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◆高校生(=世界一おバカな生き物)による学校の怪談 【旧:うちの学校はおかしい】  作者: 駄文職人
築城京也の場合

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行き詰まった先に見える、蜘蛛の糸に似たアレ

【警告】ちょっと暗い話が続きます。苦手な方、心が弱っている方はご注意ください。

 昔から妖怪大図鑑を擦り切れるまで何度も読み返すような子どもだった。

 覚えがいのある沢山の種類、ユニークな特徴、ゾッとしてしまうようなほんの少しのスリル。


 実際にいたらと想像するだけでも楽しかった。

 もし妖怪たちとお友達になれたなら。

 大人たちは驚いてひっくり返るかな?

 お菓子を分けっこしよう。

 一緒に鬼ごっこして遊ぼう。


 そんな子どもの夢想は、邦彦くんに出会うことで現実になった。


 絶対に叶わないはずの夢が、叶うかもしれない夢に変わった。


 あの日の高揚感が、おれの人生を変えたんだ。


 だけど、夢の時間は束の間だった。


 サッカーボールを盗られた次の日、ゴムボールを握りしめてあの空き地に向かったおれを待っていたのは、猫じゃらしが全て伐採されて家の土台が組まれた工事現場だった。

 作業員の人に聞いても、昨日は掘削作業をしていたからここが猫じゃらし畑だったはずがないと言われた。


 おれがあの唐傘おばけの空き地に辿り着くことは二度となかった。




 邦彦くんは、ずるい。


 おれには見えないモノが見えてうらやましい。邦彦くんがそれで苦労しているのを知っていたけれど、それでもおれはいつも心の中でそう思っていた。


 そうやって澄ました顔をして、おれが会いたくてたまらない妖怪たちと毎日顔を合わせているんだ。ずるい以外の何なんだ。


 仕方がない。邦彦くんは特別なんだ。


 おれは一般人だから、邦彦くんの見ているモノが見えない。どれほど妬んでも、おれがその力を手に入れることはない。


 でも、もし。

 おれにも、おばけや妖怪が見えたなら。

 たった一度でもいい。何かの間違いでも構わない。





 邦彦くんと同じ世界を、一緒に見ることができたなら。
















 おれは、邦彦くんと仲直りすることができるのだろうか。

















 頭が重かった。


 学校に行って、帰るだけ。それだけなのになぜかおもりを背負っているみたいだった。呼吸することすら億劫になる。


 いつからこうなったんだっけ?


 ドブに落とされて濡れた靴を引きずりながら、おれはうつむきながら家路を歩いていた。


 時刻は、夕暮れ。

 黄昏時。


 そういえば、あちらの世界とこちらの世界が交わるのはこんな時間帯なんだよな、とぼんやりと思う。


「何やってるんだろ、おれ……」


 意地ばかり張って、格好悪い。


 違うクラスなのに今でも時々気にした様子でおれを見てくる邦彦くんの視線を避けてまで。


 もっと要領の良い人なら、クラスメイトと足並みを揃えることができるのだろう。

 妖怪が好きだとしても、それを上手く隠して友達と笑い合うことができる人もいるのだろう。

 好きなものを好きだと人に言えなくても、自分の中でだけで楽しんで完結させて、人に迷惑かけないようにする道だって選べたはずだ。


 嘘をつかず正直にいたかっただけなのに。

 どうしておれは、上手く生きられないのか。


「死にたい……」


 無意識に呟いた自分の言葉に、自分で驚いた。


 言葉が、まるで泥水に浸したハンカチのように自分の中に黒く染み渡っていく。


 気が付くと、おれは空を見上げていた。

 目を刺すような夕陽の向こう。





 いつも登下校途中に目の端に映っても気にも止めていなかった鉄塔が、その時いやに輝いて見えた。

 

次回11月21日7:00に更新します。

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