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◆高校生(=世界一おバカな生き物)による学校の怪談 【旧:うちの学校はおかしい】  作者: 駄文職人
成田ヒナセの場合

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ぼくのヒーロー

 ぼくにとって、メイコちゃんはヒーローだ。


 ヒロインじゃないのかと言われそうだけれど、残念ながらヒロインでは全くない。メイコは悪役に拐われて、助けを求めるような可愛らしい女の子の役は似合わない。


「は? 誰がアンタに助けを求めなきゃならないのよ」


 仮にメイコちゃんがヒロインだとしても、そう言ってのける彼女の姿が目に浮かぶ。




 高校に入学するまで、ぼくは頬を染めて言い寄ってくる女子という生き物が苦手で仕方がなかった。


 容姿が人より整っているというだけで女子から幾度もラブレターなるものをいただき、断れば女の子を泣かせたと責められた。そうした状況が続いて、思春期を迎えた辺りから妬んだ男子からも疎まれ始めた。「顔だけはいいから」と揶揄されたことも数知れない。


 所詮人は外面でしか判断しないのだと世の中に落胆していた。


 そんな高校生活を始めてすぐのある日、友達を作る気になれなくてぼくが一人で小教室で弁当を食べていると、メイコちゃんがやってきた。


 ぼくを見るなりめちゃくちゃ嫌そうな顔をされたのが、ひどく新鮮だった。


「おい、ここは私が先に見つけた場所だぞ」

「あ、ごめん……」


 小教室は十人程度しか入らない、少人数授業専用の部屋だ。机の列は二列しかなく、部屋そのものも他の教室の半分ぐらい狭い。


 だというのに、窓際にいたぼくをひと睨みした後、メイコちゃんは廊下側の席にドスンと座り弁当を広げ始めてしまった。


 困った。外に出ようにも、彼女の真後ろを通らなければならなかったからだ。


 この時のぼくは女子恐怖症というほどに、女の子に怯えていた。不用意に近付いてぼくの顔をまじまじ見た彼女に目を付けられては困る、と本気で心配していたのだ。


「それ、なんてゲーム?」


 こちらなど全く意に介さず、メイコちゃんはぼくのスマホを指差した。


 先ほどまで部屋で一人だったから、音を出してスマホゲームをしていたのだが、それが彼女の気を引いてしまったらしい。イヤホンをつけていれば良かったと後から後悔しても遅い。


「も、『桃色ビート』……」

「ふぅん。最近リリースされたやつ? CMでよくやってるゲームだよね」


『桃色ビート』はいわゆる音ゲーだ。上から落ちてくる音符をリズミカルにキーボードを叩いて消していく、よくある暇潰しゲーム。

 上手く音符を消すことができると、登場人物たちが現れて応援してくれたり一緒に歌を歌ってくれたりする。豪華な声優陣を採用したこのゲームはリリースして数日だが順調にプレイヤー数を伸ばしていると聞く。


「声が良い……」

「えっ」


 ドキッと肩が跳ねた。


 だけど、メイコちゃんは自分のスマホをいじって「これか」とさっさとゲームをインストールを始めていた。


「これ、紹介特典とかある?」

「あ……ガチャの無料チケットとかあった、と、思う」

「はっきりしないな。あ、ユーザーコード聞かれた。ねぇそっちの画面表示してよ」

「ち、ちょっと待って!」


 画面を覗き込もうとする彼女から少しでも距離を取るために、ゲームを開いたままスマホをメイコちゃんの方に押しやった。


 彼女が勝手にぼくのスマホに指を滑らせるが、ぼくはそれどころではなかった。無意識に手で顔を隠している自分がいた。


 せっかく告白したのに振るなんてひどい、と涙する子がいた。

 絶対に許さない、と恨み言をぶつける子がいた。

 ならばと試しに付き合ってみれば、貴方は私のことを全然分かってくれないと不満ばかりを押し付けられた。


『格好いい彼氏』を自分のものにしたいという支配欲と優越感に眩んだ目が、ギラギラと突き刺してくるのがぼくは何より恐ろしい。


 ところが、しばらくしてユーザーコードを入力し終えたメイコちゃんがぼくのスマホを返す。


「はい。アンタにも特典」

「あ……」

「なんかアイテムもらえたみたいだよ。ねぇ、さっき喋ってたのコイツ?」


 恐る恐る彼女を見上げたが、もう彼女の興味は新しいゲームに移っていた。起動したばかりのタイトル画面にズラリと並んだ二次元のイケメンたちの一人を指差している。


「ロズベールのこと?」


 自信満々な俺様系イケメンキャラだ。

 普段はみんなを振り回す傍若無人な性格なのに、実は誰よりも影で歌の練習をする二面性が人気らしい。


 そんなことなど知らないはずのメイコちゃんは「ロズベールっていうんだ」と熱心に赤髪の彼を目で追っている。


 全くこちらに関心を示さない様子に、ぼくはようやく警戒心を解いたのだった。


「こういうキャラが好きなの?」


 女の子と極力会話を避けてきたはずなのに、思わず尋ねていた。


 顔に興味を示さない女子という存在に、ぼくは信じ難い気持ちだった。

 同時に、ぼくにとってそれは希望でもあった。人は外見より中身、を地で行く珍種など本当にいるのだろうか。



「んー。顔っていうか、声がタイプだった」




 ぼくにとって幸いだったのは、メイコちゃんが声から入る系のオタクだったことだ。

次回12月5日7:00に更新します。

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― 新着の感想 ―
とても面白かったです! キャラ同士の掛け合いが楽しく、思わず笑いながら読ませていただきました。 登場人物それぞれの視点で描かれているので、キャラクターの魅力がしっかり伝わってきますね。 特に邦彦と京也…
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