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勇者な彼女と英雄への道  作者: ウサギ様@書籍化&コミカライズ
第十二章:強くなりたい≒弱くなりたい
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空へと落ちる日③

 暑い。 けれどこっちの方がエルの体温を感じられる気が……暑い。

 上は脱ごう。 エルを抱き締める手を離して、服を脱ぐ。布のせいで篭っていた暑さが減り、エルを抱き締める余裕が出来た。


「……あの、服は着てください……。 変なことしてるみたいです」

「変なこと?」

「……なんでもないです」


 暑さからかエルは顔を赤くして俯く。 俺も魔法がちゃんと使えれば部屋を冷やすことも出来るけれど、生憎ながら剣を振ることしか出来ない。


 確か大山は水属性が得意だったから、着たときに家の周りに掘りでも作って貰おうか。 幾分か涼しくなるだろう。


 エルが腕の中から抜け出そうと動くので、ベッドに押し倒すようにして拘束する。


「どうした?」

「あの……アキさんが裸だと、えっちなことをしてるみたいで……」

「多少はしている」

「しないでください。 アキさんが上を着てないと、サイスちゃんが来たときにすぐに出れなくて、変なことをしてるのかなって思われるじゃないですか」

「それの方がサイスを追い払えていいだろ」

「サイスちゃんをそんなに邪険にしなくても……」


 エルをねらっているからサイスは敵だ。 それで諦める可能性があるなら積極的にした方がいいとすら思う。

 それでエルと触れ合えなくなるのは本末転倒なので、諦めて新しい服を取り出して着る。


「……やっぱり、にゃん太が心配です」

「あの不審者なら知っているか、知っていそうな奴を知っているかもしれないから聞きにいくか」


 エルは頷いてから、着衣の乱れを治して立ち上がる。

 汗が気になるのか少し濡れた服を触って、俺の方を見て口を開く。


「ん、先に出ていただけますか? 僕も着替えます」

「ああ」


 頷いて外に出て、少ししてから出てきたエルと共に不審者を探すことにする。

 ちゃんと雇うことに決め、雇う以前より負担が少ないように働く時間などを決めたが、それを無視して掃除をしているため足取りが掴めない。 こちらか、新しく建てた方の屋敷にはいると思うが、魔力探知でも弱々しい反応しかないのでサイスの強力な魔力に紛れてしまう。


 こちらの屋敷ではないようだったので外に出る。 浴びるだけで疲れるような日の光からエルを隠すようにして、直ぐ隣にある家に向かう。


「暑いですね」

「そうだな」


 屋敷に入ると、直ぐ近くで掃除をしている不審者を見つける。


「あ、ご主人様。 どうかされました? ムラムラして襲いに……!? ダメですよ、奥様のまえで……ああっ」

「いや、それはない。 猫が妊娠しているらしいんだが」

「もののついでに私も妊娠させようと?」

「違う。 こういったことに立ち合ったことがないから、知らないかと思ってな」


 不審者は妙にスカートの丈が短いメイド服をわざとらしく翻しながら首を傾げる。

 エルに服の裾を引っ張られながら伝えると、不審者は不思議そうに答えた。


「……うちでも猫を飼ってましたが、放っておくしかないですよ?

