餅玉7
何度叩き切っても、真っ白な塊はまたぐにゃぐにゃと蠢いて元通りになる。
「何ボサっとしてんだ、早く上がって来い!」
邦彦さんに怒鳴られて、わたしと京也さんは慌てて階段を駆け上がった。
入れ違いにと邦彦さんはへしゃげた鏡餅を階段から蹴り落とす。
「わーい、邦彦くん来てくれてありがとう!」
「お前、後で肉まんおごれ」
「ピザまんでもいいよ」
より高い単価のものを挙げて京也さんが邦彦さんの隣に並んで快諾する。
「それにしても、ずいぶん育ったな」
「あいつ、千鶴ちゃん一筋」
「ずいぶん前から標的にされていたんだろ」
「どうしよっか? キリがないよ」
「喰わせるしかねぇだろ」
下の鏡餅とくっつき、また一つに戻った鏡餅があちこちから腕を生やしてムクムクと肥大化していく。
「千鶴ちゃん、ここはおれたちに任せて屋上へ」
「で、でも!」
「狙われてんのはお前だろ。とっとと行けよ。台帳に名前書くのを忘れるな」
こんな時でも、屋上使用のルールは絶対らしい。
神隠しには逢いたくないので、わたしは必死で頷いた。
後ろ髪引かれる思いで上階へ向かうわたしの背後で邦彦さんと京也さんが話しているのが聞こえた。
「ところで、これって鼻ピアスチャンスじゃない?」
「お前まだ言ってんの?」
「いやでもさ、最近唇という選択肢があることに気が付いて」
「もうピアスからそろそろ離れろよ!?」
「初志貫徹って大切だと思うんだ」
「頑張るところはそこじゃねーよ!?お前はメリーさんに会うたびに増やす気か!?」
デートの度に増えていくピアスとか怖すぎる。
明日から京也さんに会うのが怖いなぁ。
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