過ち
それ以降も、京也は俺に絡んできた。
相変わらずの零感で通学路の地縛霊を毎朝蹴散らしているが、俺が河童に絡まれていると聞けば、「見たい! 一緒に帰っていい!?」と興味を示した。
他の連中は遠巻きにしているのに、物好きな奴だと思ったものだった。
そんな京也に、俺は救われていたんだと思う。
他の誰に何を言われても、もう何も気にならなかった。
たとえ誰も信じてくれないとしてもたった一人信じてくれる人がいる、という安心感が俺を強くした。
だから、気付かなかった。
「ドッヂボールしようぜ!」
「おい、京也どうする?」
「はぁ? あんなヤツ放っておけよ!」
「なあ。アイツの上靴隠したって本当?」
「トイレのゴミ箱に入れてやった」
「ヤベー! あはは!」
「今頃必死で探してんじゃねぇ?」
「いいじゃん、アイツ最近変なことばっかり言うし」
「あぁ、『唐傘おばけは本当にいる!』ってやつ?」
「マジな顔して突っかかってくんの、バッカみてぇ」
「うぜー」
初めてそんな会話を耳にした時は、息が止まった。
連中が俺には手を出してこなかったから、油断していたんだ。
もちろん、じいちゃんに度々鍛えられていたから、喧嘩を売られたら買った上で完勝する自信すらあった。
だけど、今にして思えば俺は目付きが悪かったし体も大きな方だったから、そう、見た目が強そうだったから、標的にされなかっただけだったのだ。
何で思い至らなかったんだ。
あいつらにとって俺はホラ吹きであり、嘘吐きは悪であるということを。
自分たちより弱い悪を見つけた時に、自分こそが正しいと信じた連中が悪を嬉々として叩き潰そうとすることを。
一人教室で、落書きされた机を消しゴムで消そうとしていた京也を見た時、俺はたまらず京也に話しかけていた。
「お前、おばけがいるなんて言うの、やめろよ」
俺なんかに関わるから、あんなことを言われるんだ。
『普通』に生きてりゃ、京也はむしろ友達の多い方だったはずだ。以前のコイツは明るくて話が好きで、グループの盛り上げる役だった。
アヤカシなんて、信じさえしなければ。
あの日、唐傘おばけなんて見なければ。
次回12月25日7:00に更新します。
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