いともたやすく行われる非日常③
ある日の昼休み、俺と京也が並んで歩いていると、
「丁度良いところに、邦彦くん。あぁ、京也くんも。少し手伝っていただけませんか?」
長髪眼鏡の女子生徒が声をかけてきた。
こいつは俺と同じC組の晴海菜子。黙っていればクール系美人と言えなくもない。黙っていればだ。
晴海は理科室から俺たちを手招きしていた。
「どうした晴海」
「午後の授業、実験でしょう?先生から準備を頼まれたのですが」
「おっ、器材を出すんだね?この京也くんが助太刀しんぜよう!」
「それもなんですが実は……あぁ、いえ。見ていただくのが一番早いと思います」
言葉を濁して俺たちを準備室へと連れて行く。
部屋の中を覗いた瞬間、三人は沈黙した。
人体模型が立っている。
俺たちが突然入ってきたからだろう。歩こうと片足を踏み出したその状態で固まっている。
まるで今から山登りにでも行こうかとでも言うように、無造作に振り上げられた腕。今にも次の一歩を踏み出しそうな引き足。躍動感あるそれは美術館に並べられていても遜色ないくらいだ。
マジで散歩に行く五秒前の人体模型に、京也は臆することなく歩み寄る。
その背後に回ったかと思えば、何を思ったのか腰を丸めて猫背の状態で固まった。
いつの間にか晴海も京也の後ろに回っている。しゃがんだ状態から腰を上げた、その瞬間の体勢でぴたりと止まる。
腕をだらりと下げた状態まで完璧だ。
傍から見れば見事な「人類進化の過程」であった。
俺はスマートフォンを構えてぱしゃりと一枚撮る。
そして手近の、恐らく晴海のものと思われる教科書を丸めると、右から順番にアホどもの後頭部をはたき飛ばしていった。
毎日0時に更新します。
※もし気に入っていただけましたら、評価点、ブクマをお願いします。