彼は語り始める
時は少し遡る
吾輩はクマである。
しかしながら吾輩は山に出る獰猛な畜生ではない。クマというのは吾輩の名前の話である。
なぜクマなのかというと、吾輩を拾った女子が吾輩のことを「クマ」と呼ぶからだ。全く失礼甚だしいが、特に他に吾輩を呼ぶ名がなかったので致し方なく甘んじている。
「にゃあ、そちらさんも迷子ですか?」
人のくせににゃあにゃあと猫のように鳴くこちらの男子が今の吾輩の持ち主である。名はヒナセと言う。
小鬼から吾輩を助けてくれた奇妙な気配の女子はまじまじとヒナセを眺めた。
「顔が良い……」
「……!」
なぜか隣の巨人が衝撃を受けていた。
分からぬ。
いや、目鼻立ちがはっきりしており、整った容姿であるとは分かる。この男は廊下を歩くたび女子どもの視線をさらっていた。
ヒナセの隣にいた女子、メイコが頷いた。
「あぁ。こいつ、乙女ゲーの正統派イケメンみたいなルックスしてるよね」
「えぇ〜そうかな?」
「すごい……目の保養って大袈裟だと思っていたけど、本物のイケメンって目が洗われるんだね……輝いてる」
「にゃあ」
ヒナセは困ったように笑っていた。
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