状況確認
シャリン
シャリン
「黒名先輩が守り神と喧嘩中で? クマは見つけたけど行方不明になって? 京也がいかにも怪しい部室棟に特攻したって?」
「は、はい……」
「何やってんだよアイツは」
「『前からあの部屋に入ってみたかったんだ!』と申されまして」
「誰か止めろよ。ったく、こっちに引き込まれたのは委員の連中だけじゃねぇのかよ……それで? 巻き込まれた二年の一般人は?」
「一人は影に吸い込まれて……もう一人は京也さんと一緒に部室棟に飛び込んでゆかれました……」
「気違いが他にもいたか」
どうなってんだ、うちの学校は。
シャリン
横から振り下ろされた鎌を、俺は箒の柄で叩き落とす。
「だー! ウゼェな! 会話の最中に斬りかかってくるんじゃねぇよ! おい結女、ちゃんとコイツ抑えとけ!」
「わたしのせいですか!?」
テケテケの野郎、ここぞとばかりに鎌で襲撃してきやがる。
箒で適当に相手をしているが、面倒ことこの上ない。
聞けば俺(箒)相手に引き分けたのが納得いかなかったらしく、武者修行するためにわざわざ異次元側に飛び込んだらしい。
箒の何が悪いんだ。長さ、軽さ、安全性共に申し分ない武器なんだぞ。何より、クラスに二、三本は常備されているという使い勝手の良さが最高だ。一本折れても予備が用意されているのはありがたい。
いや、テケテケはどうでもいいんだ。
結女と夢堂に話を一通り聞き終えた俺は、想定し得る最悪の事態が起きていることを悟った。
「晴海には誰も会ってねぇのか」
舌打ちが漏れた。
京也のヤツは、まあ多少放っておいてもいい。思考回路は時々意味が分からんが、アイツはあれで引き際は心得ている。
問題は、晴海だ。
先日の晴海の姉ちゃんの件といい、黒名先輩が変な策を弄している節がある。
無事だといいんだがな。
「よし、順番に解決していくぞ。まずは屋上だ」
「京也さんとメイコさんはいーんですかっ!?」
「もう一人はともかく、京也は自力で帰ってくるだろ。それに、部室棟のありゃ近付いたヤツを手当たり次第に襲いかかっているだけだ。足に考える頭はねぇ、無視でいい」
うちの学校の守り神は、体と足を切り分けて地中に埋めた。今は封印が解けてしまったがために体を探し求めているが、足は追いかけてくるほど賢くない。
問題は、学内の鬼を使役し、人を喰うために襲っている上の本体の方だ。
屋上に移動しようとして、腰を抜かしている結女に気付く。顔色も悪いだろうか。
理由は背中にくっついているヤツが自重なしに暴れ回っているからだが。
俺はテケテケを睨みつけた。
「おい、生気を吸いすぎだ。宿主に迷惑かけんな」
流石に苦言を呈すると、テケテケはようやく鎌を振り回す手を止めた。
今やっと気が付いたとばかりに結女を見下ろし、包帯まみれの頬を指で掻く。
だが、お人好しはパタパタと手を振って「手伝ってってお願いしたのはこちらなので!」と恐縮するテケテケに応対している。
自分に取り憑いているヤツに下手に出る必要はねぇと思うんだが、そこはスタンスの問題かも知れん。なんだかんだ結女のヤツ、同居人とは上手くやっているようだ。
しかし、へばっているヤツをここに置いていく訳にもいかない。どうしたもんかと考えていると、夢堂が進み出た。
「問題ない。己が連れて行こう」
おぉ、夢堂が喋ってる。
いつもは「ム……」としか話さないヤツなのに、ちょっと感動ものだ。
「千鶴さんは誰とでも仲良くなれる、稀有な方です」
結女のことを、晴海はそう評していた。
女子会など縁がなさそうな晴海のヤツが、「先日千鶴さんとカフェへ行って参りました」とドヤ顔で報告してきたことがある。前から興味はあったが行く相手がいなかったらしい。
「黒名先輩も千鶴さんの協調性の高さを認めておられましたしね。外面の良さは、逆に人間関係を浅く広くしてしまいますから、千鶴さんは『親友ができない』と嘆いておられましたが」
反対に、誰とでも良好な関係を築くことができるということは長所でもある。少なくとも、夢堂やアヤカシ相手にも通用するのは大したものだ。
ちなみに、話の流れのまま「今度邦彦くんも一緒に行きませんか」と晴海に誘われたが丁重に断っておいた。なぜ甘ったるいパフェをわざわざ食べに行かねばならんのだ。聞いているだけで胸焼けがしてくる。
「シズさん! お姫様抱っこはっ、さすがにっ!」
「嫌か」
「スカートの中が見えるのでマズイです!」
一応、今からボス戦なんだがなぁ。
わたわたとおんぶに切り替えようとしている二人を眺めながら、「緊張感ねぇなぁ」と俺は呆れたのだった。
次回12月22日7:00に更新します。
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