表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者の影の日記

敬語擬の口調で執筆しています!

苦手な方はご注意下さい。

☆月◎日

常日頃でも人々の往来で賑わっているアルカナディア王国のメインストリートでは、今はいつも以上に、いや、大地が割れる様な大歓声に包まれていた。

人々は皆、街道の端で手に取った色とりどりの花を投げたり、アルカナディア王国の象徴である獅子が描かれた旗を振ったり、思い思いに希望ある未来に願いを込めて騒めいている。

天地を裂くような大歓声を向けられた栄えある人物は4名。

身の丈ほどもある鋼で出来た無骨な斧を持つ大男に、華奢な体をローブで包みいかにも魔法使いですよと言った様な杖を持つ少女、女性を魅了するような笑顔を振りまき胸と膝、肘のみの軽鎧を装備したスカウトの青年。

そして、黄金の髪を持ち意思の強そうな目をした少女。腰には少女には少し大きいだろう剣を吊っている。


…って、ここまで丁寧に説明したっすけど勇者様御一行であるわけっすよ。

戦士に魔法使い、盗賊そして勇者。バランスの取れた中々のパーティーっすな。

んで、俺は何を隠そうその勇者様方をお守りする影ってやつ?

影ってのは勇者様方とレベルが段違いの敵が付近に出た時必死で足止めしたり、雑魚が沸きすぎた時必死で数減らしたり、道間違えそうな時必死で看板建てたりとまあ、必死に何でもやらされるサポート業的な仕事なんすわ。

色々言葉省いたけど王様が言ってたっす。

そんな仕事普通やりたく無いっすけど、俺は何も権力も無い一個人…。ついでに追加するなら、1番下っ端のパシリ的な立ち位置…。抗えず勇者様方の影となってしまいました。しくしく。



☆月○日

王都を出発してから数日。

勇者一行め!

何度魔物に囲まれれば気がすむんすか!

盗賊仕事しろっす!

ある日は、初心者殺しと呼ばれる全身薄緑の頭に鋭い角の生えたウサギのグリーンラピットの群れに囲まれ俺が後ろから数を減らすハメになり、もう面倒で面倒でねって。

数を減らした後も、勇者さん達がグリーンラピットと戦うのを遠目から見守り、危うく彼女らが死にそうになった時は遠くからグリーンラピットにデバフ魔法かけてって忙しすぎるっす!

もう一度言う盗賊よ、なぜお前は笑顔で話しながらラピットの群れに突っ込んだんだ、マジで仕事しろっす!

偵察と警戒がお前の仕事っすよね?!


それだけじゃないっす!

またある日は、立ち寄った地域で田畑を荒らし人々を襲うことで有名なワイバーンの討伐を安受けあいしやがりましたんすよ。

案の定全員死にそうになり、仕方なく敵にデバフだけじゃなく、勇者さんにバフ魔法かけまくりましたっすよ。

挙句の果てに俺のバフ魔法かかった勇者が、

「こ、これは力が漲ってくる…。古の書物にしるしてあった覚醒…このことだったのか…!?」

ですってよ!

だっはー!

何がこ、これは!覚醒キリッ!っすか、唯の俺のバフ魔法っすよー!

覚醒じゃなくて残念だったっすねっ!

大体レベルの差が20もあるモンスターであるワイバーンに挑もうと言うのがアホなんすよ。

勇者さんの仕事は魔王を倒す事であってワイバーンを倒す事じゃないっすよー。

そして盗賊よお前ワイバーンに戦闘仕掛ける時わざと木の枝踏んだっすよね!?

お前あれか?実は味方じゃなくて敵のスパイだった的なあれっすか?



