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◆高校生(=世界一おバカな生き物)による学校の怪談 【旧:うちの学校はおかしい】  作者: 駄文職人
二葉メイコの場合

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名無しの矜持

 何かがひび割れる音がした。


 内圧をかけられて少しずつ亀裂を広げていくガラスのような、徐々に取り返しのつかなくなっていく音だ。


『おや、時間切れですか』


 女の声は落ち着いていた。


 感情が欠落していて、慌てている様子など全く想像がつかないのだけれど。


「一体何が起きてるの……?」

『時間稼ぎのために張った黒名先輩の結界が限界を迎えたようですね。鎖で縛り付けていても、そう長くは保たない……』

「ヤバいじゃん!?」


 ここにはナニかを封印してあった。


 本体が出てこないのは結界とやらのお陰だったとすれば、このままでは封印からナニかが解き放たれるということだ。


 表にいる千鶴たちが危ない。


『ふむ、時限装置をつけるとは。黒名先輩も相当勝負を焦っていると見えますね。……となると、私のやるべきことは』


 女は長く息を吐いた。








『花は散るもやむなし……致し方ありませんか』







 不穏な言葉の、真意を聞き返すより前に『名も知らぬ誰かさん』と私を呼んだ。


「な、何よ」

『先程も言いましたが、貴女がジョーカーです。だから、思いっきり暴れてください。それが現状を打破する一番の方法です』

「暴れろったって……」



『ヒナセさんは、必ず生きています。だから、二人でご無事に帰還してください』



 言い返そうとしていた言葉を飲み込む。

 彼女のそれが、切実な願いのように聞こえて。


『ふふ。貴女は、私の好きな人にそっくりです。友達思いなところなどが、特に。だから、どうにも他人のようには思えないんですよね』

「あ……」

『ご武運をお祈りしております』


 女の声が遠くなっていく。

 ゆっくり会話を楽しむ時間ももうないということか。


「私……! 名前、メイコ! アンタは!?」

『通りすがりの美少女Aです』

「ふざけんな!?」

『ふざけていませんよ。あの人なら、そう言えば分かります』


 私に名前を教えてくれないのは、私が責任に感じないようにするためか。


 私の記憶に、残らないようにするためか。


 ずるい、と思った。

 なんで私の周りの連中は、そうやって消えていくんだ。


『邦彦くんに会ったら、お伝えください』








『私のことを、どうか助けないでください、と』


 どうして見えないはずの視界に、ヒナセの最後の姿が目に浮かぶんだ。






 ゴゥッ、と下から吹き上がる豪風に、私の体は吹き飛ばされた。

次回12月17日7:00に更新します。

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