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勇者な彼女と英雄への道  作者: ウサギ様@書籍化&コミカライズ
第十二章:強くなりたい≒弱くなりたい
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続・異種族との交流⑦

「それで、何を聞けばいいんだ?」

「一番知りたいのは、鈴木さんを含んだ勇者との関わりですね」

「まぁ、それ以外の瑣末ごとなら、鈴木の屋敷にいれば安全だろうしな」


 しばらく歩き回ると、やはり遠巻きに獣人が見張っていて気分が悪い。街中だから手出しをしてこないのかと思い、人気のない道に逸れたりもするが、そうしても襲ってくるどころか離れていく。


 戦闘をするつもりはないらしい……というか、見張っている獣人は丸腰だ。


 獣人は大した魔力を持っていない。そもそも、戦闘に使えるだけの魔力量を持っているのはこの国の人間ぐらいのものである。


 魔力量が増えると罹る病を克服する薬がないため、他国出身の人間は一定以上の魔力量にはならない。


「……相手側、戦力として足りていないな」

「見張りだからじゃないか?」

「それにしても最低限の武装ぐらいするだろ。 本当に見ることしか出来ないぞ」


 考え込んでいるエルを見る。小さくて可愛い。


「……そうですね」

「やはりエルもそう思うか」


 エルはコクリと頷いた。


「こちらの行動に対して怯えている。 と、感じますね」


 エルが可愛いという話ではなかったのか。


「獣人さんも、見たところそれほど貧困に窮しているようには見えません。なのに武器も持っていないのは『攻撃の意思を持っていない。』と示そうとしているように思います」

「獣人はエルフとは無関係ということか?」

「……反応の近しさを思うと無関係ということはないでしょうけど、少なくとも一枚岩ではないですね」


 怯えさせるようなことをしたかと考えるが、特に思い浮かばない。エルと聖石をばらまくために国中を回ったときには、獣人なんていなかったので今回の話だろう。


 リアナがじとりとした目で俺を睨む。


「喧嘩でもしたのか? お前はエルちゃんのことが絡むとすぐに……」

「いや、まだしてない」

「じゃあ、何かしたか?」


 リアナは近くの屋台で串に刺さった肉を購入しながら俺に尋ねる。


「アキさん、今日はほとんどいい子でしたよ」

「ほとんど? 俺、何かやっていたか?」


 エルはリアナから少し離れて俺の服の袖を引っ張る。


「……二人きりになった瞬間、襲ってきました」

「……いやだったか?」

「そうは言ってないですけど……。んぅ、ちゅーするの、邪魔されないようなときにしてほしいです」

「野宿の時に我慢してたから急いでしまったんだよ」

「毎晩、隠れてしてたじゃないですか」


 他のやつが寝静まるまで待つのは辛かったな。

 それに暗い中だとエルの綺麗な顔が見えなかったり、声も潜めていたりで、満足には出来なかった。


 呆れたような目でエルに睨まれて、次はもう少し邪魔が入らないようにしようと反省する。


「おほん、それで、話の続きだが」


 リアナはわざとらしい咳払いをしたあと、俺に食べ終えたあとの串を向ける。


「怯えられている。というのなら、話をすれば誤解も解けるだろ」

「そもそもなんで怯えられているかも分からないが」


 俺の言葉にエルが答える。


「それこそ、他の勇者の仕業かもしれません。魔物化が進むと、アキさんと同じ赤黒い毛と、赤い目になりますから。もしくはエンブルク家のような魔物化する一族とか」

「ウチの人間の可能性は?」

「エンブルク家って基本みんな引きこもりなんで除外しました」

「……アキレア、エンブルク家って大丈夫なのか?」

「まぁ大丈夫だろ」


 父親は戦死したし、長男の俺はここにいて、次男のレイもロトに着いて行ってるが、何となく大丈夫な気がする。分家の人間もいるし、何代か前の先祖もいる。


「……今更だが……お前一応は貴族様なのに、こんなところにいていいのか? 世継ぎとか必要なんじゃないのか?」

「まぁ、子供はほしいが」


 子供がほしいと思うのは、世継ぎがほしいとか血を絶やさないためというよりか、エルと愛し合っている証拠がほしいからという方が大きい。

 正直なところ、家は割とどうでもいい。


「……とりあえず、ひとり捕まえて話をするか?」

「無理矢理というのもあれですけど……。ゆっくりは時間かかりそうですよね」

「リアナ、獣人のひとりを足止めするから、エルを連れてきてくれ」

「足止めって何を……」


 エルを離し、軽く脚を動かし十分に動けることを確かめる。

 全力で地面を蹴り、人にぶつからないように屋根の上に登り、そこから獣人のひとりの元に駆ける。


 こちらの動きに気がついて逃げようとするが、あまりに遅い。

 屋根から飛び降り、獣人の女の前に立つ。 走っている中、急に現れた俺を避けようとして女はコケそうになり、それを手で支える。


 女に生えている獣の尻尾がピンと張り、跳ねるようにして俺から離れた。


「ッ!」

「あまり警戒してくれるな。何もする気はない」


 女は警戒を隠そうともせずにジリジリと後退する。

 他の獣人が寄って来ているのを女の反応から察しつつ、逃げないようにだけしてエルとリアナを待つ。


「……何をしに戻ってきた」

「何の話だ? 戻ってきたも何も、前にここに来たときにはお前らはいなかったが」

「惚けるつもりか」


