翻訳機付きの巨人
ようやくそばに来た千鶴さんがクマに遭遇したウサギのようにプルプル震えている。
「久しぶりだな、夢堂。相変わらずでっけぇな」
手を上げて挨拶する邦彦くんに対して、夢堂くんはペコリと会釈返す。
「つかトオルくんじゃねーか。なんで一緒にいんだよ」
あ、ぼくのことはお構いなく。
ただの夢堂くんの翻訳機です。空気として扱ってください。
「? おぉ」
さて、当の夢堂くんは別の意味で固まっている。
夢堂くん、とってもシャイなので女の子とどう話して良いか分からないらしい。
お? なになに。
「夢堂と申します。今日はよろしくお願いします」だそうです。
「あ……よろしくお願い、します?」
「なるほど、翻訳機」
邦彦くんが納得したように頷く。
「じゃあ、俺いらねぇな?」
「いりますよ!? あ、いや夢堂さんと一緒が嫌とかじゃなくて、なんかこう、初対面同士で気まずいじゃないですか!? 一緒に来てくださいよ!?」
「ぜひそうして欲しい」と夢堂くんも切実に訴えています。
「えぇ……」
と嫌そうに言いながらも付き合ってくれるつもりなのが邦彦くんの優しいところだ。
「つか、今日どこ回るんだよ? 俺、何も知らされてねぇんだよ」
「中庭と部室棟と、学外の川だ」だそうです。
「川かぁ」
邦彦くんは長い息を吐いて空を仰いだ。
「スーパーできゅうり買ってっていいか?」
「あっ」
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