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勇者な彼女と英雄への道  作者: ウサギ様@書籍化&コミカライズ
第一章:名無しな俺と名騙りの勇者。
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脆弱な盾と強靭な魔物

 中空に浮く俺の魔法。

 色は無色透明、長方形をした薄い板、見た目のみではガラスと変わりないそれは性質もガラスに似ている。

 一定の衝撃を受ければ軽快な音を奏でながら割れ、その破片もガラス片のように切れ、刺さるところまで同じだ。

 強度も魔力を多く込めれば上がり、厚いガラス程まで硬くなるが、所詮ガラス止まりの弱い魔法だ。


 男が拳で殴れば砕ける程度、魔法や武器などの高威力なものには一瞬しか保たないが、ゴブリンのような武器も魔力も持たないようか生き物相手ならば、充分に止めることが出来る。

 左右を警戒する必要がなくなった。 ゴブリンへと踏み込みながら、剣を持った右腕を斜めに振り下ろす。

 その勢いのままに、自身の魔法ごとゴブリンへと振り切り、無茶な動きのせいで体制が崩れるが。


「シールド」


 倒れ込む方向にシールドを設置し、転倒を防ぐ。

 それと同時に鞘を振り上げてゴブリンの攻撃を弾くが、予想よりも強い力に耐え切れず、鞘から手を離してしまう。

 もう一度。シールドで敵からの攻撃を遮り、後ろに跳ねて距離を取る。


 予想よりも、力が強い。 いや、力というより体重と呼んだ方が適切か。

 二本あったものが一本になれば戦力は半減……という訳でもないが、防御に使っていたそれがなくなれば当然戦いにくくなる。


 拾いに行くことは難しそうだ。 代わりに武器になりそうなものも落ちていない。 仕方ない片手は拳でいいか。


 無理に攻撃すればもう一体は倒せるだろうが、他のゴブリンの反撃が怖い。 もっと切れ味がいい武器ならば楽に倒せただろうが、この鈍らでは軽く攻撃しただけだとほとんど意味がない。

 魔力の消費は激しいが、ゴブリンの体勢を崩すか。


 ゴブリンと俺の間、地面と水平の30㎝ほど中空に、大きなシールドを張る。 空中に固定されたそれにゴブリンは乗り、襲いかかってくる。

 一番前にいるゴブリンの頭に向かって剣を振り下ろせば、ゴブリンの重さと俺の剣の勢いで下のシールドが砕けて前にいたゴブリン共の足場がなくなる。

 当然のように崩れ落ちるゴブリンに後ろのゴブリンも引っかかり倒れる。


 立ち上がりそうになったゴブリンの頭を剣で殴り、死んだゴブリンの重さで動けなくなっているゴブリンを殴り倒れたゴブリン五体を全員仕留める。


 息を直しているとまた何匹も集まってきた。

 魔力こそまだ残っているが、頭蓋を砕けるほど力を入れて殴るのはすごく疲れるのだ。

 廃屋の中からも出て来始めた。

 きりがない、このまま戦っていてもジリ貧か。

 遠距離攻撃魔法の一つでもあれば楽なのに。と無い物ねだりをしても何も始まらないどころかゴブリンに殺されて終わる。


 そういえば、ゴブリンの癖に逃げ出さないのか。 巣にいるからか?

 それにしても、距離も取らずにいるのはあまりにも戦い方が違う……。 死に物狂いというか、切迫している?


