人目を引くもの
これは後で聞いた話なのだけど。
ある日の昼休み、2年の教室のある三階の廊下で面白いものが観測されたそうだ。
「京也くん京也くん」
「なに? 菜子ちゃん」
「あれ、見てください」
そう彼女が指差したのは階下の中庭。
ベンチの1つにそれはあった。
「えっと……ごめん。おれにはでっかい鏡餅にしか見えないんだけど」
「奇遇ですね。私もです」
こんもりと盛られた白い物体。
よくよく見るとそれは人の顔をしていたり腕の一部だったり、それはそれはホラーな様相を呈していたそうだ。
そしてそこへ箒を持って近付く人影。
「あ、邦彦くん」
彼は箒を振り回してその鏡餅をバッサバッサと切り崩していく。
やがて鏡餅から出てきたのは、中で目を回した生徒。
いや、まあわたしなんだけど。
学内の浮遊霊を一箇所に集めていたらしい。凝縮された霊たちが折り重なってわたしに群がり、鏡餅と化していたのだ。
彼は浮遊霊を散らすと、わたしを救出して保健室へと連れて行ってくれたのである。
その時、ガタッと窓にかじりつきわなないた人物が一人。
「あぁっ!」
「おー、珍しい。邦彦くんが女子をお姫様抱っこに」
「ずるいです! 私もされたことないのに!」
いつもは冷静沈着な彼女が心の底から悔しがるその姿は、いかなる怪奇現象よりも人の目を引いたという。
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