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勇者な彼女と英雄への道  作者: ウサギ様@書籍化&コミカライズ
第十二章:強くなりたい≒弱くなりたい
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家造り日記①

 エルが切る予定の木に印を付けていき、一通り切る木を決めたあと、一人で剣を振るって切り倒していく。

 緑臭さを感じながら根元から切り倒し、俺が切り倒していった木を元人質の一人が細かい枝などを鉈で切り飛ばしていく。


「いやぁ、マジですげっすね兄貴! 剣見えねえッスし、斬ったあとも細かいヤスリで磨いたみたいにピッカピカ」

「……うるせえな」

「あ、さーせん! マジさーせんッス!


 このうるさく鬱陶しい男はシシトという名前らしく、体力には自信があるとかで鬱陶しいが手伝いは多くしてくれて助かっている。 鬱陶しい。

 ただでさえ暑く疲れている上に、腕が完治していないというのに鬱陶しい奴までいて非常にしんどい。


 斬ったあとの丸太は二人で即席で作った屋根だけの小屋の下に並べていき、雨に濡れないようにだけしていく。


「あー、疲れたッス。 まだまだ体力戻んないッスね」

「休んでいていい」

「えっ、マジッスか? あ、でも世話になってる兄貴に働かせて自分は休むってのは悪いッスね」

「……いいから、早くいけ」


 シシトは「兄貴いい人ッス!」などと言いながら屋敷の方に戻っていき、見えなくなったところでエルがとてとてと走ってくる。

 布を俺に手渡し、俺が片手で顔を拭いている横でエルは治癒魔法を使う。 数日でマシになってきたが、まだ動かせないことには変わりない。


「ん、アキさんも休んだ方が、いいですよ?」

「今休んでいる。 エルと話していたら疲れも取れる」

「ばかなことばっかり……」


 照れたように笑うエルの身体を抱き寄せて、しゃがみ込むように顔を近づける。


「兄貴ー! あっ、すみません、お邪魔っしたね」

「……本当にな」


 エルは顔を赤くして俺の後ろに隠れ、シシトから逃げるようにする。


「姉御もごめんっす! 俺は気にせずブチュっとしちゃってください!」

「お前、本当に斬るぞ。 それで何の用だ」

「や、お茶とか持ってきましたッス!」

「いらない。 戻れ」

「うーっす!」


 気を取り直して、と思ったがエルは恥ずかしそうにしていてキスをさせてくれそうにない。 あとで殴ってやろうかと思ったが、悪気はないので殴りにくい。

 諦めてエルの頭を撫でてから、木を切り倒す作業に戻る。 切り倒す方向を気にしなくていい分だけ、シシトがいる時よりも楽だ。


 今更だが、エルは非常に小柄だが子供を産むことが出来るのだろうか。 一応この前確かめたら顔を真っ赤にされながらも機能として出来ると言っていたけれど、腰とか尻とかすごく小さいので不安だ。

 以前はエルの治癒魔法があったので不安はなかったが、今は魔力も落ち込んでいるのでそういう力技も出来ないだろう。


 一通り切り終わり、太い枝を適当に切ってからエルの元に戻る。


「どうしたんですか?」

「いや……よく考えたら、エルの小さな身体だと、不安だと思ってな」

「その話ばかりです……。 僕、人より小柄ですけど……無理じゃないはずです」

「エルが言うならそうか」


 早く腕が治らないだろうか。 いっそ街に降りて、治癒魔法が出来る奴を捜し回ろうかと考える程我慢が辛くなってきている。

 エルを連れて街に行くのもエルを置いていくのも不安なのですることはないが、服装が薄着になってきたエルを見ていると堪え切れなくなりそうだ。


 自分で処理をしようにも、エルがいる前だと出来るはずもなく、エルとは可能な限り離れたくないのでどうしようもない。


「……服、薄着すぎないか?」

「んぅ? 長袖ですよ?」

「身体の線がすこし分かってしまう」

「いや、分かりませんよ。 気にしすぎです。 誰も見てませんよ」


 エルは言われて少し気にしたように自分の服を見る。 今日は月城が用意してくれていた服で、俺が注文したように肌はあまり見せないし、ぴったりと肌にくっついていたりもしない。