 廃屋の戸がゆっくりと開く。 ゴブリンの手は扉を開けることの出来るほど器用な作りはしていない。

 扉が壊れていない(・・・・・・・・)廃屋に住み着いているということは、住み着いているゴブリンそれが可能な身体を持っているということだ。


 頰に、嫌な汗が垂れる。 外に残っていたゴブリンが、鳴き声をあげる。


「グギギッ」


 その猿と犬が混じったような奇妙な姿の魔物が焦ったように俺に襲いかかるが、連携や同時にでもないゴブリンはものの数にはならず、剣を振るって叩き落す。

 何故、焦っている。


 襲いかかってきたゴブリンが落ちて、廃屋から姿を現せた魔物が俺を見て、死んだゴブリンを一瞥、生き残っているゴブリンを眺めて、吠える。


「ゲギャギャギャキャヤ!」


 ゴブリンらしき魔物の声の意味は分からないが、この魔物の敵意と、恐ろしさは分かる。

 体長は、小さなゴブリンと違い俺と同じほどはある。 その体はゴブリンのような猿に似た姿をしているが、ゴブリンとは違い犬のようにとは言い難い。

 ゴブリンと違い毛は抜け落ちているが、その皮膚はピンクや肌色の皮膚ではなく緑色の気色の悪い色。

 顔は猿と犬を混ぜて毛を落としたような醜悪な造形。


 何よりの違いは、ゴブリンに比べて人間に近づいたような体格、手の形だろう。

 そして、人と同じように扉の開閉が出来るようになっているその魔物の手には、俺が手に持っている物と同じものが。 剣が握られていた。


 ーーゲギャギャ。


 ゴブリンに似た魔物。 剣が振り上げられて、振り下ろされる。

 何とか剣で受け止めたが、その一撃は俺の剣よりも重く強いことが分かってしまう。

 間違いなく、俺よりも力が遥かに強い化け物だ。


 振り下ろされた剣がまた振り上げられる。 隙は大きいが、その隙を付ける程の技量はない。

 後ろに跳ねるが、それだけでは魔物の攻撃可能な範囲からは抜け出しきれず、ゴブリンの剣撃を剣で受け、弾き飛ばされる。


 シールド。 振り下ろされた剣の上にシールドを張り、動かせないようにする。

 幾ら魔物の力が強く、シールドが脆いとはいえ、勢いを付けられなければ壊すことは不可能。


 左拳で思い切り顔を殴る。

 感触がおかしい。 何かが折れるような音と、魔物の人間のような笑みで、俺の手が砕けたことが分かる。

 剣から手を離した魔物は拳で俺を殴ろうとする。


「くそ! シールド!」


 拳と俺の間にシールドを張るが、所詮は脆弱な盾、 ガラスが割れるような音とともに砕け、魔物の拳が俺の胸へと強くぶつかる。

 また何かが折れる音。 飛びそうになる意識を無理やり保ち、後ろに倒れ込みながらも足で魔物が手放した剣を引き寄せる。


 意識がはっきりしないまま、もう一撃の拳がくるが、左腕を犠牲に何とか耐える。

 一撃目で内臓に傷でもはいったのか、喉の奥から吐瀉物と共に血が溢れ出る。


 シールド。 シールド。 シールド……魔物の前に幾つも展開し、一瞬で破壊され、その破片が俺の身体を刺す、がその一瞬の隙に剣を拾うことが出来た。

 拾い上げたと同時に剣を振り上げて、魔物の腕を切り裂く。

 切れ味がある。 人間の俺よりいい武器を魔物が持ってるってどういうことだ。

 その怯んだ魔物の肩の前に位置にシールドを張り、手を前に出させることを防ぎ、もう一撃。


 たたらを踏み後ろに下がる魔物に向かい剣を袈裟に振りながら、シールドを魔物の後ろに地面と並行、地面からの距離は10㎝の位置に張り、躓かせている隙に首に一閃。

 血を吹き出しながら後ろに倒れる魔物に剣を突き出し、胸を貫く。


 魔物の目から生気が失われ、死んだのを確認し、目の前にシールドを張る。

 まだ生きていたゴブリンがシールドにぶつかりシールドが砕け、破片が飛び散る。 剣は刺さっているために引き抜く隙もないために、手を離してゴブリンの顔を掴み自分ごと倒れ込むように地面に叩きつける。

 他のゴブリンは、ゴブリンに似た魔物が死んだからか、逃げ出し始めたのを確認し、叩きつけて意識を失っているゴブリンの目に指を突っ込み中を潰して殺す。


 多少安全になったからか、気が抜けて倒れ込みそうになるが、もしかしたらまだゴブリンに似た魔物が残っているかもしれない。


 怪我をしたのは左手と左腕の骨折と、あばらも一本は折れていそうだ、ポキッて音もしたし。 あとは身体中が、シールドの破片で切り裂かれたぐらいか。

 シールドの破片は魔法のためもう消えており、そのせいで塞ぐものがなくなり血が漏れ出てる。 それだけではなく激しい戦いのせいで止まる気配も薄くよく流れる。


 運良く大きな血管が切れていなかったので、時期に固まるだろう。

 血にまみれたまま魔物の住処にいるわけにもいかない。


 元々持っていた剣を鞘に戻して腰に据え、ゴブリンとゴブリンに似た魔物から魔石を抜き取る。 この切れ味のいい剣も持って帰った方がこれから有用だろう。


 この依頼の報酬があれば、病院に行って手当てが出来る。 しばらく左腕は使えないが、この新しい剣があれば普通のゴブリンに遅れを取ることはないだろう。


 この程度の傷では死ぬことはない。 街に戻りさえ出来れば。


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