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うちの学校はおかしい  作者: 駄文職人
序章
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序章

 教室の半ば開いた窓からずるり、とそれは入ってきた。


「それ」とは何かと問われれば、この世の恨み憎しみを混ぜ合わせたような黒としか形容できない。

 形も不鮮明なただの黒の塊は、しかし左右から突き出た手と確かな意思をもって教室へと侵入した。床へびちゃりと落ち、赤子のようにもがきながらゆっくりゆっくりと大きく育つ。


 ひっと声を上げたのは誰だったか。


 授業の乱入者に気が付いた生徒たちはあまりの光景に一瞬かたまり、ぽかんと口を開けて「それ」を見つめる。

 これが育ち切るとどうなるのか。

 答えは誰にもわからない。「それ」はすでに二メートル近くにまで成長している。

 先生もいつの間にか授業の手を止めていた。逃げるべきか無視をするべきかを天秤にかけている。

 ついに「それ」に近い席の生徒が耐え切れずに椅子を蹴って立ち上がった。椅子の倒れるけたたましい音が、緊迫した教室内の空気を破る。


 それは一瞬の間。

 女子生徒の何人かが悲鳴を上げようと息を吸い込む。


 しかしパニックが弾ける寸前、がらりと教室の扉を開ける者がいた。


「失礼します。……ああ、やっぱこっち来てたか」


 やぶにらみと言うにふさわしいほど鋭い目つきの男子生徒が「それ」を発見するなりつかつかと歩み寄った。

 そして足を振り上げ、


「ふんっ」


 そのまま「それ」を窓の外へと蹴り出した。


 落下していく黒い塊。

 遠くで何かが潰れる音がした。思わず窓を覗き込んでしまった何人かが口を押さえて顔色を真っ青にしている。


 教室から不審物を排除した男子生徒は窓をぴったりと閉め、呆気にとられている生徒たちを振り返った。


「不用意に窓を開けるなよ、新入生。うちの学校、色々入ってくるからな」


 警告に、先程椅子を倒した生徒がこくこくと頷いた。

 自分の任務は終わったとばかりに男子生徒は踵を返すと、「失礼しました」と礼儀正しく頭を下げて教室から去っていった。




 ここ、瑞明高等学校は「なんか出る」と巷で有名である。


 あまりに出すぎるので学内には有志の「オバケ処理班」が、時々自主的にパトロールを行っていたりする。

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