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◆高校生(=世界一おバカな生き物)による学校の怪談 【旧:うちの学校はおかしい】  作者: 駄文職人
とある悪魔の場合

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最強の特異点

『おっ、やったぜメリーちゃん! 一発で繋がった! やっぱりおれたちの愛は不滅だ!』

『はわわ……』


 上空から惚気が聞こえてくる、という意味の分からない状況に、日々打てば返すように突っ込みを入れてきた邦彦くんがいち早く立ち直って怒鳴り返す。


「無事か、京也!?」

『おー邦彦くん、元気元気!』


 イェーイ! と機嫌良く返ってくる返事に、ピースしている彼の姿が容易に想像できる。


 意味が分からない。


 間違いなく彼の声は、私が今し方開けた深淵の向こうからする。


 ()()()()()()()()()だ。



 そんなバカな。


 どうやら京也くん本人が深淵の奥にいるらしい。だが、そんなことはあり得ない。


 中には高濃度の瘴気が満ちているはずだ。


 菜子くんには気休め程度の結界を張ってやったから多少保つだろう。だが、短時間ならばともかく、零感の彼がずっと中にいて正気を保てるなどーー


「つかお前、よくスマホ持ってたな!?」

『まっ暗闇の中で漂ってたらクマさんが持っていたと思しきスマホを発見しました』

「私のスマホー!?」


 小娘が絶叫する。


 通信手段を入手した京也くんがメリーさんを呼び出したものらしい。


「やってくれたな……!」


 先ほどから穴を閉じようとしているが、内からの力に阻まれて閉じることができない。


 断ち切ることは許さないとばかりに、操り糸を辿って逆に私の力を食いつぶして穴を維持している。


(メリーさんーー否、大鬼の方か!?)


 咄嗟に、こちらを見下ろす鬼の面を仰ぐ。


 今まで怒りを振りまいていたはずの大鬼が、初めて頬を吊り上げるのを見た。



 ぞくり、と背筋が冷える。



 やられた。


 私が次元に穴を開けたのを見計らって京也くんを見つけたのはメリーさんだろう。そして鬼は好機を逃さなかった。


 どうして忘れていたのか。

 この鬼は茨木童子。

 切り盗られた腕を取り戻すために仇を追い縋った執念深い鬼ではないかーー!



「京也、メリーさん……そうか」


 私の気が逸れた隙に、邦彦くんが「京也!」意を決したように叫んだ。


「頼む、手を貸してくれ!」

『いいよ!』


 何を、とすら聞かずに京也くんは快諾した。むしろ『邦彦くんからお願いなんて珍しいね!?』と妙に嬉しそうだ。


「晴海を迎えに行く! ()()()()()()()!」



 晴海菜子を迎えに行く。


 それはつまり、自らも深淵に飲み込まれにいくということだ。


「できる訳がないだろう!? ふざけているのか!」


 思わず叫んでしまう。


 深淵は無限なる闇だ。

 無尽蔵の鬼の胃袋の中に取り込まれるということだ。


 只人には、本来菜子くんの元に辿り着くことさえ叶わない。




 そのはずだ。


 なのに。




「今の京也なら、できる」


 絶句した。

 なぜそんな風に断言ができるのか。


「夢堂、テケ公! 遠慮はいらねぇ、ぶち上げろ!」


 了解した、とばかりに静くんがサムズアップする。テケテケも鎌を持ち直した。


 邦彦くんは駆け出し、大鬼を大きく迂回して静くんへ向かう。彼が床を蹴った瞬間、静くんの大きな拳が邦彦くんの足の裏を乗せ、そのまま上空へ打ち上げた。


 まるで打ち合わせでもしていたみたいに、鎌が空に閃く。


 交差した両鎌の先に着地した邦彦くんを、刹那、上へ向けて弾き飛ばす。


 人間の跳躍にはありえないほどの高さまで飛んだ邦彦くんは、深淵に向かって手を伸ばした。




 必ず、届く。


 そう信じているみたいに。





 放物線の頂点に到達し、邦彦の体が落下しかけたその時、深淵から伸びたもう一つの手がつかんだ。


『考えてたんだけどさ。キミに頼られるの、もしかして初めてじゃない?』


「……うっせ」


 引き揚げられる中、憮然とした邦彦くんもまた、京也くんの手をしかと握り返したのだった。

次回1月22日7:00に更新します。

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