△月☆日

あれからまた数十日、いや数ヶ月がたったっす。

俺の仕事は変わらずにサポートに次ぐサポートっす。必死に毎日勇者達をフォローしてるっす。

そんな俺ですが1つ許せない状況を発見してしまったっす。

いや、前から気づいてはいたんすけど認めたくなくて、認めたくなくて!気づかないフリをしてたんすよ…あ、大事だから二回言ったっす。二回でも足りないくらいなんすけどね。

問題の発見とは、勇者達が野営中に火を付けて心も身体もあったまるスープなんか食してたんすよ!?しかも今日なんて熱した石で作った焼き石の上でステーキ作って食ってたんすけど、なんなんアイツら!

俺の食事と言えば石みたいにかったいパンと同じく鉄の様にかってー干し肉……良くて干し果物がつくくらいっすよ!何この差…泣ける。

勇者達が美味しくその場で狩った魔物の肉汁たっぷりステーキ食べてるよを見ながら歯が折れそうな程固い干し肉をしゃぶる俺…

勇者達に見つかる訳にはいかないからって火まで禁止にされるとは思いもしなかったよ畜生!

こんな仕事辞めてやるぁあ!辞めれないけど!!



▼月◎日

食料の差に泣いたあの日から1年と数ヶ月…

ついに魔王城への旅路も終わったっす。目の前にはおどろおどろしい城がそびえ立ってるっす。見た目の不気味さ通り魔王城なんっすけどね。

いやー、あんな不気味な城にずっと住んでられるとか魔王さんそこだけは尊敬するっす。

俺だったら1日と言わずに出て行きたくなるっすね!

とっと不味い勇者見失うとこだった入り口でウロチョロするだけで何もしなかったのに急に行動しだすとか止めて欲しいっす!意思疎通出来ないから急にも何もないとかは言いっこなしの方向でよろしくっす!


▼月○日

物陰に隠れたり曲がり角で待機したり警戒しながらノロノロと進んで行く勇者一行。

数十歩ほど先にいる敵を曲がり角で待機し出くわすのを何度も回避しているのを見守るっす。

敵の察知は当たり前だけど盗賊主導でやってるみたいっす。

盗賊お前…成長したっすね…。

前はラピットの群れさえ気づけないかったのに…今は立派に盗賊やってるっすよ。

俺感動して視界が滲んで目の前で起こってる事が全く理解できないっすよ!

お前なんで勇者に短剣突き刺そうとしてんすか!?角とか頭に生えてるけど大丈夫っすか?

やっぱあれっすか…仲間に見せかけて実は敵でした的なあれっすか!!

褒めたらすぐこれっすよ!盗賊やっぱお前アレっす!何か上手く表現出来ないっすけどアレっす!

王道すぎて何というか想像ついてたし伏線張りすぎててあーやっぱそうだったか〜的なアレっすな!

って動転してる内に戦闘入ってるっす!

勇者は、盗賊が突き出したナイフを持つ腕を勇者が掴み自身の膝に思いっきり叩きつけたっす!

あっ!盗賊ナイフ離したっす。

盗賊よっわ!盗賊お前警察に捕まる強盗犯並みに弱いっすよ…

盗賊はナイフをあっさり離した後魔法使いに容赦なく勇者ごと魔法撃たれて散ったっす…

ん?勇者ごと!?

魔法使いお前もか…

2回目とか天丼っすわー、何ていうか二体も敵が混じった勇者パーティーとか王家の目は節穴かっ。

…今の無しで不敬罪とか辛いっす。

天丼ネタに呆然としているうちに勇者戦士チームVS魔法使いは終わってたっす。

途中まで魔法使いが押せ押せな感じで戦士ピンチだったんだが、辛うじて生きていた勇者がポーション飲んで全快したらあっという間に魔法使いが不利になって遂には倒してたっす。

盗賊達2人の骸をそっと並べ寂しげな表情の戦士と涙を流す勇者。

その後ろで号泣する俺。盗賊お前何だかんだで気に入ってたっすよ。魔法使いも将来有望そうだったのに…


▼月 ○日 数時間後

2人に減った勇者一行は遂に魔王がいる玉座の間に辿り着いたっす。

一目見た瞬間悟ったっす。

今の2人ではどんだけバフ掛けても魔王には勝てないっす。

見てるだけでも仕方ないっすし、目の前に立っただけで子鹿のように震えている勇者達を無理やりバフ魔法で奮い立たせるっす。

魔王の視線がこっち来た気がするっすけど気のせいっすよね!

