異次元 in 異次元
「……っと」
「どわっ!?」
深淵に飲み込まれた瞬間、目の前に光が当てられたように真っ白になったかと思うと、突然重力が反転したかのような感覚の後、俺たちは地面に着地した。
京也は顔から突っ込んでいたが。
周囲を見渡すと、まるで森の中の寂れた神社の境内のようであった。白い霧に包まれていて全貌はよく見えないが、古めかしいが元々はそれなりに立派な社殿みたいだ。
「あれっ!? さっきまで真っ暗だったんだよ!?」
ずっと深淵の中にいたはずの京也も初めて見る光景らしい。
「だいぶ深い所まで来ちまったってことか」
空気が少し重苦しい。
ちょっと次元がずれた現実世界のお隣とは少し違う、神様のお膝元。
神域だ。
「っていうかお前、ずっと暗闇の中にいたって? よく平気だったな」
砂を払って立ち上がった京也はけろりとしていた。
次元の歪んだ場所で、一人音も光もない世界に閉じ込められる。
ーー気が触れたっておかしくないんだが。
「んー。これを持ってたからかなぁ」
懐から出てきたのは、黒い羽根だった。
すぐに思いついたのは、八咫烏のナギさんだ。大きさからしてカラスの羽根に間違いはなさそうである。
「カラスはねぇ、昔から神様の使いだって言われているんだよ。ナギさん自身はうちの神様の眷属じゃないけど、ご近所さんの付き合いだって言ってたから、お守り代わりになると思ったんだ」
ナギさんはそれなりに上位のアヤカシのはずだが、守り神のいる瑞明高校に平気で出入りしている。
そしてナギさんの眷属であるカラスなら守り神も害したりしないはず、という訳か。
「それにほら! おれら毎日昼休みに守り神にお供え物してるじゃん? だったら守り神もちょっとは守ってくれたりしたのかなって!」
「ん?」
「邦彦くんもご利益あるって言ってたしさぁ。ちょっとおっかないけど、ここの神様はきっと良い神様だよ!」
あれ……? コイツまさか。
守り神が裏で何しようとしたのか知らねぇのか……!?
「おい、メリーさん」
『私、メリーさん。京也くんが無事なら、他のことはどうでもいいの』
京也の握ったスマホからすました声が聞こえてくる。
ブレねぇな、この野郎!?
つまり、メリーさんは京也に何も説明していないのだ。
守り神が供物を求めて生徒たちを拉致ろうとしたことも。それに便乗して黒名先輩が、京也や晴海を巻き込んだことも。
「邦彦くん?」
「いや……うん。別にいいわ」
コンマ数秒の思考の末、俺は結論を出す。
説明するの面倒だから、勘違いさせておこう。
こちらの反応を不思議そうに見ていた京也の方も、「あっ、あれ何かな!?」と興味を別のものに移してさっさと走り出すのだった。
次回1月26日7:00に更新します。
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