『 』のために鐘は鳴る
ブーッと音がなり、マナーモードのスマホがメッセージが届いたことを知らせる。
指で画面をなぞりロックを外すと、京也はメッセージを見て笑みをこぼした。
「おや、愛しい人からですか?」
「うん。最近のメリーちゃん、電話だけじゃなくてチャットを送る技術を編み出したらしくて」
菜子が画面を覗き込むと、確かにスマホ画面には『私、メリーさん』『今、昇降口のところにいるの(//ω照♥』と読んでいるこちらが恥ずかしくなりそうなメッセージが表示されている。
「さすが、メリーさん。文明の力を使いこなしておられますね」
「その内、ブログとか始めてそう」
「その時はフォロワーのお宅に訪問するんでしょうか」
ある日突然、「私メリーさん」とインターホンが鳴らされるようになるのかもしれない。
だが、続けて受信したメッセージは不穏なものだった。
『あのね、京也くん』
『今すぐに学校から出てほしいの』
「えっ、どうゆうこと?」
京也と菜子はそろって首を傾げる。
「逢引きのお誘いでしょうか」
「午後の授業もあるしなぁ。というか、連絡くれるのも、放課後まではいつも待っていてくれるのに」
何かあったのか、と心配して返信をすると焦れたように何度もスマホが震える。
『違うの、おかしいの』
『学校がズレているの』
『だから、ここにいちゃだめ』
『早く出て』
「メリーちゃん……?」
ただごとでない様子に京也は立ち上がる。
「どうしよう、菜子ちゃん」
「邦彦くんに連絡します。怪異であるメリーさんがここまで言うなら余程のことでしょう。場合によっては、生徒全員を退避させなければ……」
その時、チャイムが鳴った。
昼休み終了の予鈴が鳴るには早すぎる。それにチャイムの音もおかしかった。
「音が逆……?」
まるで録音したチャイムの音を逆さに流しているみたいで。
次の瞬間、辺りが真っ暗になった。
【裏話】
もしこの話に語り手がいるのならば、それはきっと全てを俯瞰していた存在なのだろう。
全てを知る超越者は、ただ観測している。
人はそれを『神』と呼ぶのだ。
だがあいにくとこの物語の神様は荒ぶる災禍、かのモノは自分の領域を土足で踏まれるのを好まない。もしそのような不届者がいるのならば罰せねばならぬ。
怒れる神は故に鐘を鳴らす。
『お前を必ず滅する』と布告するのである。
意訳:クマ あいつ ぜったいゆるさん
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