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うちの学校はおかしい  作者: 駄文職人
夢堂静の場合

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聞き取り調査

「どうするのか?」と夢堂くんは千鶴さんにおもむろに尋ねた。


 千鶴さんは突然話を振られて困った顔をする。


「えっ、どうするって何がです?」


 どうやら、夢堂くんは委員会に入る気があるのかどうかが気になるらしい。黒名先輩からそれとなく探ってほしいと頼まれていたようなのだが、夢堂くんは直球であった。


 意図を伝えると、千鶴さんはますます困った顔をした。


「正直、迷っています。怖いですし」


 夢堂くんは頷く。


 幽霊、妖怪、怪奇現象。ただでさえ瑞明高校でそうした話題は事欠かないのに、自分から関わっていきたい人はいないだろう。


「地味でモブなわたしに目を留めて、その他大勢じゃなくてわたしを誘ってくださるのがすごく嬉しいです。たとえ数合わせでもいいです。先輩方もすごく優しいですし、わたしなんかでお力になれることがあるなら、微力ながらでもお手伝いしたいと思う気持ちもあって……でも自分は何もできないし、別に見える訳でもないですし、足を引っ張るのは申し訳なくて……迷っています」


 夢堂くんは頷く。

 真剣に耳を傾ける夢堂くんに、緊張した面持ちをしながらも千鶴さんは自分の気持ちを言葉にしてくれた。


 夢堂くんは口下手だが、聞き上手だ。

 だから夢堂くんに相談しにくる生徒は割と多い。彼ならどんな荒唐無稽な話も笑わずに聞いてくれるし、口が硬いから誰かにバラされることもない。


「あと、……実は、引っかかることもあって」


 そんな夢堂くんの人柄は、人の本音も自然に引き出してしまう。


「あの、邦彦さん」

「あ?」

「邦彦さんは、あんまりわたしに委員会を勧めないですよね」


 一歩離れていた邦彦くんに、どうしてですかと千鶴さんは尋ねる。


「お前がどの委員会に入るかを、なんで俺が口出ししなきゃなんねぇんだよ」

「邦彦さんは、本当は黒名先輩にわたしを引き合わせたくなかったんだって菜子さんが言っていました」

「チッ。晴海め、黙ってろって言ってんのに……」


 邦彦くんはガリガリと頭を掻いた。


「別に。大した理由じゃねぇ」

「教えてくれないんですか?」

「鈍臭いお前には向いてないと思っただけだよ」


 もういいだろ、と強引に話題を切り上げてしまう。何かを言いたげな千鶴さんも、そんな態度に何も言えなくなってしまう。


 そうした邦彦くんの態度こそが、千鶴さんが決断できない一番の理由のようだ。


 ぽん、と夢堂くんが邦彦くんの肩に手を置いた。


「な、なんだよ」


「心配しているだけなんだよな、照れ屋め」とばかりにニヤニヤ笑う夢堂くん。


「そんなんじゃねぇよ!!!」


 うんうんと頷いて「分かってる分かってる」と肯定されれば「そんなんじゃねぇっつってるだろ!」と邦彦くんはムキになって怒鳴り捨て、肩を怒らせて早足で先に行ってしまう。


 そんな邦彦くんを、「仕方ないな」とばかりに夢堂くんは大きな肩をすくめて追いかけるのだった。





 その後ろ、千鶴さんだけは思案顔で二人の後ろ姿を見つめていた。


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