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ラッキーカラーは黄金ですか?


時は2時間ほど遡り。


―校門前―


「…いやいやいや、門デカすぎるだろい!!!」


1人の少女がそこにはいた。


「だぁーかぁーらぁー、門デカすぎるだろ!!」


大きすぎる立派な門にツッコんでいる。


「…はっ!こんな事してる場合じゃなかった!!職員室を探さないと。はぁ、今日からここの生徒かー…、慣れそうにないな」


彼女は高等部から入学するらしい。 しかもその身をつける制服から学園の特待生であることがわかる。


特待生かどうかは、制服によって判断出来る。

学問での特待生は黒を基調とした制服で、右胸の所に百合の花をかたどった金色バッジがついている。

運動での特待生は、紺色を基調とした制服で、バッジは薔薇の形だ。

また学問、運動、両方での特待生がいる。その生徒数は少なく、その生徒が着る制服は白を基調とした制服、バッジは牡丹の形だ。


花を象るバッチになぞられ、学問コースの生徒をリリー、運動コースの生徒をローズ、牡丹のバッジを付けたもの、つまり特別コースの生徒を、パオニと呼ぶ。


どうやら彼女は学問、運動両方に秀でた特待生、通称“パオニ”らしい。 白いセーラー服からのぞくカモシカのように綺麗な脚には、ほどよい筋肉がついている。


「何処にあるんだ?…場所知らないじゃん…んー、とりあえず校舎に入るか」


目の前にそびえ立つ、学校とは思えないデカい建物。


「絶対…迷子になる…。絶対」


だだっ広い庭を進んで行く。綺麗に咲いた花が美しい。 すると目の前に入口が見えてきた。


「ここから入るんだよな?…お、おじゃましまーす」


黄金の取っ手を引く。



さあ、学園生活の始まりだ。

特別コース、運動コースには、寮生活が待っているのだ。


「…広。…さーて職員室探すか」


キョロキョロと周りを見渡す。


「あ…。あれっぽいな」


職員室らしきものを見つけ、目の前まで来てみると確かに職員室とプレートに書いてある。


「黄金のプレートって…黄金好きだな~、この学園」


職員室の入口を開け、失礼しまーすと間延びした緊張を感じない様子で職員室に入っていく。


「特別コース?の和泉 棗-イズミ ナツメ-でーす」

「お!来たな!こっちこっち!」


棗にかかる大きな声。 そちらを向くと、1人の男が軽く手を挙げた。


「はーい(うわ、あの先生ホストみてぇ)」


椅子に浅く座り、やる気なくもたれ掛かる男の方へ移動する。


「今、ホストみたーい。とか思っただろ」

「な、なぜ分かった!?」

「思ってたんだな」

「あ」


外見は明るい茶髪、着崩したスーツでホストを思わすものだ。


「まぁ、いい。ここ座って」

「はーい」


勧められたのは白い皮張りの高級そうなソファー。


「(ふかふかだな~)座りました!」

「見れば分かるし、敬礼しなくていいからな?」

「ちぇー、先生ノッて下さいよーう」

「…はいはい、こーかな?」


敬礼をしたけどやる気なく見えてしまう。


「ところでさー先生の名前なに?」

「…影山 心-カゲヤマ シン-だ。君の担任さんだ」

「担任なのか!シンちゃんよろしくね!」

「…うん、よろしくねー」


初対面なのにこの気軽さ。 和泉 棗、恐るべし。


「和泉ちゃんさ、特別コースじゃん?寮に荷物とかもう届いてるからな。あー…、っと…ほい、これ鍵ね」

「棗でいいって。ありがとうシンちゃん」


鍵には和泉 棗とローマ字で書かれていた。これもまた、黄金で。黄金好きかよ。


「棗ちゃーん、俺のことシンちゃんって呼ぶの君くらいだよーう」

「へー。寮って何処にあるの?」

「…」

「シンちゃーん?」

「…聞いてないの?寮の場所」

「うん」

「すぐそこに建ってる宮殿みたいなのだぜ」


影山が指差す方には、窓があり、そこから宮殿が見えた。


「うわっ!本当に宮殿だ!」

「だろ~?棗ちゃん」

「うん!ねぇ、あたしの他に特別コースって何人いるの?」

「えぇと」


指を折りながら数える影山。


「7人?あ、違ぇ…先月から生徒会も特別コースだから…9人かな」

「それだけ?」

「あぁ、だって特別だからな」

「へー」

「…君って、反応薄いとき、とことん薄いよね」

「まーね、ありがとう」

「褒めてねぇよ」


調子がくるうな、と感じる影山であった。


「いや、まぁいいや。えーと、寮には特別コースと運動コースの奴がいる。あぁ、あと学問コースの希望者もいるか」