バフ魔法で覚醒(笑)した勇者は魔王に飛びかかりましたっす。その後ろに戦士も続く。

しかし!2人は魔王の腕の一振りで吹き飛ばされたっす…

人類の希望がぁあ!人類終わったっす…

その後も勇者と戦士は果敢に挑戦するも魔王の攻撃1つで散っていく。

最後の最後に勇者は雷のレーザーで、戦士は禍々しいオーラを放つ片手剣の剣戟で気絶したっす。いや、死んでないっすよ、多分…

本当に人類終わりっすよーどうすんすかー。

頭を抱えて蹲るしかないっすよー。

バフじゃ気絶解除できないんすけどー。

「何時まで隠れてるつもりだ…強き者よ…」

ぎゃー!何々?誰か他にいるんすか?

あっ、もしかして魔法使いと盗賊が本当は仲間で隠れてたとかっすか!

盗賊お前…

「そこの扉の影でバフ魔法を掛けてたお主じゃ…」

バレてんじゃないすかー、やだー。

威厳バリバリのお声掛かっちゃってるじゃないすか。

「あちゃー、バレちゃってましたっすかー、結構頑張って魔力隠してたつもりなんすけどね」

今まで頑張って隠れてサポートしてきたのに最後の最後でバレるだなんて、不覚っす…

「強き者よ、そなたも我に挑むというのか?」

「いやいや、挑まないっすよ。俺はそう言う立ち位置じゃないっすから!って待てよ」

片手を振りながら拒否を示すも俺は考えたっす。このままここで倒して気絶してる勇者の手柄にしちゃえばいいじゃないか…って。

「やっぱ今の無しっす!挑ませて貰うっす!」

参戦宣言するや否や全力で自分にバフ魔法を掛け、魔王の目の前に躍り出るっす!

魔王も予想していたのか構えをとってるっす。さっきまで俺がいた扉の影に向かって。

「構えの向きがまだまだすね!もう其処には俺はいないっすよ!」

忠告しつつも魔王の首の根元めがけて短刀を振り抜くっす。

身体と別れを告げ宙に浮く魔王の首。

吹き出す血液。

それを華麗に躱す俺。


一瞬で勝負は決まったっす。

この後は偽装工作っすね!

勇者と勇者の剣に魔王の血をつけてっと、あとは死闘をしたように魔王の死体に傷つけて…死体蹴りみたいで申し訳ないっすけど。

オッケー!これで勇者が起きるまで隠れてればいけるっすね!

また「はっ!これは古の巻物に書かれた無意識下のうちに倒してしまう暴走状態…!魔王までもを倒してしまうのか…我が身ながら恐ろしい」みたいな事言うだろうし、騙せるはずっす!

少し楽観視しすぎかもだけど、俺は勇者(のアホさ)を信じるっす!


▷月*日

遂に王都に戻ってこれたっす。

今は勇者の帰還パレード中っす!

俺が倒した魔王なのに勇者がチヤホヤされるって何か凄く納得いかないっすけど、真実を話せないからには仕方ないっすよね。

格差辛いっす。

あ、魔王戦の後は予想通り勇者が勘違いしてくれて大丈夫だったっす。戦士は多少訝しんでいたっすけど、勇者騙せたし結果オーライっす!

王様には一応報告義務があるから言っといたし、完璧っすね。

世界に平和が訪れたっなんてね!

訪れたと言えば遂に俺に後輩が出来るんすよ!

本当に楽しみっす!1番下じゃなくなるのなんて夢にまで見るほど切望してたっす!

確か、黄金の髪を持ち意思の強そうな目をした少女…だそうっすよ。

来るのが楽しみで夜グッスリ眠れなさそうっすね!

お読み下さり有難うございました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