参戦
京也さんとメイコさんが、部室棟の中に入って、ずいぶん経った。
「キリがない…っ!」
切り払った影の向こうから、また別の影が鉤爪を閃かせる。
終わりが見えない。
その事実が、疲労と絶望感を積もらせる。
幸いなのは、テケテケさんがまだまだ戦意旺盛だということか。
背中を預けていたシズさんが、飛んできた部室の扉で影を散らす。大きな肩を上下させながら、呻いた。
「一度、退く……!」
「は、はい!」
まだ二人が出てくる気配がない。スタミナ切れはマズいので、体勢を立て直した方が良さそう。
なら、撤退のための隙はわたしが作る。
「テケテケさんっ!」
合図をすると、テケテケさんは包帯まみれの顔で口の端を吊り上げた。両手の鎌を持ち直すのが見える。
わたしも構えた。
「行きます! 必殺・千枚斬りーー!」
裂き乱れる。
滅茶苦茶に鎌が振り回される度、斬撃が飛ぶ。軌跡が虚空をも裂く。
明らかに鎌の間合いの外の影にまで斬撃が届いているが、細かい理屈はわからない。
とにかく、テケテケさんが絶好調だということは分かった。影を粉砕する度に、わたしの背中からテケテケさんのヒャヒャヒャ! という哄笑が響いている。
弾幕が開けて、道ができる。
「今の内に……あ、あれ?」
シズさんを振り返ろうとして、尻餅をついた。
足に力が入らない。
どうして。
「! 千鶴っ!」
シズさんの焦った声がする。
千々に切られた影が一本ずつでは太刀打ちできないと一か所に集まり始めていた。影が編み上げられ、大きな足を象る。
テケテケさんは鎌を構えたが、無理だ、と思った。
あんなに大きなモノ、テケテケさんでも斬れない。
「あ……」
影が上からわたしを押し潰そうと迫る。
逃げられない。
わたしは、ぎゅっと目を閉じた。
わたしが潰される、その瞬間は。
「うちの後輩に何してやがる」
来なかった。
わたしがそっと瞼を上げるのと、巨大な足が真っ二つになって地面に落ちていくのが同時だった。
目の前に立ちふさがる後ろ姿に、わたしは泣きそうになる。
「邦彦さぁん……」
邦彦さんは半壊した部室棟を見やり、次にわたしたちに目を移して。
「おい、簡潔に説明しろ。一体何がどうなってるんだ」
わたしの後ろのテケテケさんの姿に、物凄く渋い顔を作った。
ようやく会えた後輩がなんかヤベェもん背負ってる。
次回12月19日7:00に更新します。
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