餅玉4
校内を走り回りながら、京也さんはスマホでどこかへ電話をかけていた。
「あっ、出た!菜子ちゃん!」
ようやく繋がったのか、京也さんは表情を明るくした。
「突然ごめんね!近くに邦彦くんいない!?何回掛けても出ないんだよ〜!そう、それ!今サイアクノジタイってやつ!」
最悪の事態、とさらっと告げる京也さん。
ただいつもより少しタチの悪い浮遊霊に目をつけられただけだと思っていた。
もしかしたら、わたしが思っているより深刻な状況なのだろうか。
「へっ!?今日、委員の集会!?こんな時にもー!!」
京也さんが焦ったように叫ぶ。
なるほど、委員の集まりの最中だったから携帯の電源を切っているのだろう。
「ごめん、菜子ちゃん!ちょっと邦彦くんを呼んできてくれない!?後でぼくが怒られるから!」
「ぼくでもはっきり見えるレベルで、学校中の浮遊霊が集まってるんだってばー!」
昼休みに聞いた。
京也さんは零に近いほど霊感がない。
人より鈍感で、結構強力な霊ですら大抵白いモヤモヤにしか見えていないのだと。
その京也さんですらはっきり分かる異常。
それって、結構ヤバいんじゃあ……?
その時、今度はわたしのスマホが鳴る。
今は電話どころじゃないので呼び出しを切ろうとポケットから取り出すと、スマホは勝手に通話状態になった。
『わたし、メリーさん……』
「ひっ」
「え、メリーちゃん!?来てたの!?」
スピーカーモードである。
スマホを放り出しかけたところ、京也さんが知り合いにでも話しかけるみたいに返事をしたのでわたしはギリギリ踏みとどまった。
わたしの体質はついにメリーさんを召喚したのだろうかと戦慄していると、妙にロリ声の彼女は電話口で意を決したように告げた。
『手を繋いだからって……い、良い気にならないでよねっ』
なんとなくわたしはスマホをつかんだ手と反対の手を見る。
京也さんにがっしりとつかまれた、手を。
「京也さん、メリーさんとどういうご関係で?」
「えっと……彼女」
なんだって?
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