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◆高校生(=世界一おバカな生き物)による学校の怪談 【旧:うちの学校はおかしい】  作者: 駄文職人
晴海夜桜の場合

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桜はそして、夢に落ちる

 電車を降りればすでに日は落ちていた。

 私は家路を急ぐ。これでは門限ギリギリになってしまうだろう。

 母様に怒られてしまうかもしれないという状況にも関わらず、私の胸中は驚くほど穏やかだった。


 帰ったら、父様と母様と話をしよう。

 育ててくれた感謝を伝えて、それから。

 まだ私のやりたいことは分からないけれど、私も私を生きてみたい。


 心も軽やかだった。

 ずっとかかっていたモヤが晴れたよう。


 その時、道の向こうから誰かが歩いてくるのが見えた。


 日が落ちたとはいえそこまで遅い時間でもない。私のように帰路に着くサラリーマンや塾帰りの学生もいるだろう。いつもなら気にも留めずすれ違うだけの通りすがり。


 なのに私の目を引いたのは、街灯の下に照らされた制服が妹のものと同じだったから。


「ふむ、失敗してしまったか……」


 コツコツとローファーを鳴らしながらやってきた瑞明生は、私の前で立ち止まった。


「いや、構わないんだよ。どうせあまり期待はしていなかった。少しばかり釘を刺せれば良いと、ただそれだけのつもりだったからね」

「貴女は……」


 私よりもずっと小柄な彼女は、闇の中にフワフワの髪を揺らして嗤っていた。


 ()()()()()()()()()()


 でも、どこで会っただろう?


「欲を隠すのが上手い人間は扱いづらいものだ。なぁ?」

「……っ!」


 全身が粟だった。

 ()()は、危険なモノだ。


 後退しようとして、私は不意に自分の頭が霞がかってしまう。抗いがたい眠気。


「心配しなくていい。私のかけた暗示は邦彦くんに解かれてしまったようだしね。ちゃんと調()()()()()()帰してあげよう」

「ぁ……」


 倒れかける私を、誰かが支える。

 後ろに誰かいるのかと見上げれば、同じ瑞明生と思われる男子生徒だった。


「……ここまでする必要があったのですか、お嬢?」

「言っただろう、ただの保険だ」


 少女の足が私の目の前にやってきてかがみ込む。


「菜子くんにとって姉とは自身の劣等感の象徴だ。ぶつければ少しは揺らいでくれるかと期待したのだがな。そして晴海菜子を揺さぶれば、邦彦くんは動かざるを得ない」


 少女の手が私の視界を覆う。

 体が重くて力が入らない。逃げなければと思うのに指一本動かなかった。


「ま、結局のところ失敗したとしても何も変わりはしないのだけれどね」


 視界が暗転する。

 遠のく意識の向こうで、少女が実に楽しげに言葉を紡ぐのが聞こえた。



「築城京也はアヤカシに心を奪われ、晴海菜子は非日常への憧憬を捨てられない。友が闇に落ちる時、邦彦くんはどうするのだろうね? フフフ、楽しみじゃないか」

毎日7時に更新しています。

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