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◆高校生(=世界一おバカな生き物)による学校の怪談 【旧:うちの学校はおかしい】  作者: 駄文職人
成田ヒナセの場合

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誓い

 それなりに高い放物線を描きながら落下してきたと見える。もし屋上から落ちたのであれば無事では済むまい。


 にも関わらず、花壇の茂みに落ちた人影はむっくりと起き上がった。


「……くっそ、解き放ってやろうというのに何てヤツだ」


 頭を撫でながら立ち上がったその人は悪態をついていた。壁に頭をぶつけてしまったみたいな反応、ぼくもメイコちゃんも絶句するに十分だった。


 いや、絶対死ぬ高さでしょ……?


 隣から千鶴ちゃんと夢堂くんが、人影に向かって走り出す。


「伊東先輩っ!? 何やってんですか!?」

「……あ?」


 乱れた眼鏡を指で押し上げ、伊東先輩と呼ばれたその人はようやくこちらに気が付く。


「あぁ……結女と夢堂か。お前たちもメールを受け取っていたから引き込まれたのか」

「だだだ、大丈夫ですか!? 派手にぶっ飛んできましたよ!?」

「問題ない」


 問題ないんだ……。どうなっているの、この学校。


 花壇から降りてきた伊東先輩は、ぼくたちをぐるりと見回す。


「これだけか?」

「は、はい! あれ? 黒名先輩もご一緒ではないんですか?」

「お嬢は……」


 その時、ようやく伊東先輩は顔を歪ませた。

 とても、苦しそうに。


「……お嬢は、無事だ。俺が逃した」


 その時、寡黙を貫いていた夢堂くんが口を開く。






「黒名先輩はどこですか」





 バリトンが厳しく張り詰めていた。


「この現象は、先輩方の差し金でしょう」


 夢堂くんの言葉に、伊東先輩の目が細められる。


「何が言いたい?」

「黒名先輩は、学内が荒れるかもしれないと。こうなることを予期していたのではないか」

「……夢堂のくせに、今日はよく喋るじゃないか。だが俺たちをここに転移させたのは、屋上の守り神だ。勘違いしてもらっては困るな」


 守り神?

 ここの学校、屋上に守り神がいるのか?


 ぼくはメイコちゃんを見たが、メイコちゃんも首を振る。ぼくも聞いたことがない。


「守り神は、自分を害する存在を察知して力を蓄えようとしたのだろう。浅はかだ、その程度でお嬢を止められる訳がない」

「? あの、話が見えないんですが……」


 首を傾げる千鶴ちゃんに、伊東先輩は肩をすくめた。


「単純な話だ。守り神は生け贄を求めた。だから俺たちはここへ呼ばれたんだ」

「生け贄って……わたしたち!?」


 生け贄。

 ぼくはそれですとんと理解できた。


 ここは箱庭の中で、ぼくらは放たれたうさぎ。いずれは食べられる予定で生簀いけすに入れられた魚。


 食べるのは、屋上に住むという守り神。


「黒名先輩は何をやる気だ」


 敬語をかなぐり捨て、押し殺した声で夢堂くんは問う。その大きな拳が音が鳴りそうなほど握りしめられていた。


「お嬢は、夢を叶えるつもりだ」

「夢だと?」

「そうだ。お嬢は神を殺したがっている。そして俺はお嬢を命に替えても守る。もう何年も前からそうすると決めていたんだ。たとえ……捨て駒にされたとしても」

「なぜ、そこまで」

「決まっている。俺が、お嬢に救われたからだ。お嬢こそ俺の希望そのものだ。お嬢のためなら、俺は悪魔にだって魂を売る」


 まるで自分に言い聞かせているみたいだ、と思った。慣れたように口にする。

 これまで何度も何度も刻みつけた戒めみたいに。






「俺が、お嬢を神にする」






 

 聞いていて、あまりにも痛々しい誓いだった。






「ふざけるなよ」


 メイコちゃんの一言が、一刀両断した。


次回12月3日7:00に更新します。

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