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うちの学校はおかしい  作者: 駄文職人
メリーさんの場合

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相容れない理由なの

 トオルくんは「そ、そんな方法が……」と衝撃を受けていたの。


 皮肉にもVtuberとして活動を始めてからは、電話をひたすらかけ続ける時と比べものにならない数の視聴者が私の動画を見てくれるようになった。


 声だけで人を脅かし続けた怪談は、今その声を武器に歌、トーク、ゲーム実況なんでもござれで活動している。


 自分と同じく淘汰されていく存在と見ていた相手が、新たな世界を見つけているという事実をトオルくんはすぐに理解できない。


「俺は、昔っから他人には見えないモノが見えてた。正直、アヤカシがいない世界なんて逆に想像つかねぇよ」


 邦彦くんはそんなトオルへ、静かに話しかける。


「黒名先輩が目指すもんは、そりゃあ素晴らしいんだろう。幽霊や妖怪に授業を邪魔されねぇ。そこらを歩くだけでうっかり呪われたり取り憑かれたりしねぇ。河原には河童はいなくて、お喋りなカラスが話しかけてこない、平穏な世界なんだろうな」


 だけど。


「そりゃあ、友達を売ってまで目指すようなモンじゃあねぇだろう……!」


 邦彦くんは、強く否定する。


 私は邦彦くんのことが嫌いだ。

 私のことを無視しただけではない。ずっと不機嫌そうな顔が怖い上、すぐに京也くんを怒鳴るの。


 だけど、この人は絶対に友達を見捨てない。


「あの人の理想は、俺の友達を傷付ける。だから賛同できねぇ」

「……あの人が菜子さんを揺さぶったことが、そんなに気に入らなかったですか?」

「それもある。でも、それだけじゃねぇよ。あの人のやり方だと、トオルくんが消えるかもしれない。俺には、それだけでも十分だ」


 トオルくんが息を飲むのが、受話器越しでも聞こえた。


 邦彦くんの中で、京也くん達だけでなくトオルくんも助けるべき存在なの。この人にとってはアヤカシであるかそうでないかなどきっと大した問題ではない。


 邦彦くんは私達に対して、余りに分け隔てない。


「……邦彦くんは、何を望みますか?」


 恐る恐る尋ねるトオルへ、


「平和な日常」


 言い切る邦彦くんの「平和」の中には、きっとトオルくんも入っている。もしかしたら京也くんと共にいる、私すらも。


 幼い頃からアヤカシに囲まれて育ってきた彼は、アヤカシのいない世界を知らない。


 トオルくんは絶句する。


 同時に私は腑に落ちたの。

 この人は、どうしようもなく京也くんの友達だ。

次回11月12日7:00に更新します。

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