表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちの学校はおかしい  作者: 駄文職人
クマの場合

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/110

ついに奴が動き出す

 ヒナセがこちらに気がついた。


「あっ、クマ」

「なにぃ!?」


 ヒナセの言葉に、メイコが吾輩に飛びついた。


 が、間一髪で避けた。危ない。


「見つけたわよ、このクソグマ! 逃げるなぁぁぁ!」


 何を隠そう、吾輩は怒り狂ったメイコから逃げていたのである。


 だが吾輩は悪いことをしていた訳ではない。スマホでやらねばならぬことがあった為、少々拝借していただけである。

 あいにく、隠れている内に学内で異界に飛ばされ、小鬼に捕まった際にスマホはいずこかへ持ち去られてしまった。


「あっ待て! 私のロズ様のアクキーをどこへやったぁぁぁ!!」


 スマホそのものを持ち出したことより、どうやらスマホケースについていた板の所在が問題らしい。


 言い訳をする口を持たぬ吾輩は、逃げ惑う他なかった。


 巨人が吾輩をつまんで「待ってほしい」とメイコを押し留めてくれなければ、吾輩の四肢はもがれていたやもしれぬ。


「あの! このクマさんのこと、もしかしてお二人はご存知なんですか!?」

「ご存知もなにも、うちのスマホのストラップよ」

「やりましたよ、シズさん! 貴重な手掛かりですよぅ!?」


 巨人と奇妙な気配の女子はそれぞれシズ、ユメと名乗ると勢い込んでメイコに詰め寄る。


「あの、教えてください! 実は私たち、このクマさんを探していて……」

「待って。近い近い、ちょっと待って」


 異界でも一切動じなかった流石のメイコもたじたじである。


「それより先に、逃げた方が良いと思うのよ」

「へっ?」

「あ、忘れてたにゃあ」


 ヒナセも背後を振り返る。


「あの、ぼくたちチャイムが鳴ったと思ったら、お札だらけの暗い部屋に閉じ込められていてですね」

「ム……?」

「扉は開かないし、何か仕掛けでもないかとあちこち触ってて……もう怪しげに部屋の真ん中にあったから、ね」


 まさか、とユメがおののく。


「う、動かしちゃったんですか……?」


 メイコとヒナセは揃って視線をそらした。

 まさかあんなことになるとは思ってなかったんだと言わんばかりに。


「いや、だって、動かせと言わんばかりに鎮座してるから」

「「………!!」」


 絶句したユメとシズは顔を見合わせた、その瞬間。


 ドシン……ドシン……


 部室棟から煙と暗がりの中から重たい音が聞こえてくる。


 固唾を飲んで見守るこちらの前で、その姿を現したのは。



 ヒビの入った顔が痛々しく、目から涙が流れているようにも見える。

 半身の割れた、信楽焼のタヌキであった。

毎日7時に更新しています。

※もし気に入っていただけましたら、ポイント、いいね、ブクマ等をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