 女の目が刃のように細められ、俺に突きつけるように睨む。


「忘れはしない。その血の色の瞳と髪。禍々しい、魔物と同様の姿……ッ!」

「……人違いだろ」


 まぁ、俺も獣人やエルフの見た目は全部似通って見えるので、あちらからしても人間は同じように見えるのかもしれない。


「……人違い?」


 獣人が俺の周りを取り囲む。殺気立ってはいるものの武器を取り出したりはしておらず、腰も引けている


「少なくとも、俺の知っている獣人はケトという娘だけだ。 お前らは見たことがない。 それに、目と髪を見て言っているのであれば、似たような奴らに覚えがある」

「……似た?」


 獣人の女の目元が少しだけ緩み、背後からリアナの声が聞こえた。


「アキレア! 大丈夫か!」

「ああ、話をしていただけだ。 上手く説明出来ないから任せていいか?」


 俺を囲んでいた獣人を避けながら、リアナが円の中に入ってくる。

 こうやって敵対している相手に囲まれた中に入ってくるのは、負けることはないという自信の表れか。


 リアナの背にくっついていたエルが俺の背に移動し、服の裾をつまむ。


「私たちは、監視を受けるようなことは何もしていない。……話を聞きたい。 お前たちが安心して話せる場所に連れていけ」


 獣人達はコソコソと話し合ってから、代表の男が俺たちに目をやってから歩き始める。


「……上手くいきましたけど、あんまり勝手はやめてくださいね」

「ああ、すまない。 少し焦っていた」


 早く終わらせてエルとゆっくりしたいという思いが、俺を短慮に走らせていた。


 ため息を吐くリアナとともに、獣人達に囲まれてどこかに向かう。

久しぶりの更新なので適当に能力紹介


1.神聖浄化クリーン


概要:汚れを消す。


使用者:エル=エンブルク


詳細:汚れとは使用者が汚れと思ったものが汚れであり、埃、チリ、シミなどから、細かいものでは菌やウイルス、毒物でも消すことが出来、生物や魔物であっても使用者が『汚れ』と判断したら消すことが出来る。

また、『消す』とは完全な消滅をさせることではなく、固有の異世界に送り込むことであり、本質としては神の行った『勇者召喚』とほとんど同一性質のものである。



2.王と讃えよ


概要:能力の移譲


使用者:暴食の魔王


詳細:自身の瘴気(魂、霊魂、精神)を他者に移動させることで、能力を渡すことの出来る能力。

どの勇者でも能力を移譲させることは出来るが、その際に勇者の精神に合わせて能力の変質が起きるが、この能力で移譲された能力は変質しない。

また、すべてを渡さずに一部のみを渡すことや、強制的な回収や、渡された相手を操ることなども可能である。

耐瘴気性の高い、エンブルク家を除いた現地人には能力を渡すことが出来ない。



3.我が身我が意(フルオート)


概要:他者の動きを真似する。


使用者:暴食の魔王


詳細:他者から漏れ出す微量の瘴気を取り入れ、見た動きを解析、模倣する能力。

機械的に模倣するため、誤った体の動かし方を覚えさせられると、それが原因で怪我をすることもある。



4.食って吐いて(オートイート)


概要:アイテムボックス。


使用者:暴食の魔王


詳細:物質を瘴気に変換して自身に取り込む、または吐き出す能力。

神聖浄化とは違い、異世界に送り込むのではなく自身に取り込むため容量は小さい。

瘴気を取り込んだ量に応じて使用者の質量と硬度が増していくため、身体能力が上昇する魔物化したものでなければ、少し取り込むと体が動かなくなる。



5.高みへと朽ちゆく刃(ハクシにイタる)


概要:記憶喪失


使用者:グラウ=アマツキ


詳細:瘴気を吐き出すことで自身の記憶を失う能力。

勇者の能力とは大きく違い、神に与えられたものではなく努力の結果至ったものであり、発動には瘴気魔法のように詠唱を必要とする。

基本的にデメリットしかない能力ではあるが、高みへと朽ちゆく刃(剣技)は『他の選択肢が無い方が強くなる』剣技のため、使えば使うほど高みへと朽ちゆく刃の威力は上昇する。

あるいは【王と讃えよ】の能力に対するメタ的な働きをすることも出来るかもしれない。


6.白紙に至る(ホワイトスクリーン)


使用者:エル=エンブルク


詳細:限定的な記憶喪失


詳細:グラウ=アマツキの高みへと朽ちゆく刃(ハクシにイタる)がエル=エンブルクに渡り変質した能力。

元の能力と違い詠唱を必要としないが、異世界に来てからのみだったり、少しずつ記憶が戻ったりと弱体化されている。

デメリット能力なので、むしろ強化かもしれない。



7.停止する運命(ブレイクロック)


概要:時間の停止


使用者:月城


詳細:触れている物質の時を止めることが出来る能力。

時の止まった物質はどうやっても変化することはないため、完全な盾にすることが出来たり、服の時を止めたら拘束することが出来たりなどする。


8.神祈月の流転(クロック・リーン)


概要:若返り


使用者:エル=エンブルク


詳細:月城の停止する運命(ブレイクロック)がエル=エンブルクに渡り変質した能力。

自身や他人の肉体年齢を若返らせることが出来る。

強力な相手を無力化が出来たりと非常に強力な能力ではあるが、若返らせるのに時間がかかることや近い距離でないと無理なことから、戦闘に使うには工夫が必要だろう。

エル=エンブルクは性的なことに使用していた。

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