ラブロマンスは突然に?
わたし、結女千鶴は平凡な女の子だった。
さして勉強もできる訳じゃないし、運動も得意じゃない。
人には何かしら取り柄があるというが、わたしの取り柄は「取り立てて目立つところがない」ことだった。
たくさんいるクラスメイトの一人。
女の子グループの一番端っこ。
そうだと思っていた。
瑞明高校に入学するまでは。
◇
「おい、お前」
声をかけられた時、それがわたしに向けられていると気付かなかった。
だってわたしはモブの一人だから。
どこにでもいる、なんならそこらの廊下で談笑している人たちにくっついているオマケだから。
「おいって! お前だよ!」
急に腕を引かれて、わたしは飛び上がった。
「ふぁいっ!?」
変な声が出た。
腕をつかんだ人を見上げて、その人がものすごく人相が悪かったからさらに悲鳴をあげそうになる。
いや、ただ目つきが鋭いだけか。
まさかわたしがそんなガラの悪い人に絡まれるなんて思いもしなかった。
「ななな、なんでしょう!? あの、わたし今五百円玉しか持っていないのですけどっ!?」
「は? ちげーし」
目つきの悪いその人は呆れた。
「まあいいや。ちょっと動くなよ」
「ふぇ?」
彼はわたしの頭に手を伸ばす。
え、これってまさか……。
わたしの髪にそっと触れた彼は、仏頂面のまま告げた。
「人魂、髪についてたぞ」
「……っ!!!」
人生16年目にして、わたしは自分が憑依体質だと知る。
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