が神隠しから自力で帰還する際に開けた道らしい。


「そいつすげぇな」

「知らないんですか?推しへの愛って次元の壁を越えるんですよ……」

「えぇ……」


 邦彦くんがドン引いているの。


 そうなのか。

 愛は次元の壁を越えるのか。


「おい、真似するなよ」

『別に何も言っていないの』


 私も、京也くんへの愛は負けてはいないの。


「想いが届くといいですね」

『恋する乙女は無敵なの』

「ははっ。それは心強い!」


 笑うトオルくんの声はどこか空々しかった。


「正直、ぼくは現状を変えてくれる何かであるなら誰でも歓迎です。黒名先輩でも、邦彦くんでもね」

「そんなもんか」

「えぇ。みんなから忘れ去られて、誰にも見つけてもらえないまま、一人寂しく学校をさまようよりマシです」


 だから、これでも邦彦くんと夢堂くんが入学してくれて嬉しかったんですよ、とトオルは感謝を述べる。


 誰にも見えず、誰にも関わることもできず、存在すら忘れられ続けて。


 ただ学校生活を楽しむみんなの背中を眺め続ける日々。

 誰も変えることのできない彼は、それでも何かを変えようともがいてきたのだろう。


 誰かに愛されることすら、彼にはできない。


「邦彦くん。黒名先輩は、今の守り神を退けて自分が成り代わろうとしています。そして暴走する神様を止められるのは邦彦くんだけです。もし黒名先輩を止めたいなら、絶対に神様の封印を解かないでください」


 それでもトオルくんは邦彦くんに、自分を友と呼んでくれた青年に、助言をすると心に決めてくれた。


 そんなトオルくんの思いを、


「おぅ」


 邦彦くんは相変わらず無愛想に、それでいて真っ直ぐに受け止めた。

次回11月13日7:00に更新します。

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