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◆高校生(=世界一おバカな生き物)による学校の怪談 【旧:うちの学校はおかしい】  作者: 駄文職人
照間邦彦の場合

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初めての友達

 照間家最大の奇跡は、トラブル吸引体質の母さんが一般人の父さんと結婚したことだ、とじいちゃんは語る。


「お前は母さん似で見なくていいもん見えちまうから、将来苦労するだろう。せめてお前には、ちゃんと『普通』に生きていくためのすべを教えてやらんといかん」



 そう言って教え込まれたのが喧嘩のやり方ってどうなんだよ、じいちゃん。いや、役に立ったけども。


 拳の握り方、木刀の振り方、啖呵の切り方、一通り教えられた後に口酸っぱく叩き込まれたのは「絶対に人に力を向けるなよ」という教えだった。


「アヤカシは加減を知らん。だから、多少力技を使ってもいい。少なくとも『喧嘩なら勝てる』と思っているモンを恐れることはなくなる。

 だが、人間相手はダメだ。人間は他人の恨みを自分のもんだと勘違いして伝播させることができる生き物だ。世間じゃ、大して口もきいたことのないヤツにいつの間にか憎まれてるなんてザラでな。気が付きゃ周りが敵だらけなんてよくある話だ。だから恨みを買うな、敵意を向けるな。そうすりゃ『普通』に生きられる」


 ガキの頃はじいちゃんが何を言っているのかさっぱり分からなかった。



 人を傷付けてはいけません。

 人の嫌がることをしてはいけません。


 そんなの、園児だって知っている。人間社会を生きる上で弁えるべき絶対普遍のルールだ。




 だから、どれほど嘘つき呼ばわりされたって俺は絶対に手を上げなかった。


「くにひこくんってオバケ信じてるんでしょ?」

「何それ、ダッセー!」


 見えないヤツには見えない。仕方がないことだ。

 最初は信じてもらおうと躍起になっていた俺も、いつしかそう揶揄われても何も言い返さなくなった。


 俺にはみんなには見えないモンが見えている。


 だから、みんなと見ている風景を共有できないと諦めと共に悟ったのは、小学生になる前の頃だ。


「そんな顔しないで、邦彦。あなたにも必ず、あなたのことを理解して仲良くなれる人が現れる。そういう人を大切にしなさい」


 んな奴そうそういる訳ないだろ、と思っていたのだが、理解してくれる人は案外早く俺の前に現れた。



 唐傘おばけがボール狩りをしていた頃、他の連中にボール泥棒だと思われていたのが癪で奪い返しに行った時のことだ。


 同じように被害に遭っていた京也のサッカーボールをついでに取り返してやったはいいが、怖がられては面倒だと玄関先に置いて帰ったら、その日の内に京也の奴が俺ん家に突撃してきた。


「くにひこくん、一人でボールとりかえしにいったの!? ズルい! おれも行きたかったのにー!」


 なんでいっしょにつれてってくれなかったの!? とめちゃくちゃ文句を言われた。


 事情を聞いた母さんは大爆笑してたな。それから、京也を家に上げて菓子とジュースを機嫌良く振る舞っていた。


「ねぇ、君はアヤカシが怖くないの?」


 尋ねる母さんに、京也はクッキーをむさぼりながら満面の笑顔で答えたのを覚えている。


「ぜんぜん! おれ、ようかいとおともだちになりたいんだ!」


 だが、京也は唐傘おばけすら、ただのビニール傘が跳ねているようにしか見えていなかったらしいのだ。一本足の代わりに腕が生えていたことも、口から長く伸びていた二又の舌も見えていなかった。


 こいつには、全く霊感がない。

 

 にも関わらず、アヤカシと友達になんかなれる訳ないだろ、と俺は言えなかった。




 一切アヤカシが見えないにも関わらず、心の底から信じている奴に、この時俺は初めて会ったのだ。

次回12月24日7:00に更新します。

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