「けっこう人数いるんじゃない、入りきるの?」

「大丈夫、寮ここだけじゃないし」

「あー、なるほど。金持ちだしね~…」

「まーね」


しみじみと宮殿みたいな寮を見る棗。


「ねぇシンちゃん。なんであたし、こんな早くに来なきゃだったの?何かやる事あるのかな?」

「あぁ…理事長の所にちょっと行こうか棗ちゃーん」

「ん?ほーい」


ソファーから立ちあがり職員室をあとにする。


「理事長室って所に行くからねー」

「ほーいついて行きます」

「はいはい、ついて来てねー」


そのあと、影山は黙り込んでしまったので棗はヒマになってしまった。


エレベーターに乗りこむみ、最上階の10階を影山は押した。


「(10階まであるんだ)」


チン とレトロな音が響く。


「こっちだよー」

「ほーい」


エレベーターから降り右に進むと、


また黄金の扉…、ほんと黄金好きだよね…。


黄金の扉をノックをして、影山です。和泉 棗、連れてきました。とまじめな様子ではなす影山をみて、こんな話し方も出来るんだと思った棗。


『どうぞ』


低い声が向こうから聞こえてきた。


「(若そうな声だな)」




「失礼します」

「失礼しまーす」


ガチャ








「っ、なぁ~つめちゅわぁ~ん!!!!!!」



ドス



「へ!?」


え?


抱きしめられてるんだけど!?



ギュ


力強い!!



「誰だよっ!?離せっ、力強い!!」


「理事長苦しそうですよ~」


え?理事長…??



「いやぁ久しぶりの棗だからなぁ」

「あの、いいから離して下さい」



あたし、こんな人と知り合いだっけ??



「もー冷たいんだから!」




え?キモい。




「理事長、棗が軽く引いてますけど」

「嘘!?ごめんっ離す離す!」


ぱっと離れた理事長。 顔をよく見ると、


「…ヒデ、ちゃん?」


あら。知り合いでした。


「そうっ!!正解!」


「嘘!久しぶりっ!元気そーだな!」

「あはは!相変わらず可愛いな~棗は」

「なんで理事長なんかやってるの?」

「俺の苗字は?」

「えぇと…あ!碧峰!!」

「そーそー」

「なるほど」

「理事長、棗と知り合いなんですか?」

「まぁな…。って、棗を呼び捨てするな!!!」

「ヒデちゃんあたしが良いって言ったの」

「なら、…いいけどっ」


ぷいと影山から視線を逸らすこの学園の理事長、碧峰 英虎-ヘキミネ ヒデトラ-。


学園の皆からは“絶対零度の貴公子”と、恐れられている。…はずなのだか。


「ヒデちゃん、なんか見た目大人っぽくなった」

「そぉかなぁ~」

「うん。だって前は髪の毛金だったし、虎みたいだったもん」

「まぁな、…懐かしいな」

「…うん」

「あの、しんみりしてるところ悪いんですけど。棗に話しなくて大丈夫なんですか??」

「…あ!そうだった!ここ座って。影山はこっちな!!!」

「ほーい」

「(はいはい)」



黒い皮張りのソファーに身を沈める。 ふかふかだな~。


「で、話っていうのはな棗」

「うん」


真剣な顔のヒデちゃん。 そんなに大切な話なの??




「…あ、飲み物何がいい?」



ズルッ!!



「「話しろよ!!」」


「棗にツッコまれたぁ~///………って影山、てめぇコノヤロー!!」

「はいはいヒデちゃん、いいから話してよ!!」

「そうですよ~理事長」

「フンッ!!今から話すもんね!!」


…大人げない。


するとガK…子供っぽい顔つきから、ぱっと真剣な顔つきになったヒデちゃん。


「あのな??棗さー、ほら…強いじゃん?色々とさ」

「ん?あぁ、まぁーね!!」


きっとヒデちゃんはあたしが強いって言われるのか嫌だって思ってる。

でも全然思ってないし、むしろ嬉しい。


「んー、それをかったお願い…というか…お願い??なんだけど」

「お願いじゃん。で??」

「むふふ!」

「理事長ぉ~、ツッコミ入れられて喜ばないで下さいよ」


「…で、お願いって??」


無視の方向で。


「えー、あー……棗………」


珍しく歯切れの悪い様子に、とても頼みにくい事なのだと知らずに身構えてしまう。



10秒程の謎の見つめ合いが終わると、少し苦笑いをしながらヒデちゃんは言った。









「生徒会入ってくれない?」 






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