 けれど、どこか色気を感じてしまう。


「俺が気になる。 ……襲いそうになるから悪いけどもう少し着込んでくれ」

「お、襲……!? ん、んぅ……着てきます……」

「悪い」


 部屋に戻り、上着を着てもらってから水分を補給して屋敷から出る。


「んぅ……これで大丈夫ですか?」

「少しマシになった。 我慢出来る」

「我慢……。 アキさんは倒錯してます。 ちんちくりんなのに……」

「何よりも魅力的だ。 ……通る人間が増えたな。 街までの道も整備した方がいいか」


 整備と言えど、石畳を引くわけにもいかないので木を切って道幅を広げるのと石を取り除いて地面を軽く均す程度しか出来ないが。


「後々、ですね。 した方がいいですけど、優先的にって程じゃないです」

「俺とエルの家も欲しいな。 街のところのは使えなくなったから、建ててもいいだろう」

「……結局、増えてきた人に渡しそうです」

「……そうだな。 大事は避けたいのに、何故こうなる」

「アキさん、なんだかんだで優しいですから」


 馬鹿らしいとため息を吐き、細かい枝を切ってから丸太を小屋に置いていく。 シシトがいたときよりも作業が早い気がするのは気のせいではないだろう。


「……見栄っ張りなだけだ」


 俺自身に出来ることは大したことではない。 適当に人や魔物を斬ることが出来るぐらいで、それ以外は何も出来ない。

 何でも出来るエルに比べて、あまりにも能がなく。 唯一の強みの戦闘力もロトとそう変わらない。


「優しいことをするのが見栄になるって思えるぐらいには、優しい人なんですね」

「……買いかぶりもほどがある」


 根を掘り返していき、とりあえず小屋の近くに適当に放って置く。 穴だらけになった地面をどうしようかと思ったが、とりあえずどうでもいいか。


 エルに布を手渡されて、エルの方を見る。 ……厚着のせいで汗をかいたのか、ほんのりと赤く濡れた肌に色気を感じる。


「僕の顔なんて見て、どうかしましたか?」

「汗をかいていて、襲いそうになるから薄着になってくれ」

「どうやっても襲ってくるんじゃないですかっ! ……我慢してください」

「ああ。 善処する」

「絶対にダメですからね。 んぅ……やっぱ、僕にはまだ早いような……」


 エルは恥ずかしそうにそう言って、俺から目を逸らす。 一度したことがあると伝えた方がいいのだろうか。

 恥ずかしいとか言って引きこもってしまいそうだ。


「どうしたんですか?」

「いや……なんというか」

「珍しく、歯切れが悪いですね。 何かあったんですか?」

「言っていいのか、分からない」

「気になるじゃないですか……」


 モヤモヤしたら様子でエルは俺に尋ね、仕方なく前にしたことを伝えることにする。


「記憶を消した前に、性行為をしたことがある」

「……えっ…………えええっ!? ……あ、え……っと……僕と、アキレアさんが? その、ちゅーじゃなくて、その、裸で……する、それを?」

「ああ、一度だけだが……」


 エルは顔を真っ赤にして、自分の身体を俺から隠すように抱く。


「……理解が追いつかなくて、落ち着いてきました。 何故か客観的になりつつあります。 その時には、妊娠しなかったんですか? 子持ちってことはないですよね? エッチなことは一度だけですか?」

「あ、ああ。 特に避妊とかはしなかったが。 ……それ以降は入れたりはしなかったが、時々、手でしてもらっていた」

「な、なるほど。 ……恥ずかしすぎて変ななりそうです。 というかなってます」


 思ったよりも冷静だ。 そう思って少し安心していると、エルは突然顔を真っ赤にしてフラフラとし始める。

 急いで抱き抱えると、エルは真っ赤な顔で俺を見る。


「へ、へんたいですっ!」

「……違う。 まぁ、無理にとは言わないから安心してくれ」


 何でも早めに済ませたいが、今は忙しいので後回しになってもいいだろう。

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