本当じゃないこと、あるいは虚構を口にするアレ
昼休み、他の友達はドッヂボールをしにグラウンドに出ていたから教室には俺たち以外に人はいなかった。
お前、おばけがいるなんて言うの、やめろよ。
まさかそんな言葉がよりにもよって邦彦くんから出るなんて思いもしていなかったおれには、まさに青天の霹靂だった。
「なんで?」
「なんでって……信じなくたっていいだろ、お前は」
見えないのに、と。
邦彦くんが、おれとの間に線を引いた。
ショックだった。邦彦くんとおばけの話をするのが、おれは大好きだったんだ。邦彦くんの突き放した言い方に、かっと頭に血が上るのが分かった。
「見えなかったら、信じたらいけないの」
「いや」
「邦彦くんは、おれに嘘を教えたの」
「そうじゃない、けど」
「じゃあいいじゃん。おれが何を信じたって、邦彦くんには関係ないじゃない」
「そういう問題じゃない!」
おれは口を閉ざした。急に大声を出されたからじゃない。
突き放した邦彦くんが、ひどく痛そうな顔をしていたから。
「お前まで、一人になることないだろ……」
優しいおれの友達は、おれがハブられているのに責任を感じているらしい。
それこそおれの問題だ。邦彦くんには関係ない。
なのに、どうしてそんな顔をするの。
君が傷付く必要なんて何もないんだ。
君は何も間違っていない。
「悪い、俺が間違ってた」
君が謝る必要なんてどこにもない。
「俺が変な目で見られるのは、構わない。お前まで巻き込むなんて思ってなかったんだ」
やめてよ。巻き込まれたなんて思ってない。
「俺が変なこと言わなきゃ良かった」
違う。
「母さんの言った通りだった。みんなの輪を乱すようなことをしたらいけなかったんだ」
違う。
「他の奴らにとっては『ない世界』なんだ。それで良かったんだ。それを壊そうとするから反感を買う。これからは……俺も気を付けるようにするから」
「もうおばけの話をするのはやめるってこと……?」
君には見えているのに。
いないフリをするのか。周りに合わせて、自分の世界を、自分自身をも騙して。
「その方が、みんなにとって平穏なら」
それはーーどれほど苦しい道のりだろう。
「そうすりゃ、きっとみんなも変な目で見ることはなくなるから。最初っからそうだった俺はともかく……京也なら……。だから、京也も……」
「邦彦くんのうそつき」
驚いた顔を向けられる。
なんでおれが怒らないと思ったんだ。
邦彦くんは、バカだ。
次回11月19日7:00に更新します。
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