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うちの学校はおかしい  作者: 駄文職人
夢堂静の場合

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部室棟にて

 グラウンド横の部室棟の一階突き当たりにはどの部も使用していない空き部屋がある。


『立入禁止』の擦り切れた張り紙が色褪せたテープによって辛うじて貼り付けてある扉の前にやって来ると、夢堂くんは預かっていた鍵をノブの鍵穴に差し込んだ。


「ここ……何かいるんですか?」


 鍵をガチャガチャ開ける大きな背中を見つめながら、恐る恐る千鶴さんが尋ねる。


「知らん」

「知らんって、邦彦さんも初めてなんです?」

「いや、入ったことはあるけどよ……まぁ、見てもらった方が早い」


 扉が開いた。


 夢堂くんが中に入るのに続いて部屋に足を踏み入れた千鶴さんは「ひっ」と短く悲鳴を上げる。



 部室中の壁という壁にびっしりとお札が貼ってあった。



 部屋には椅子もロッカーも棚も何もない。がらんとした空き部屋で、窓は段ボールで雑に塞がれている。お札はその上からも所狭しと貼られていた。


 そして部屋のど真ん中には何故かタヌキの置き物が鎮座している。

 店の前でよく見かける、袋と徳利を担いだ信楽焼のそれだ。愛嬌のある顔だが、暗がりからぬっと出てくるとこれはこれで迫力がある。


「ここのお札の点検も委員会の仕事ってことになってるんだよ」


 邦彦くんと夢堂くんは慣れた様子でスマホの明かりを点けた。


「それじゃ、俺右から回るわ。夢堂は左頼む」

「任された」と頷いて、夢堂くんは左側から壁のお札の点検を始めた。


 剥がれかけたものを両面テープで貼り直し、補強していく。


 二人が作業している間、手持ち無沙汰な千鶴さんがそっとタヌキの置き物に近付いていた。

 頭の埃を優しく叩いて落とす。


「この中に何かが封印されているとか……?」

「いや。それただの置き物」


 さっくりと邦彦くんが否定した。

 彼は霊感のある方だから、何もいないと言うのなら本当に何もいないのだろう。


「じゃあ、何故ここにタヌキ?」

「タヌキであることに大した理由はない」とばかりに、簡単な点検を終えた夢堂くんは千鶴さんのそばにやって来ると、太い指先でタヌキの置き物を指差した。


「そこの床の上を押さえる物がたまたまタヌキの置き物だっただけだ」と夢堂くんは床をスマホで照らす。


「!」


 慌てて千鶴さんが飛び退いた。


 タヌキの置き物の下、暗くて見えにくいが床が毒々しい黒に変色していた。


 まるで下から何かが滲み出てきたみたいに。


 息を飲んでタヌキを見下ろす千鶴さんに、邦彦くんは補足した。






「おかげでそいつは『お漏らしタヌキ』って呼ばれている」

「可哀想だっ!?」


 置き石代わりに据えられたタヌキには同情する。

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