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うちの学校はおかしい  作者: 駄文職人
夢堂静の場合

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河川敷にて

 水が飛ぶ、(げき)が飛ぶ、そしてきゅうりが飛ぶ。


 学校裏の河原では瑞明高校一の巨漢と河童たちとの「相撲勝ち抜き戦」が繰り広げられていた。

 次々に襲いかかる子どもの背丈ほどの河童を千切っては投げ千切っては投げしていく様子は見ていていっそ清々しい。


 側から見れば子どもたちの相手をしている優しい高校生だが、河童は忖度なしに全力で飛びかかってくるのでまだ肌寒い春先だというのに夢堂くんは汗びっしょりだ。


「ここの河童は昔からギャング化しててな。油断して歩いているとああやって襲われてオヤツや小銭を奪われるんだ」

「ひぇ……」


 邦彦くんと千鶴さんは少し離れた坂の上でそれらを見下ろしている。


 夢堂くんの首からは紐を通されたきゅうりが三本吊されている。お買い得五本パックだったのだが、既に二本はすくねられた後だ。


 河童も残り三本しかない戦利品をなんとか我が手に、と必死である。


 ちなみに取られた二本は河童同士の壮絶な奪い合いの末に、倒れた仲間の山の上で勝者が美味しそうに頬張っている。


「一人で絶対にここを通るなよ」

「これ見た後で一人でここに来ようとは思わないですよ……」


 河川敷は死屍累々である。


 競り負けた河童たちが涙ながらに地面を叩いていた。


 その時、川の水を割って大きな影が姿を現す。


「お、出たな」


 一際大きな河童が水を滴らせて岸に上がる。他の河童たちが貧弱に見えるほど筋骨隆々に鍛え上げられた四肢、一目見ただけでそれが川の主であると分かる。


 夢堂くんに対峙する川の主。


 振り上げた片足が四股を踏めば、ダァンっ! と大きな音と共に地面が震えた。


 対する夢堂くんもワイシャツの袖をまくり上げ、腰を落として拳を地面に置く。


 互いに見合う両者。


 静寂。


 周囲の河童たちも押し黙って、固唾を飲んで彼らを見つめる。


 それを見下ろしながら、千鶴さんはポツリと言った。


「わたし、委員会に入ろうと思います」


 邦彦くんは一拍置いてから「……そうかよ」と素っ気なく答える。


「誰かが一人で助けを求めている時に、駆けつけて寄り添ってあげられる人になりたいです。邦彦さんたちがそうしてくれたように。いてもいなくても変わらないような、グループの隅にくっついた端っこじゃダメなんです」



「わたしは変わりたい。強くなりたいです」



 巨体がぶつかり合う。


 二人は顔を真っ赤にしながら腰に手を回して押し合う。

 周りを河童たちが円状に囲み、即席の土俵に向かってギャアギャアとけたたましく野次を飛ばしていた。





 夢堂くんと川の主の相撲勝負は一勝一敗の大接戦の末、闘いに耐えきれなかったきゅうりが砕け散ったことにより勝者不在のまま幕を下ろすこととなる。

毎日7時に更新しています。

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