したことはないですが、下手に手を出すと育児しなくなるらしいので、餌だけちゃんと与えたらいいと思いますけど。

あっ、暗くて狭い場所を作ってあげたらいいと思いますよ。 そういう場所好きなので」


 暗くて狭い場所か。 適当に余った木材で作ればいいか。

 軽く礼を言ってから木材を置いている倉庫に向かう。


 外に出たあと直ぐに、エルが服の裾を引っ張り、どうしたのかと振り返る。


「あの、ダメですからね?」

「何がだ?」

「浮気……しないでくださいね。 えっちなことがどうしてもしたかったら、その……僕にしても、いいですから」


 泣きそうになっているエルが可愛らしく、苦笑しながら彼女の頭を撫でる。


「大丈夫だから安心しろ。エルにしか興味ないからな」

「んぅ……信じてます」


 少し安心したように顔を緩ませるのが非常に可愛い。 抱きしめたくなるが、部屋の外でするのは恥ずかしがってしまうので我慢する。

 エルの柔らかい頰を指先で弄りながら倉庫に来て、適当な木材をノコギリを使っての高みへと朽ちゆく刃で切っていく。


 エルに小さな杭を出してもらい、それを使って木材を付けて一つの面がない箱を作る。 それだとあまり変わらないかと思ったので、開いた面の半分だけ塞ぐようにする。


 奥も暗いが覗き込めば見える程度なのを確認し、適当に角や端を削ってひとまず完成した。


「これに布でも置けば部屋にでもするだろ」

「ん、お疲れ様です。どこに置きますか?」

「涼しいところだな。 あまり人気が多いところは落ち着かないだろうから……部屋の前でいいか」


 他の人が近くにいるのは嫌だが、猫なら別にいいか。

 にゃん太が気に入って使うかは分からないが、とりあえず何もしてあげられないというエルの気持ちは収まるだろう。

 適当に布を放り込んで寝心地を良くしてから、部屋の近くに設置する。


「使いますかね」

「使わないってことは、これより居心地のいい場所があるってことだから、それはそれでいいんじゃないか?」

「ん、それもそうですね」


 2人で納得したあと、とりあえず待つしかないということになり大人しく部屋に戻る。


 ベッドの縁に腰掛けるエルを見て、喉を鳴らす。 先程、どうしてもガマン出来なければ無理矢理してもいいという許しが出た。

 今から襲ってもいいのだろうか。我慢しなくてもいいと思うと急激に抑えていた欲望が噴き出してくる。


 エルの身体を抑えるようにしてベッドに押し付けると、エルは不思議そうに首を傾げる。


「お昼寝するんですか?」

「……そうする」


 不倫よりはマシというだけで、したくないのは変わりないのだろう。

 欲を優先させようとしたことを自省し、エルの身体を抱きしめてベッドに倒れ込む。


 少し頭を冷やそう。


「アキさん……。 その、ごめんなさい。 ……我慢させて」

「悪い。 嫌なことは嫌でいい」


 最悪でも一人で処理すればいいだけだ。


「……それはそれで嫌です。 少しの間でも、アキさんと離れたくないです」

「なら我慢する」

「……僕の直ぐ近くでなら一人でしてもいいです。 見ないようにしますから」

「それは……流石に」


 それなら性欲も解消でき、エルと離れずに済むが……。 自分で欲求不満を慰めているところは酷く滑稽だろうから、エルには見られたくない。 なまじ目の前にエルがいる分だけ抑制が効かずに酷いマヌケを晒してしまいそうだ。


 ……いや、記憶を失う前にエルの指だ作った輪に必死になって腰を振っていたが、あれは記憶を失う前だったのでなかったことにしよう。


 あの時といい、今といい、エルの良い悪いの観点が不明である。


「……もしかして、俺が必死になってマヌケなことをするのが好きなのか?」

「いえ、そんなことはないです」


 否定するが怪しいものである。

 頻繁にマヌケなことをさせようとしているように感じる。


「ただ、アキさんが僕を欲しくて一生懸命になっているのが可愛いなってだけで……」

「……勘弁してくれ」


 当分は諦めよう。 エルを抱きしめながら眼を閉じて、暑さを誤魔化すようにするが、エルの体温が熱くて眠りにくい。

 エルもそうなのか、暑さに参った様子でぐったりとしている。 可愛い。


「暑いですね」

「そうだな……」

「靴下脱ぎます」


 欲しい。 とは言えずにエルの素足が晒されるのを見て生唾を飲み込む。 浄化の魔法を掛けてから、少し気になったように籠に入れる。


「清潔になったって分かっても、何もなく抵抗がありますね」

「そうか」

「あの、そんなに脚を見られるのは……」


 咎められたのでエルの素足から目を逸らす。 何故どこもかしこも、こう扇情的なのだろうか。 美しいにもほどがあるだろう。

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