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うちの学校はおかしい  作者: 駄文職人
クマの場合

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クマの献身

 そのメッセージを見た瞬間、ただごとではない気配を感じた。


 なんとおぞましい気であろうか。

 差出人はヒナセの弟からだったようだが、吾輩にとってはどうでも良かった。これはダメだ。


 この学校でこのような怖気のよだつ術元を放置してはならぬ。


 吾輩のささやかな願いでは女子一人を引き込むしかできなかったが、それとは比べ物にならない。もっと強力で悪意ある何かが蔓延しようとしている。


 吾輩ができることは、限られていた。


 適当なノートを破り、筆箱からペンを引きずり出すと、そこに魔除けの陣を書き記した。


 鞄の中は狭く動きづらかったが、なんとか書ききった。


 そしてスマホに撮影し、メールの内容を書き換えたのだ。操作方法はメイコの兄君やヒナセの手元を間近で見ていたから分かっていた。



『この画像を送られた不幸なあなたは呪われました。呪いを解く方法は簡単です。一時間以内にあなたの知り合い五人に同じ画像を送ってください。放置した場合、あなたは恐ろしくも×××の晩餐に呼ばれることになるでしょう』



 少しでも魔除けの効果が増せばと他人にも広まるよう仕組んだ。


 吾輩の予想外に魔除けは広まったようであるが、それでもこの状況だ、怪異を打ち消すには至らなかったのであろう。

 むしろあの小鬼どもの敵意を見れば、吾輩が奴らを逆上させてしまっただけだったのやも知れぬ。


 それで良い。

 奴の目が吾輩に向き、メイコから遠ざけられるのならば。


 異界に閉じ込められ、出られず虚しく消えゆくさだめであった吾輩を拾い上げたのはメイコだ。吾輩はメイコに恩と巻き込んでしまった負い目がある。


 異界にて拾った得体の知れないモノを、口では散々に言いながらも捨てることなくそばに置いてくれる。それに吾輩がどれほど救われているか彼女は知りはすまい。否、生涯知る必要はない。


 吾輩はクマである。

 吾輩は今やスマホのストラップである。


 ならば、吾輩は共にいてくれる持ち主と拾い主に尽くそう。あの大鬼にこれ以上手出しはさせぬ。




「あれ、そういえばクマは?」


 メイコが探す声が聞こえたが、巨人の肩から降りた吾輩はそのまま振り返ることなく学校の闇の中へその身を隠した。

投稿再開はまた活動報告でお知らせします。

→次回は11月4日7:00に投稿します。

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